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【第3巻6/10発売!】スキル『植樹』を使って追放先でのんびり開拓はじめます  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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なにこれ

それから僕は、一気に忙しくなった。

 基本的に新しい果樹が植えられるようになったら伝えるようにはしているんだけど、今回は今までとはちょっとレベルの違う重要案件だ。


 今後の特産品の生産量なんかにも関わってくるため、マトン達文官に考えてもらい僕は各地に木を植えていくことになった。


 色々と試してわかったんだけど、やっぱり普通に植えた場合は全ての項目が4ずつ均等に振られ、樹木改良を使うとそこに意図的に傾斜を設けることができるようになるようだった。

 シムルグさんに聞いたところ、聖域内にある樹木は聖域の守護を受けるため、病気などにはかかりにくいらしい。


 なので耐性に関しては数値を最低限1だけ振ることにして、あとは酸味と甘みを始めとした各項目に振り分けて樹木を植えて色々と試してみた。


 その結果は、なかなかに面白いものだった。


 まずは甘さと酸っぱさに関して。


 甘さを10にして作ったフルーツを煮詰めることで、無事に濃縮ジュースとフルーツシロップの作成することができた。


 煮詰めるのに時間と人手がいるのでまだ生産量はそれほどではないけれど、すぐに人を集めて増産させるつもりだ。

 シロップ作りの方が落ち着いたら、そこから砂糖の精製なんかもできたらと考えている。


 ちなみに両商品ともとりあえず作ることができた分に関しては既にランさんに卸しており、ウェンティの特産として広めてもらっている。


 そして次に酸っぱさについて。

 これもまた、想定通りだった。

 酸っぱさを10にしてミカンの木を植えると、もうレモンなんか目じゃないくらいに酸っぱいミカンができたのだ。

 見た目的には完全にミカンなので、違和感がすごい。


 ちなみに他のフルーツの木も、酸っぱさを10にするとものすごい酸っぱくなった。

 それら絞り汁をしっかりと漉してみると……フルーツの味をわずかに残した、酸っぱい汁ができた。


 僕はマトンとランさんと一緒に話し合いをして、このフルーツ汁――フルーツ汁だと名前が良くないということで、フルーツスクイーズと命名することにした――をウェンティの特産品にすべく、ひとまずウェンティ領内で流通させることにした。


 岩塩が安定して採れるようになったのは嬉しいけれど、ウェンティの料理は基本的に味にバリエーションがあまりなかった。


 フルーツを使って甘いか、塩を使ってしょっぱいか。

 おおむねこの二つしかなかったのだ。


 けれどこの新しいフルーツスクイーズは新しい可能性を切り開くものだ。

 食は豊かさであり、豊かな領地では必ずと言っていいほどその領地独自の料理が発展していく。


 酸っぱいマンゴーや酸っぱいびわ、それに酸っぱい桃などという恐らく自然界には存在しない果物が生産できるようになったことで、他にはない独自の酸味料を大量に作り出すことができたうちの領も、これで独自の料理文化を発展させることができる下地ができただろう。

 他のパラメータを動かすことで、酸味料以外にも、色々と可能性は広がっている。


 たとえば、成長速度(樹木)。

 これは純粋な木の成長速度だけではなく、元々の樹高にも影響を及ぼす。

 成長速度(樹木)を1にしてミニチュアサイズの木を作れば、観葉植物のように部屋の中に木を置くこともできるようになる(ちなみに成長速度(果実)を0にすることで果実ができないようにすることもできるので、鑑賞専用の木も商品化の余地はありそうだ)


 逆に成長速度を最大の10にすると、以前南の方で見た椰子の木のようにとんでもない大きさになり、日に日にぐんぐんと伸びていくようになった。


 木が伸びすぎるとまともに収穫や剪定ができなくなるので、これを高くしすぎるのはよろしくないことがわかった。


 ただ木材を利用するという観点で見ると結構使えるかもしれないということなので、ウテナさん達植林管理の人達に何本か融通している。

 株分けをして爆速で育つ木々ができるようになったら、昨今王国で騒がれている森林資源の枯渇問題もなんとかできるようになるかもしれない。


 次に成長速度(果実)。

 これを最大の10まで上げると、5分に1つ実をつける促成栽培果樹が誕生した。

 純粋に食料生産の面で考えたら素晴らしいことだとは思う。


 けれどこの成長速度(果実)には、実は致命的な弱点があった。

 それは……パラメータを上げれば上げるほど、フルーツの味が落ちるという点だ。

 数値を5にするくらいまでならまだ問題なく食べられるけど、7になるとよそのフルーツと変わらないくらい、8を超えると口の中が潤うだけの何かとしか言えない代物になってしまう。


 あと耐性も、面白い性質があることがわかった。

 これは病気などへの耐性だとばかり思っていたが、どうやらもっと広い意味があるらしく。 数値を上げていくと耐熱性や耐寒性といったものから物理耐性や魔法耐性まであらゆる耐性が向上した。


 耐性を10までするとどうなるかというと……


「わ、私の一撃を耐えただとっ!?」


 なんとナージャの一撃を食らっても、半ばまで食い込むだけで割れずに耐えてしまった。


 これは間違いなく使えると睨んだ僕とナージャは、一緒にサンドストームの武装にこの高耐性木材を使うことを決める。

 軽く、固く、そして壊れづらい。

 今まで軽鎧だったので少し動きづらくはなったらしいけれど、その防御力の高さは折り紙付き。

 誰と戦うつもりもないけれど、サンドストームの戦力は更に増強されることになった。


 あ、そういえばナージャにこれを機にサンドストームを改めてアダストリア領軍として編成するように言われてたんだった。

 あとでタイミングを見計らってやらなくちゃいけない。


 ちなみにこの耐性の高さが有用なのは、何も物騒なことにばかりではない。

 耐熱、耐寒性を上がるとありがたい木があるよね?


 そう、ハウスツリーだ。

 樹木改良を使ったハウスツリーはかなり居住性が高くなり、より外の影響を受けづらくなった。


 今ある全てのハウスツリーを変えるのは無理だけど、今後新たに家を作る時なんかはこの改良バージョンのハウスツリーを建てることになるだろう。



 ……とまぁ、この樹木改良は良くも悪くも色々な変革をもたらすことになり。

 今後のことを考えて、このウェンティ内の様々な部分を変えざるを得ない状況になってしまった。


 僕はツリー村とギネア村を行き来しながら改良した樹木を植えつつ、商品開発にも精を出す日々を送ることになる。


「ん……誰だろ?」


 日々の仕事に忙殺され疲れ気味だった僕は、ドアを開いて外を見る。

 そこにいたのは、しばらく合っていなかった神狼のフェムさんだった。

 僕の背筋に、たらりと冷や汗が垂れる。


「そろそろうちの聖域化の準備が整いそうです。もしよろしければ一度様子を見に来ませんこと?」


 ……しまった、完全に忘れてた!


 マグロスダンジョンに作る第三の村の進捗状況を聞くため、僕は急いでマグロス火山へと向かいながら、フェムさんの話に耳を傾けるのだった――。







「きっと来たらびっくりすると思いますわ」


 フェムさんは胸を張りながら、自信ありげにそう言った。

 なので期待に胸を膨らませながらマグロス火山へと向かうことにする。

 そこで僕は……


「な、なにこれっ!?」


 想像していなかったほどの活気ぶりに、思わず目を白黒させるのだった――。

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