成功
彼らがリンゴを食べて腹を満たしてから、話をすることにした。
といってもお互い見ず知らずの状態だし、神獣様に何か粗相があってはマズい。
聞いている感じ知り合いなのは間違いないので、とりあえずシムルグさんも一緒にいた方がいいだろう。
というわけでお子さん達とキャサリンさんの面倒をアイラに任せ、僕とホイールさんでシムルグさんの下へ向かうことに。
「ガッハッハッ、良い土地持ってるじゃねぇの!」
「ええいっ、うるさいのである! 勝手に我が家に上がり込まないでほしいのである!」
二足歩行のモルモットと、それと同じくらい大きな鳥さん。
このどっちも神獣というんだから、ちょっと冷静になると信じられない話だ。
人に試練を与えたり、人を守ってくれたりする神獣。
絵本なんかじゃ恐ろしい感じで描かれていることも多いけれど、実際付き合ってみればそんなものは嘘っぱちだとわかる。
シムルグさんなんか、このツリー村でも一二を争うくらいに博識で、理知的なジェントルマンだし。
たしかに僕の前には神獣が二匹いるけれど、彼らは理性のある動物で、決してケダモノじゃない。
僕もちゃんとした態度で臨まなくちゃ。
「この桑とか食べればいいと思うのである」
「もぐもぐ……なんだこれ、めちゃくちゃ美味えじゃねぇの!」
ホイールさんはアースムルベリーを食べて目をむいている。
どうやら彼は土属性が得意みたいだ。
シムルグさんは一見するとホイールさんのことを邪険にしてるようにしか見えないが、好きそうなものを薦めるあたりそこまで仲は悪くないようだ。
悪友的な存在なのかもしれない。
とりあえずホイールさんに満足いかせるまで果実を食べさせてから、話をすることにした。
当然ながらホイールさんも世界樹の実の存在も知っているということなので、初めましての意味をこめて一つプレゼントすることにした。
シムルグさんを見てれば、心証は間違いなく良くなるのはわかるしね。
「もぐもぐ……まさかまた世界樹の実が食えるだなんて思ってなかったじゃねぇの。シムルグ、お前の嗅覚は相変わらずすげえのよ」
「しゃくしゃく……世界樹の反応を辿ったら、ウッディ殿に辿り着いたに過ぎん。全ては我ではなく、ウッディ殿の為したことである」
「んなことわかってるじゃねぇの」
シムルグさんとホイールさんは一緒になって世界樹の実を食べ始める。
ちなみにウィンドマスカットに取り付かれたシムルグさんだけど、最初の頃に約束した通り、今も果実は一日一個しっかりプレゼントしている。
どうやらシムルグさんにとって世界樹の実を食べるのは、たまの贅沢ということらしく。
基本的にはとっておき、自分へのご褒美として何かあった時に食べるようにしているといいうことだった。
つまり今は友人と気兼ねなく会話するために必要ということなのだろう。
「美味いのである!」
その食べっぷりを見ていると、ホイールさんが食べているのを見て自分も食べたくなっただけのように見えなくもないけれど。
二人並んでフルーツに舌鼓を打つ様子は、友人同士が酒を酌み交わしている様子に見えなくもない。
あ、そうだ。この光景を見て思い出した。
そういえばキープさんが作ったワイン、持ってきてるんだよね。
話を終えたら、出すことにしよっかな。
「それじゃあ早速本題なんですけど……ホイールさん、もしよければここから離れた場所に、聖域を作ってくれませんか?」
「おう、構わねぇのよ」
「たしかに悩んで当然だと思います、でもそこをなんとか…………って、えぇっ!?」
「そろそろ子供達にも神獣のなんたるかを教えなくちゃいかんとは思ってたし、むしろこっちからお願いしてぇくらいなのよ」
こうして僕が想像していたよりずっとあっさりと、新たな神獣様を迎え入れることに成功するのだった――。
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