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あーん


 続いて僕は、ウォーターマスカットを手に取る。

 これも基本は同じで、魔力を込めるとしばらくの間水が出続ける。 

 といっても元が小さいので、かなりちょろちょろと出る感じだ。

 丸々三日水筒に入れてようやくいっぱいになるくらいだと思う。


「砂漠で水が出る魔道具が作れるとなれば、皆死に物狂いで手に入れようとするぞ!?」


「え、そうなの? ちょっとしか出ないから、飲むにしても足りないかと思ってた」


「ウッディ、あのバカ乳女のせいで完全に感覚がバグってるぞ!?」


 たしかに、ちょろちょろしか出ないとはいえ、小さな水源が作れるっていうのは大きいかもしれない。

 これもまた水魔法を抑えられるような作りにしなくちゃいけないとは思うけど、上手くやれば水が出る水筒、みたいな魔道具を作ることができるようになるかもしれない。


 アイラもいつでも水を出せるから、ウォーターマスカットはただ好物として食べてただけだし。

 やっぱりこうして第三者から意見を出してもらうと、また違った発見があるなぁ。


「ちなみに味は、あんまり癖がないよ。その分水気が多くて、スイカみたいな感じ」


 ウォーターマスカットの果実は、普通のブドウの三倍近い大きさがある。

 なので二人で半分こして食べることにした。


「う、ウッディ……」


「……? どうしたの、ナージャ」


「あ、あーん……」


 フォークを使ってウォーターマスカットを差し出してくるナージャ。

 その手はぷるぷると震えていて、顔は真っ赤になっていた。


 これはいわゆる、あーんというやつでは!?


 と思ったけど冷静になるんだ、ウッディ。

 婚約者同士なんだから、あーんくらい普通だ、恥ずかしいことじゃない……。


「あーん、ぐまぐま……うん、おいしいよ」


 羞恥心に耐えながら、なんとか食べる。


 おいしいと言ってはいるけど、正直味はあんまりわからなかった。

 平静を取り戻そうと深呼吸をしていると、ナージャがもじもじし始める。


「ウッディ、次は、その……」


「うん、はい、あーん……」


 流石に僕もそこまでのニブチンじゃない。

 お返しとばかりにフォークにマスカットを突き刺し、手を伸ばす。


「あーん……」


 さっきより顔を赤くさせるナージャに、見ているこっちも恥ずかしくなってくる。

 そんなことを繰り返すこと数度、ようやく落ち着いてきたのでエレメントフルーツの検分を再開していくことにした。


 ウィンドマスカットは匂い散らし、アースマスカットは排便をした後に土をかけてそれを埋める。

 ナージャから出てくる使い方は、どれも実戦の時なんかに使えるようなものが多かった。


「つるの硬度はたしかにかなり高いな。これでギチギチに縛れば『剣豪』の素養持ちくらいまでなら押さえ込めるはずだ」


 『剣聖』のお墨付きももらえたので、蔦をロープのように使うことも問題なくできそうだ。

 どうやら、エレメントフルーツにはまだまだ可能性が眠っているらしい。


 続いて、他のエレメントフルーツも見ていく。

 大体どんな効果があるかはわかっているので、僕の解説も軽く添えていく。


「エレメントマロンは爆発したり水の勢いを増して飛んでいったりしちゃうから使い方が難しいんだ」


「ファイアマロンは火魔法の爆発に似ているな……これを落とし穴に入れれば相手を簡単に倒せそうだ」


 エレメントマロンは基本的に四つとも物騒だ。

 ファイアマロンは爆発しちゃうし、ウォーターマロンとウィンドマロンは魔法の力で加速してすごい勢いで飛んでいく。

 ちなみにアースマロンはただ土を増やすだけだけど、なぜか殻が尋常じゃなく硬い。

 ナージャのミスリル剣でようやく切れるくらいなので、普通の人間にはまず割れないと言われた。 


「エレメントアップルには解毒作用、エレメントピーチには回復作用があるよ。ただすぐに魔力で引火しちゃうからなかなか携行が難しそうで……」


「いざという時の手当には使えるな。別の場所で保管しておけば、問題なく運用できそうだ」


 エレメントアップルとエレメントピーチは基本的にただの魔法効果のある果物だ。

 アップルを食べると解毒効果があるらしく、デトックス効果でお通じがよくなったりする。 エレメントピーチの方には傷を癒やす効果があり、食べているうちに膝にあった古傷がなくなっていた。


「こっちのエレメントムルベリー(桑)は、魔力を込めると弾けるよ。ゴブリンなんかが殺せるくらいの殺傷力があるみたい」


「これは完全に散弾だな……狩りなんかには使えそうだから、カディン達に使わせてみるか」


「エレメントパーシモン(柿)とエレメントペアー(梨)の効果は、まだわかってないんだ。『植樹』の素養も教えてくれないから、何かできないかと色々試してるところ」


「ふむ、なるほど……」


 こうして僕らのエレメントフルーツ見学ツアーは終わった。


 するとすぐに、ナージャは目をキラキラと輝かせながら、


「私がエレメントフルーツの使い方を実地で試すぞ!」


 と言いだした。

 元砂賊の兵士達も最近は一日の笑顔ポイントが3を超え、僕への忠誠度が留まるところを知らない状態なので、裏切りや情報漏洩も気にする必要がない。

 というわけで僕は気前よくエレメントフルーツを提供することにした。


 実際に魔物との戦闘でどれくらい使えるのかは未知数だけど……ナージャならきっと、上手く使ってくれるはずだ。

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