向上
「な、ナージャはここ最近何をしてたの……?」
「ん? ……うーん、そうだな……」
呆れ半分恐ろしさ半分と言った感じで聞いてみる僕に、ナージャは嬉しそうに答える。
「まず最初は、以前からやっていた、私の力なしで砂漠の魔物達を倒すための訓練だな。以前はダンとメグが二人がかりで挑んでも難しかったんだが、ウッディのエレメントフルーツを使うことで、なんとかそれができるようになった」
ナージャに何らかの事情があった場合のことを考えて、たしかに彼女なしでも回していけるように戦闘訓練は続けていた。
どうやらその方針は、僕がエレメントフルーツを渡したことで実を結んだということらしい。
「しばらくすると効果がなくなる問題があったじゃない。あれはどうやって克服したの?」
「ああ、色々と試してみた結果、樹皮を強く擦りつけると魔法効果が発生することがわかったんだ。なので基本的に皆には果実と樹皮をセットで持たせるようにしている」
「そ、そんな方法が……たしかに色々やってるなぁとは思っていたけど……」
「ああ、樹液を使ったり枝を折ってみたりと、樹をダメにしない範囲で色々と試してみたんだ」
「なるほど……」
入園したいと言われた時は、一体何をするんだろうと思っていたけれど。
果実以外に使える部分はないかと、色々と試してくれてたんだね。
今まで僕らを助けてくれたのは果実だったから、ちょっと果実に意識を向けすぎていたのかもしれないな。
そしてそんな風に僕がまったく気付けなかった新たな可能性に、ナージャは辿り着いたわけだ。
「さっき兵士達がしてたのもそれだったんだね……」
「ああ、携行できるよう魔力を抜いてからエレメントフルーツを配っている。上の人間による安全確認や事前のチェックも行っているぞ」
へぇ、なんていうかしっかりしているんだなぁ。
以前父上から聞いていた、軍隊にそっくりだ。
いや、というか彼らも分類上はうちの軍隊になるのか。
兵士の集団が軍だもんね……目的は戦争じゃなくて、自衛だけどさ。
「そういえば一つ疑問に思ったのですが……樹皮の方は魔法効果が出てたら危険ではないのですか?」
アイラの疑問は、僕も思っていたことだった。
樹皮と果実を擦り合わせれば魔法効果は戻るという話だったから、樹皮の方は大丈夫なのかなって。
でもどうやら危険はないようだ。
エレメントフルーツの樹皮には、魔力を内側に貯めこむ性質があるらしい。
一種の魔力タンクのような役割を果たしているみたい。
「でもそれならたしかに、エレメントフルーツを使いこなすことも不可能じゃないのかも……」
わざわざ魔力を込めなくても、直前に擦ればいいだけでいいなら、使いやすさは格段に上がる。
兵士達も問題なく運用ができているようだし……うちの村の戦力は、エレメントフルーツのおかげで大きく向上したのは間違いない。
よくここまでエレメントフルーツで戦えるように兵士達を鍛え上げてくれた。
本当にナージャには頭が上がらない。
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