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絶句


「いやぁ、昨日はすみませんでしたなぁ。久しぶりに何も気にせず飲み食いできたとあって、少々羽目を外しすぎてしまいました」


 ボリボリと頭を掻くジンガさん。

 顔は笑顔なので、あまり悪いとは思っていなそうだ。

 そんな態度でも僕らにまあいいかと思わせるあたりが、彼の人徳なのかもしれない。


「しかし本当によかったのですかな? あれだけたくさんのフルーツを、無償でとは……大変太っ腹でこちらとしてはありがたい限りですが……」


「全然問題ないですよ、あれくらいならすぐに補充できますので」


「あれくらい、なら……?」


 僕の言葉に嘘偽りは何一つない。


 それを示すために、まずは自動収穫を発動させる。


 昨日砂漠の道中、自動収穫は果樹から離れた場所からでも使えることがわかっている。

 そして自動収穫の発動と同時に、収穫袋も発動。


 二つ同時に使うとあら不思議、収穫されたフルーツが勝手に収穫袋の中にストックされていくのだ。


 ちなみに収穫袋の中にどれくらいフルーツが入っているのかもわかるようになっていたりするんだけど……うん。

 収穫して新しく溜めたストックの方が、昨日使った分よりも多いかな。

 言っても数十人規模の村の一食分だから、そこまでの量じゃなかったみたい。


 収穫袋の中身の補充が完了してから、僕は再度収穫袋を発動。

 昨日と同じく、ドサドサと大量のフルーツを出してみせた。


「……(絶句)」


 パクパクと水中で呼吸できなくなりかけた魚のようになってしまったジンガさん。


 あれ、彼の前でフルーツを出してみせるのは二回目のはずだと思うけど……どうかしたのかな?


「も、もしかして本当に……?」


「……? はい、あれくらいの消費なら全然賄えますよ」


「ウッディ殿!」


「――は、はいっ! なんでしょうか!?」


「ウッディ殿が領主を務める領地では、毎日フルーツが食べ放題というのは本当なのか?」


「え、ええ、そうですけど……」


「俺達の村の皆を、ツリー村へ連れていってください!」


「え、えぇ……」


 土下座である。

 ジンガ村長が、いきなりジャンピング土下座をかましてきた。

 まったく頭を上げる様子がないことから、どうやら本気で頼み込もうとしているらしい。


 なんとも思い切りがいいというか……そんなことをいきなりして、村民が許すものなんだろうか?


「問題ないわよ」


 と脇からランさんが出てくる。

 昨日の二日酔いが残っているからか、いつものようにしっかりと化粧はしていない。

 元がいいからか、ナチュラルメイクでも十分に綺麗……というかむしろ、僕的にはこっちの方が好きかもしれない。


「え……えええええっっ!?」


 顔を真っ赤にさせながら、あわあわしだすランさん。


「そ、そんな……いけないわウッディ君、私とあなたは商人と領主で……」


 なぜかいつもより砕けた口調で物凄い早口を披露してくる。

 どうやら僕の心の声が漏れてたみたい。

 相当テンパっているようで、バイオリンの発表会の前の僕みたいに顔が真っ赤になっている。


 ただしそこはさすがに歴戦の商人。

 武人もかくやという深呼吸をするとすぐに落ち着きを取り戻した。

 今一瞬……ゾクッてした。やっぱり修羅場を潜っている人間は、凄みがあるんだなぁ。


「んんっ! ……問題はないのよウッディ君。昨日、ジンガ村長ってあっちこっちに行って酌をしてたでしょ? その間に皆の合意は取っているのよ」


「ええっ、そうだったんですかっ!?」


 気を取り直したランさんから教えられる衝撃の事実。


 どうやら既に根回しは済んでいるらしい。

 昨日は皆とお酒を酌み交わすなんて、飲みニケーションが好きな人なんだなぁってくらいにしか思っていなかったけれど。


 ジンガさん、昨日のうちに全員から了解を取ってきてしまっているらしい。

 適当そうに見えるけど、実は結構できる男なのかも。


 そりゃあ、もちろんこの村の人達にツリー村に来てもらうというのも選択肢の一つではあったけど……これだけトントン拍子でいくとは思ってなかったよ。


「もちろん大丈夫です。ですがうちの村に来てもらうからには、うちのルールに従ってもらいますからね」


「ああ、もちろんだとも。俺達を既に村人になっている奴らと平等に扱ってくれればそれでいい。自分の食い扶持くらい、自分で稼ぐ。それくらいのことはできる奴らばかりだからな」


 これでこの村の人達の同意は得た。

 それならシムルグさんにあれをやってもらわなくちゃ。


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