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はじめまして


 道中、シェクリィさんから話を聞かせてもらう。

 どうやら彼らは、以前から村に生活必需品などを卸してくれていた行商人らしい。


「ランさん達は、その……一言で言えばお人好しな方ですな」


「人がいい商人というのはどうにも信じられんのだが……人好きする風を装って、金を根こそぎ持っていこうという魂胆なのではないか?」


「――いやナージャ、それは早計かも。案外シェクリィさんの言う通りかもしれないよ」


「まさか! 商人なんぞ碌なものじゃないぞ!」


 僕もナージャも、正直商人にあまりいいイメージはない。


 いかに税金逃れをするかやどうやって金を集めるかというものに早く回る頭をフルで使う彼らには、僕らだけじゃなく親達も何度も苦渋を舐めさせられてきた。


 けれど僕の考えはナージャとは違った。


 だってそもそもの話……砂漠に暮らす人達にまともな財産なんてほとんどないもの。


 信じられる?

 ここって貨幣ですら完全に行き渡ってなくて、今でも物々交換が主流なんだよ?


 何年かに一度住む場所を変えるから村の名前すらないし、家だって砂多めのレンガの即席建築で、資源らしい資源もほとんどない。


 こんなところであくどい商人が、一体何を持っていくっていうのさ?


「むむぅ、そう言われるとたしかにそうだな……」


「でも商人である以上、交易はするはずですよね。こちらは何を出しているんですか?」


「基本は砂燕麦と、あとは水に……骨で作った工芸品や拾った誰かの遺品などですね。水は基本的に重宝されるから、こちらに無理のない範囲で融通することは多いです」


 たしかにここが砂漠地帯である以上、水は命よりも大切だ。

 けどだからこそ、他人に簡単に上げられるものじゃない。


 ……ってことはそれだけ、シェクリィさん達が渡すものがなかったって考えた方が良さそうだ。


 砂燕麦っていうのは、簡単に言えば極めて少ない水で育つ砂漠の燕麦である。

 ものすっごくボソボソしていて、食べられたものではない。

 ポリッジにすれば、なんとか喉を通ってくれる……と言えば、大体の味の想像はつくと思う。


 そんなものを交易品にしている時点で、こちらの懐事情は明らかにヤバいことは向こうも気付いているはず。

 けれどそれでも交易をして、魔物の危険を乗り越えてこの街までやってきてくれるんだ。

 やっぱりその商人さん達は、かなり信用のできる人間なんじゃないだろうか。


「ウッディ様がこの日のために作ってきた交易品達が火を噴きますね」


「うん、今まで恩を受けた分、彼らにも儲けさせてあげられるようにしてあげなくちゃね」


 シェクリィさん達に生活必需品を融通してくれていたらしい。

 多分、というか間違いなく……彼らは赤覚悟で、砂漠まで来てくれている。

 恐らく道中狩った魔物を売っても、トントンにはならないんじゃないだろうか。


 今まで色々としてもらっていた分、彼らにもいい目を見てもらわなくちゃ。

 ちょっと欲張りだと思われるかもしれないけど……僕の領地に関わる人には、皆幸せになってもらいたいのだ。

 それができてこその領主だと、僕は今でも信じてるから。 


 辿り着くとそこには、自分達がもいだフルーツを振る舞っている村人達の姿があった。

 どうやら商人さん達も食べる物にそこまで余裕があるわけではないらしく、貪るようにフルーツを頬張っていた。


 ゆっくりと歩いていき、にっこりと笑いかける。


「どうも、はじめまして。ここの領主をやらせてもらっているウッディと申します」


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