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事情


 僕が色々と試行錯誤をしているうちに、ランさん達が帰ってきた。


「おかえりなさい」


「ウッディ様、ただいま戻りましたよ!」


 その顔は満面の笑み、後ろにいる護衛の『白銀の翼』の人達もによによと笑っている。

 ランさん達の顔を見れば、商売の結果がどうなったのかは予想がつく。

 どうやらホクホクだったみたいだね。


 っていうか見る度に思うんだけど、なんでランさんは護衛の人達よりも前に出ているんだろうか。

 護衛の意味とは、一体……?


「当然ですが水は完売! ドライフルーツの方も大変な人気でしたよ、予約したいと言ってくれる方も何人もいました! 私、初めてここらへんの交易で黒字になりました!」


 ウッキウキのランさんのご機嫌な報告を聞いて、僕の方が泣きそうになってしまう。

 い、今までずっと赤字続きだったんだね……。


 なんて聖人君子なんだろう。

 これからはいっぱい儲けさせてあげなくちゃ……。


 あこぎのあの字もない利益度外視っぷりは、いっそ清々しい。

 商人としては間違いなく落第点だろうけど、彼女みたいな優しい人がいるから、この厳しい環境でも辛うじて物流が成り立っているんだ。

 であれば僕はそんな人達がしっかりと黒字で回していけるように手助けをしなくちゃ。


「……(絶句)」


 ナージャはランさんの商売っ気のなさに、完全に言葉を失っていた。

 そしてどうやらランさんを疑っていること自体が馬鹿らしくなったのか、急に笑い出した。

 な、ナージャが壊れちゃった……。


「……(もぐもぐ)」


 そしてアイラは相変わらずのマイペースを発揮させ、焼き栗を食べている。

 外の殻を一生懸命剥いているので、一切喋らずに黙々と剥いては食べて剥いては食べを繰り返している。


 隣には彼女が食べ終えた栗の殻達が大量に並んでいた。

 その鬼気迫りっぷりは、さながらフードファイトの選手のよう。

 一体彼女はどこへ向かっているんだろう……。


「まあなんにせよ、今急務なのはドライフルーツの量産ですね。反応も上々なので、もっと広い範囲に売りに行けます。間違いなく売れますよ」


「ぶっちゃけ皆水源は確保してますから、あんまり高い値はつかないですしね。転ばぬ先の杖的に一応買っとくか、的な感じになっちゃいますし」


 ヴァルさんが捕捉を入れてくれる。

 それを聞いてそういえばそうだったわね、とランさんが呟く。


 ら、ランさん……?

 本当に大丈夫ですか……?


 僕的にはまず水を全体に行き渡らせた方がいいのかと思ってたけど、水に困ってる場所はそんなに多くはないみたい。

 人間水がなければ死んじゃうしね。


 どうやら水不足に喘いでいる村なんかはないみたいだ。

 ――よし、それならこれもちゃんと売れそうだね。


「ランさん、次はこれを売ってみてくれませんか?」


「何かしらこれ、ドライフルーツよりちょっと細かい……?」


「これは――フルーツティーもどきです」


「フルーツティー、もどき……?」


 フルーツティーというのは簡単に言えば、茶葉に乾燥させた果物なんかを入れた紅茶のことだ。

 けど今回作ったフルーツティーには、茶葉自体はまったく使っていない。

 果物だけでそれっぽいものを作ったから、フルーツティーもどきってわけ。


 今回僕は、とりあえずグレープティーもどき、アップルティーもどきの二つを作ってみた。

 とりあえず飲んでみないことにはわからないと思うので、アイラにグレープティーもどきを入れてもらうことにする。


「これはどうやって作っているの?」


「基本的にはフルーツを刻んで煎って、水分を飛ばして作ってます。自然乾燥を待つ必要がないんで、ドライフルーツよりこっちの方が作るの簡単なんです」


 本来なら、いちいち火打ち石を使って火を起こす必要があったからちょっと面倒だった(らしい、僕はやったことがないからわからないけど)。

 けど、最近また事情が変わったのだ。

 なんてったってうちのツリー村には――『火魔法』の素養を持つフィオナちゃんがいるからね。

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