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新たな神獣様


 シムルグさんは苦手ということだったけれど、現状それ以外に打つ手がない。

 というわけで住む場所が離れるから許してとシムルグさんを説得し、その新しい神獣様を呼ぶことになった。


 ナージャに聞いたところ、シムルグさんの魔法の移動はたしかに異常な速度だったけど、それでもこっちに到着するまでには三日程度は時間がかかるということだった。

 だからそれまでの間に対応を決めておこうと思ったんだけど……。


「ガッハッハッ! 良い聖域じゃあねぇの! なかなか気持ちいい魔力が溢れてる!」


 なんとシムルグさんにオッケーを出してもらったその次の日。

 新たな神獣様が、このツリー村にやってきた。

 しかも驚くべきことに……子供連れで。


「父ちゃん、おなかすいたー」


「これ食べていい?」


「食べちゃっていいんじゃあねぇの! 聖域なんだからほっといても果実は実るし、シムルグの聖域なら大体何しても許されるに決まってるじゃねぇの!」


 その見た目は……完全にモルモットだ。

 でもデカい。そして……なぜか二足歩行をしている。


 子供くらいのサイズはある巨大なモルモットが、ガハガハ笑いながら人間の言葉を話している。

 その光景はシュールだ。


 隣に同じく二足歩行している雌モルモット(多分奥さん?)がいて、その足下には普通のサイズで四足歩行をしているモルモットが十匹近くいる。

 ちゅーちゅーと鳴いてもいるから、人間の言葉さえ話さなければ普通にモルモットだと勘違いしてしまいそうだ。


「あなた方が神獣様でお間違いないでしょうか?」


「いかにも! 俺が神鼠のホイール、そしてこっちは家内のキャサリンじゃねぇの!」


「キャサリンです、よろしくお願いします」


 へぇ、神鼠かぁ。

 神獣にも色々な種類がいるのは知ってたけど、初めて聞いたなぁ。


 ぺこりと礼儀正しいお辞儀をされたので、こちらもしっかり頭を下げる。


 頭を上げた時には既に、既に子供の鼠達が木に登ろうとしていた。

 そしてズザザザザッと落ちて、見事に失敗していた。


「く、くそぅ、木登りなんかできないよっ!」


「父ちゃんっ、どうすれば登れるのっ!」


「おう、父ちゃんが手本を見せてやるじゃねぇの!」


 神鼠のホイールさんは、そう言うとリンゴの木に登り始めた。

 手で出っ張りを掴み、別の出っ張りを踏み台にして、普通の人間みたいに登っている。


 いや、それホイールさんが二足歩行だからできるだけで、四足歩行の息子さん達の参考にはならないんじゃ……。


「おおっ、父ちゃんすごい!」


「かっこいいわ!」


 けれどお子さん達の目は、宝石みたくキラキラと光っていた。

 どうやら問題はないらしい。いつの時代も父ちゃんはかっこいいらしい。


 あれ、でもちゃんと聞いていると……娘さんも混ざっているみたいだ。

 中に何匹か声が高い子達がいる。


「うおおおおおっっ! 登れた記念にこのよくわからん果物を食べるじゃねぇの! う――うめえええええええええええっっ!! お前らも食べるといいじゃねぇの!」


 そう言うとホイールさんはその前歯で器用にリンゴの枝を噛み切り、下に落としていく。


「「「わーーーっっ!!」」」


 お子さん達が元気にリンゴの下に向かっていく。


「あいてっ!」


「痛たっ!」


「痛いですわっ!?」


 みんな頭にリンゴをぶつけながらも、シャクシャクと食べ出した。

 お嬢様口調のモルモットもいるんだなぁと思いながら、僕もなんとなく収穫袋からリンゴを取り出して食べ始める。


「すみません、うちの旦那がご迷惑を……」


「いえいえ、どうぞお気になさらず。……あ、もしよければこちらもどうぞ」


 奥さんのキャサリンさんにもリンゴを一つ。

 あらまぁと驚きながらも、受け取って食べ始める。


 二足歩行のモルモットと並んでリンゴを食べるという珍しい経験をしながら、ホイールさんたち親子が元気にとてとてと走り回る様子を眺める。


「土がしっかりしてるところで走れるのは、ずいぶん久しぶりじゃねぇの!」


 どうやら四足歩行の方が楽らしく、ホイールさんは楽しそうに走り回っている。

 子供達はホイールさんに追いかけ回され、きゃっきゃとはしゃいでいた。


 こうして新たな神獣である、神鼠のホイールさんとキャサリンさん夫婦が子供達を引き連れてやってきたのだった――。

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