パチリ
僕は樹木配置(改)のスキルを発動させる。
(実はあらかじめ、新たに村人を迎え入れる時の段取りは決めてあるんだよね)
樹木配置(改)は、領地の中および周辺に樹木を配置し、自動で植え替えをしてしまうスキルだ。
――この周辺、というのがミソである。
樹木はシムルグさんが聖域にできる範囲内であれば、どこにでも移動ができる。
なのでこんなこともできてしまうのだ。
僕は今まで通った道を思い出し、そこをなぞるようにツリー村の中にある木々を移動させていく。
道しるべに石ころを置く子供みたいに、僕はツリー村からこの村に至るまでの道のりに木々を移動させていく。
僕の目の前に浮かぶミニチュアのツリー村。
そこから一本の細い戦ができていく。
生まれていくのは、即席の並木道。
ツリー村とこの場所を繋げてくれる、緑の道だ。
「お……おおおおおっっ!?」
「すご……なに、これ……」
ランさんやジンガさんにも、道ができている様子は見えている。
二人が驚く様子を見て少しだけ得意げになりながら、僕はドンドンと道を伸ばしていく。
今回は、ツリー村にある木々だけでも十分間に合いそうだ。
でもこれだと、もっと遠いところとツリー村をつなげるとなるとちょっと厳しいかも。
もうちょっと植樹をする量を増やして、樹木の数を増やさなくっちゃいけないな。
それがわかったことは、間違いなく収穫だね。
僕は半分無心になりながら、樹木配置を使い続ける。
移動させ、地面に突き立てる。
移動させ、突き立てる。
移動、突き立て、移動、突き立て……機械的に作業を続けるうちに、なんだか楽しくなってくる。
どうやら僕、こういう単純作業って嫌いじゃないみたい。
ドンッ!
……ドンッ!
……ドンッ!
「こ、これは……」
「なんの音……?」
どんどんと伸びていく樹木の道を黙って見ていたランさん達が異変に気付く。
どうやら移動させて植えまくっているうちに、とうとう耳に聞こえてくるくらいに近づいてきたらしい。
一定のリズムで木々が突き立つ音は、打楽器をバチで打った時に鳴る音に似ていた。
ドンッ!
ドンッ!
ドンッ!
音が大きくなってきたな……と思っていると、とうとう木々が見えるようになってきた。
それはある種、ホラーみたいな光景だった。
「樹が……」
「宙に、浮いてる……」
樹が地面に浮かび、ふわふわと移動。そしてどーんと地面に突き立ち、次の瞬間にはまるで最初からそこにあったかのように、植えられた状態になっているのだ。
ふわふわからのどーんということを何回も繰り返すと、ようやく村まであと一本というところまでこれた。
最後の一本がふわふわとこちらにやってくる。
僕が道の終わりを意味すると事前に伝えていた、目印つきの世界樹だ。
目の前に、最後の世界樹がどーんと突き立つ。
そこで僕は、樹木配置(改)の発動を終えた。
そして――ぶわん、ばっ!
かつてツリー村にしたように、僕が樹で作った緑の道に結界が生み出されていく。
シムルグさんが、ツリー村から聖域を伸ばし、ここまで持ってきてくれたのだ。
村の入り口までやってきた聖域の結界。
僕はそこを指さしながら、パチリとウィンクをした。
「あそこを通れば、ツリー村まで直通でいけます。魔物避けの効果もありますので、安心して通ってくれて大丈夫ですよ。あ、道中お腹が空いたら……その時は、果樹に生えているフルーツでも食べてお腹を満たしてくださいな」
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