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収穫袋


「おおっ、今度は集まった果物が消えていくぞっ!?」


 僕が念じると同時、何段にもなって積まれていた果物達が吸い込まれるように虚空に消え始めた。


 一分もかからないうちに、収穫物は全て消えてしまった。


 さっきまでと同じ状態に戻った。

 違いは既に、ブドウが全て収穫されていることだけだ。


「この収穫袋のスキルは、僕が持ってる『収納袋』みたく、沢山のものを入れられるスキルってことだね」


「『収納袋』の力だと!? 『空間魔導士』や『アイテムバック』の素養持ちは王国に召し抱えられるほどに強力な力だぞ!? ウッディの素養は、どんどんめちゃくちゃな方向に成長していくな……」


 呆けたような顔をするナージャ。

 その表情を見て……何故だろうか。

 僕が持つ素養を聞かされた時の母様の顔を思い出してしまった。


 ――気付けば僕は、握りっぱなしの手のひらに力を込めていた。

 そして少しだけ身体を震わせながら、


「もし『植樹』の素養がもっとひどいことになったら……ナージャも離れていく?」


 僕よりも年上で身長の高いナージャのことを上目遣いで見上げると、彼女はひうっと声にならない声を出す。

 けれどすぐに何やらぶつぶつ怪しい独り言を言ってから、気を取り直してブンブンと首を左右に振った。


「そ……そんなことはない! 私が好きなのはお前の素養ではなくて……ごにょごにょ」


 何かを言おうとしたけれど、そのままごにょごにょ言って口ごもってしまった。

 顔を真っ赤にしていた彼女は、すぐに落ち着いた。

 そして先ほどの失態を恥ずかしがってか少しだけ頬を赤く染めて、


「と、とにかくっ――私はウッディ、お前を追ってここまでやって来たんだ! たとえ『植樹』が更に進化して、世界を支配する樹が自在に植えられる魔王になったとしても、私はウッディの味方だぞ!」


「……うん、ありがと、ナージャ」


 僕も彼女の体温を感じているうちに、さっき感じた嫌な思いは消えていた。

 よし、それなら次は自動収穫と収穫袋の詳しい能力について、しっかりと調べていくことにしよう。



















「収穫袋は簡単に言えば収穫に限定して使える『収納袋』だね」


「うむむ……けれど収納容量がこれほど大きい『収納袋』など存在しません。これはもう、一つの素養に匹敵する能力かと」


 気が付けば側にいたアイラが、そう言って思案げな顔をする。

 隣にいるナージャも僕も否定しない。


 この収穫袋の力が、アイラが言っているようにとんでもない能力だということを、三人とも理解していたからだ。


 色々と実験をしてみた結果、新たに手に入れた力のことは大方把握できた。

 まず自動収穫の方だけど、これは文字通り発動した時点で今気になっていて収穫可能な果物を全て自動収穫してくれるスキルだ。

 自動収穫を使うには笑顔ポイントを10使うが、かなり有用なスキルである。


 今までは熟しすぎてしまったり、腐ったりしていた果物達を、これを使えば無駄にしなくて済むもの。

 村人の皆にも、果樹を収穫する作業をしてもらわずに済むしね。


 ただ収穫しただけじゃ以前と変わらず腐っちゃうじゃないかと思うかもしれないが、そこでこの収穫袋の出番である。


 なんとこの収穫袋にはびっくりポイントが三つある。


 一つ、収穫袋には『収納袋』のように容量上の限界が存在しないこと。

 つまり僕が植えた樹の果物を入れる分には、いくらだって入れ放題ってことだ。


 そして二つ目。

 この収穫袋――驚くことに使えばその時点で時間の流れが止まるのだ。

 熟れている果物を使って実験したし、素養のガイドも言っていたから間違いない。

 収穫袋を使って果物を貯めておく限り、時間経過で果物が悪くなる心配をする必要はないのである。


 三つ目、収穫袋を使うのに必要は笑顔ポイントは驚きのゼロということ。

 僕は必要な時に収穫袋を開き、そこからフルーツを取り出すことができる。

 この力を使えば、実質的な食糧問題はほぼ完全に解決したと言っていいと思う。


 このスキルはたしかにアイラが言うように、他のスキルと比べて性能が破格すぎる。


 自動植え替えなんて植えられるように植木鉢が自動でできるだけで作業は手動だし……なんていうか落差がひどいよね。


 ……まあ交配はかなり有用だけど、自動収穫同様行う度に笑顔ポイントを使うし。

 やっぱり消費ポイントゼロの収穫袋が強すぎる。


「でもこれで、村人の人達に収穫をしてもらわなくて済むようになったのはかなり大きいね」


「ウッディの言う通りだな。それぞれの稼業に精を出してもらえれば、それだけ村でできる産業の幅が拡がるはずだ」


「これだけ美味しい果物がある時点で、産業なんかなくてもなんとかなりそうですけどね……むしゃむしゃ」


 アイラが手に持っているのは、今にもはちきれてしまいそうなほどに膨張した薄い緑色をしたマスカット――ウォーターマスカットだ。


 そう、シムルグさんの言う通り『水魔導士』の素養を持つ彼女にはこのウォーターマスカットは相当美味く感じるらしく、このブドウはアイラの大のお気に入りなのである。


 大粒のウォーターマスカットを頬張るアイラを見たナージャは、呆れたような顔をして肩をガクッと落とす。


「アイラよ、それを言うな。それを言ったら元も子もないじゃないか……」


 そ、そんな言い方しなくてもいいじゃないか!

 別に僕だって、好き好んで変な力に目覚めてるわけじゃないんだし!


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