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名案


 ドライフルーツ作りは、順調と言えば順調だ。

 なぜこんな言い方になっちゃうのかというと、その理由は二つ。


 一つはフルーツを乾燥させるの自体に時間がかかるから、生産ペースがそれほど早くないこと。


 そしてもう一つは、ぶっちゃけツリー村印のドライフルーツの出来に、僕が満足できていないという点だ。


 ――これは作ってみて初めてわかったことなんだけど、生で食べて美味しいフルーツと乾燥させて美味しいフルーツというのはまったくの別物だった。


 例えば、食後のデザートとして僕が何度か食べたことのあるドライフルーツに干し柿がある。

 家で出てくるものはかなり甘くて、果物の中の糖分が表に出てきて白くなっていた記憶がある。


 けれど僕の果樹から採った柿をドライフルーツにすると、なぜかそんな風にはならない。

 たしかに強い甘みは感じるんだけど、なんというか味がぼやけているというか……。


 干し方が悪いのかと思って色々と試してもらっているんだけど、どうにも乾燥のさせ方というよりも品種自体に問題がありそうなのだ。


 交配では別種の樹を掛け合わせることはできるけど、同じ種類の樹を掛け合わせて品種改良をするようなことはできない。

 なのでブドウ同士を掛け合わせて特徴的なブドウを作る……みたいなことはできないのだ。

 あ、ちなみにハウスツリーだけは例外だったりする。

 あれは掛け合わせる樹によってサイズや外見なんかがガラッと変わるので、わりと家づくりは融通が利く。


「もぐもぐ……甘みは十分あるんだけど、何かが足りない気がするんだよなぁ」


 いや、ドライフルーツも十分に美味しいのは間違いないんだよ?

 元手がタダみたいなものだから売ればその分だけ儲かるのも間違いないし。


 でもぶっちゃけ、僕が家で食べてきた干し柿の方が美味しかったんだよね。


 基本的に僕が自分で植えた樹から採れたフルーツを食べる時、どの種類であっても僕が今まで食べたどんなものよりも美味しく感じられた。

 でも、ドライフルーツはそうじゃない。


 たしかに甘味らしい甘味がないこの砂漠では貴重な糖分だとは思うんだけど……色々と食べてきて舌が肥えている自分的には、まだ出来に納得がいっていないのである。


「そうですかね、私は十分美味しいと思いますけど」


「うむ、ウッディが求めすぎなだけだと思うぞ……もぐもぐ」


 そういってアイラが入れてくれるのは、乾燥リンゴを入れたフルーツティー。

 ナージャの方は、美味しそうにレーズンをパクついていた。


 そう、甘さがかなり強い分、うちのドライフルーツはこうやって紅茶なんかに入れたりする分にはすごく重宝する。

 アイスティーに生のフルーツを入れたりして作ったフルーツティーは、シロップを入れたんじゃないかってくらい甘くて美味しいし。


 多分焼き菓子なんかに入れる時も、レーズンなんかはかなり主張も強くて良い感じになってくれると思う。


 僕は紅茶を飲み干して、底にある乾燥リンゴをパクッと口に入れる。

 強烈な甘みが、紅茶を飲んですっきりとした口の中を幸せにしてくれた。


 紅茶自体を甘くしてくれるだけじゃなくて、最後に美味しく食べることまでできてしまう。 正しく一粒で二度美味しいってやつだよね。


「美味しい……やっぱりうちのフルーツは紅茶に入れると合うんだよね」


「でもそもそもここらへんで紅茶を飲む人なんか、そんなに多くないですよね」


「うちはオアシスと人間オアシスがあるから水には困っていないが、まあそうだろうな」


「貧乳、今なんて言ったか」


「せめて貧乳剣聖と言え! ――いやっ、貧乳剣聖とも呼ぶなっ!」


「忙しい貧乳だ」


「貧乳っていうなあああああ! 美乳、私は美乳なんだっ!」


 まあナージャが美乳なのか貧乳なのかは脇に置いておくとして。


「脇に置いておかれたっ!?」


 たしかに紅茶はそもそも茶葉のストックがあり、水もアイラが出してくれるからこうがぶがぶと飲むことができている。


 でもそもそもこの砂漠地帯で、紅茶を持っている人間がどれほどいるのだろうか。

 たとえ飲料水に気を遣う人はいても、紅茶にして飲んでいる人はそうはいないはずだ。


「……そうだ、うちの果物でフルーツティーを作ってみる?」


「フルーツティー……ですか? それなら今までも普通に飲んでたと思いますけど……」


 アイラの言っている通り、たしかに僕はフルーツティー自体は飲んでいた。

 例えば、ホットティーの中にドライフルーツを入れたり、アイスティーの中に生のフルーツを入れてみたり、といった具合に。


 でもそれだと、作るのにどうしても茶葉がいる。

 紅茶が好物である僕としては、残り少ない紅茶の残量が心許なくなってきているのに危機感を感じている。


 なんとかしなくてはとは思っていたのだ。

 あんまり馴染みはないかもだけど……ドライフルーツみたいな感じで、果物だけでお茶とか作れないかな。


 ほら、黒豆茶とか麦茶なんか、茶葉を使ってないわけだし。

 あれ、これって……もしかして案外、名案だったりするんじゃ?


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