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軟膏


 まずは皆に、フルーツを好きなだけ食べてもらう。

 そして満足してもらったところで、彼らにハウスツリーを使って家を作る。


「おお、一瞬で家がっ!?」


「なんということ、これは……神の御技……?」


 そんな大層なものじゃないと思うよと苦笑しながら彼らに一通りの村のルールを説明したところで、後のことはシェクリィさんに任せてランさん達の方へと戻る。


 どうやら既に荷下ろしは終わったようで、旅の疲れを癒やすようにゆっくりと座っていた。

「あらウッディ様。こんなくつろいだ姿ですみません」


 ランさん達は靴を脱いで、何やら薬を塗っていた。

 どうやら長靴での長時間の行軍は相当にきついらしく、足の裏はかなりひどいことになっている。


 ランさんは平気そうだけど、ヴァルさんなんかは相当きつそうだ。

 しかも彼の足、離れたここからでもすごい匂いがする。

 もしかしたら水虫とかなんじゃ……。


(……そうだ、折角ならあれを試してみることにしようかな)


 ランさん達についていくのなら、彼女達の体調も万全な方がいいだろうし。

 僕はポンッと手を打ってから、ポシェットを開く。

 そして中から、いくつか試作している特産品候補のうちの一つを取り出した。


「ヴァルさん、もしよければこれを使ってみませんか?」


「ウッディ様、それは一体……?」


 僕の手のひらに入っているのは――エレメントピーチを使った軟膏だ。

 原材料はたった二つ、魔物の脂肪とエレメントピーチだけである。


 メインで使っているのは、一番効果が高いウォーターピーチだ。

 けれどそれだけだとちょっと獣臭が残ったので、一番匂いが強いファイアピーチの果汁も混ぜている。


 これにはエレメントピーチの持つ回復効果があるようで、少なくとも火傷には効くらしい。 フルーツティー・リセンブルを作る時に火傷をしてしまったおばちゃんも、これを使えば火傷痕一つ残らなかったんだって。

 水虫も火傷と同じく皮膚の異常なわけだし、エレメントピーチの効用的にも多分効くんじゃないかな?


 そんな風に思い、とりあえず使ってみてもらう。

 すると効果はすぐに現れた。


「おおっ、かゆくない! ぜんっぜんかゆくないぞ! これで水虫ともさよならだっ!」


 ヴァルさんは靴下だけ履いて、ぴょんぴょんと楽しそうに絨毯の上を飛び回り始める。

 どうやらやっぱり水虫だったみたいだ。


「ウッディ様、私にも使わせてくれませんか?」


「わ、私もっ!」


「おらにも使わせてほしいだよ!」


 勢いよく手を上げた三人が、軟膏を足に塗り始める。

 ぬりぬりタイムの時間、暇だったのでヴァルさんに話しかけることにした。


「この軟膏、売れると思います?」


「売れますよ! 間違いない、絶対に売れます! 砂漠では厚底のブーツが基本ですから、足が蒸れたり水虫になる人も多いですから! いやぁフルーツティー・リセンブルを見た時にもたまげましたけど、この軟膏は個人的にはそれよりも可能性を感じますよ!」


 ヴァルさんの機嫌はかなり良かった。

 ランさん達も上機嫌だったし、どうやら商品は上手く捌くことができたみたいで一安心だ。

「すごい……これ、鎮痛効果もありますよ」


「え、そうなんですか?」


「なんで作ったウッディ様が効用を知らないんですか?」


「あ、あはは……」


 アイデアを出したのは僕だけど、実際に作ったのは村人の皆だからね。

 効果の確認なんかはしたけど、そこまで詳しいことは知らないのだ。


 適当に笑って誤魔化しているうちに三人とも塗布が終わった。

 皆すっきりした顔をしていて、ヴァルさん同様この商品は絶対に売れると猛プッシュしてきた。


 僕は皮膚トラブル全般に効くんだなぁくらいにしか思っていなかったけれど、どうやらこのピーチ軟膏……ランさんが目の色を変えるほどの一品らしい。


「今私が使っている塗り薬は、この小ささで金貨一枚します。大きさと価格で考えると……って、その前にまずは今回の話をしなくちゃいけませんね」


 んんっと喉を鳴らしてから、ランさんは説明しだした。

 どうやら今回持っていったドライフルーツとフルーツティー・リセンブルは全て売り切れ。 以前の時の評判を聞きつけて村人達が殺到し、あっという間に売り切れてしまったという。

 ランさんもツリー村で果実がバンバン作れることは知っているので、次回行った時に優先的に購入できるような予約まで取ってきたらしい。


「今回も儲けさせていただきました。正直どちらも仕入れた分があっという間に売り切れてしまうくらいの人気商品なので、次回からは向こうの人達が無理のない範囲で値上げをしようと思います」


 普通なら阿漕な値上げなんかをしないか心配するところだけど、ことランさんにおいてはその必要はない。

 元々赤字で村を行き来していた彼女の言う無理のない範囲というのなら、きっと本当に無理のない範囲であるはずだ。


「いや、このピーチ軟膏があるのなら、これを買える人達の呼び込みのために敢えて安く融通するという手も……ふふふ……」


 ランさんが、彼女にしては珍しく商売人の顔をしていた。

 まあなんにせよ、どうやら軟膏もこの村の特産品になりそうなのでホッとした。


 って、そうじゃないよ僕!

 そもそもここに来た理由を忘れてた!


 というわけで僕は目がお金のマークになっているランさんに、同行のお願いをすることにしたのだった……。

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