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ドラゴン


「ギャアアアアアアアオオッッ!?」


「グガアアアアアアアッッ!!」


 どうやら入り口付近にはかなりの魔物が詰め寄っていたようで、とんでもない量の悲鳴が聞こえてくる。


 そして鉄板によって押しつぶされた死体を、鉄板ごと踏み越えながら魔物達がやって来た。


「あれは……レッドリザードにフレアスライム、それにダークウィスプ……報告の通り、どれも火属性のモンスター達だな。強さはD前後だが、何体か強いのがいる」


「わかった。ナージャ、いざという時は頼んだよ」


「――ああっ!」


 僕らが話をしていると、ドドドドドと地響きが聞こえてくる。

 ダンジョンの入り口が空いたことで、今までせき止められていた魔物達が噴き出してきたのだろう。


 その勢いと異形の軍勢を見て思わず一瞬固まってしまう。

 そんな僕の緊張を解いてくれたのは、手を握ってくれたアイラだった。


「――撃てぇっ!!」


 僕の合図と共に、一列目のダークウッドゴーレム達が黒弾を放つ。


「「「ギャアアアアアッッ!!!」」」


 死体や瀕死の魔物達に攻撃を当てても意味がない。なのでいくつかのグループに分けて時間差で攻撃をするようにして、なるべく無駄玉が減るように工夫をしてみた。


 一列目のダークウッドゴーレムの最後のグループが黒弾を放ったところで、状況を確認。

 生きている魔物はいない。そしてあちらこちらに魔物のドロップアイテムが散らばっている。

 死体が残らないのが正直ありがたい。


「二列目用意――」


 二列目のダークウッドゴーレム達に黒弾を撃たせ、とりあえず魔物を倒しきる。

 他のウッドゴーレム達に魔物から出たドロップアイテムを適宜回収してもらいながら、ひたすらに遠距離狙撃を続けていく。


 二列目の黒弾が終わったら一列目、二列目のダークウッドゴーレムが後ろと交代。

 ある程度魔力を回復させるために最後尾に回していく。


「よし、あのワイバーンを狙って――発射!」


 掃射をしてモンスターを倒しまくっていると、とうとうただの黒弾だけでは倒せない魔物が現れた。

 そんな奴らには、左右にいる密集させているダークウッドゴーレムの黒弾をお見舞いしてやる。


 真っ赤な鱗で身体を覆っているワイバーンも、密集黒弾で問題なく倒すことができた。


 発射、発射、拾って発射……。

 ダンジョンの底から洞穴を通ってやってくる魔物達が次々と黒弾の前に倒れては、ドロップ品に変わっていく。


 そしてそれを拾いながら、瀕死の魔物達にトドメを指していくウッドゴーレム達。

 中にはフレンドリーファイアを受けている個体もいたけど、そういった個体はホーリーウッドゴーレムがしっかりと癒やしているため、被害は数体ほどで済んでいた。


「俺は今……何を見ているのだ……?」


「うんうん、わかるよ。元は私達も同じ気持ちだったからね」


 呆けた様子のビスさんの肩を叩きながら、オシャレ番長ことルルさんが訳知り顔で頷いている。

 そして少し離れたところで、ミリアさんもしきりに首を縦に振っていた。



 僕らが見守る中で、ものすごい勢いで魔物達がやられていく。

 ダンジョン化している洞穴はものすごい硬度があるらしく、どれだけ黒弾を撃ち込んでもまったく微動だにしていない。


 ダンジョンの入り口から僕達のいる火山の麓までは、完全に一本道になっている。

 そのおかげで魔物達が予想外の動きをすることはない。


 さっきからちょろちょろ出てくるワイバーンのような飛行型の魔物もいるけど、入り口に弾幕を集中させれば問題なく倒せる。


 僕の横に、ドロップ品がどんどんと積み上がっていく。

 レッドリザードの鱗や、これは……火炎袋かな?

 それに頭が燃えている人型の魔物であるファイアマンの持っている槍や盾なんかもものすごい数になっている。

 ドロップ品にはある程度の規則性はあるようだ。

 へぇ、既になめされた状態で革として出てくるアイテムもあるのか。


 ……っと、そんなことをやってる場合じゃなかった。


 ウッドゴーレムは僕らと同じく魔力を持っている。

 そして何もしないと、魔力は微量ながら回復していく。


 なので数発ずつ撃たせたらすぐに後退というのを繰り返して、少しでも消耗を抑えながら魔物達を倒していく。


 始めたのは昼で、魔物の数がまばらになってくるまでに三時間以上がかかった。

 既に第一陣のダークウッドゴーレムの魔力が心許なくなっており、新たに取り出したダークウッドゴーレム部隊達に交代させている。


 けれどどうやら……なんとかなりそうだ。

 とうとう魔物が出てこなくなり、ようやく終わりが見えてきたなと一安心した時のことだった。


「グオオオオオオッッッ!!」


 中からとんでもなく大きな咆哮が聞こえてくる。

 そして明らかに洞穴に入りきらないほどのサイズのドラゴンが、壊れた扉の向こう側に見えた。


 ピシ……ピシピシッと先ほどまでどれだけ攻撃を受けてもびくともしなかった洞穴にヒビが入り始める。

 そして――パリィンッ!


 洞穴をぶち破って、ドラゴンが地上へと降りてきた。

 火山に棲んでいるからか、その体表は赤い。

 覗いている鋭い牙の間の隙間からは、ちらちらと小さな炎が見え隠れしていた。


「グオオオオオオオオオオオオッッッ!!」


 即座にダークウッドゴーレムを密集陣形に変更。

 威力を上げた黒弾を撃たせた。


「グオオオオッッ!?」


 密集黒弾を食らったドラゴンが苦悶の声をあげる。

 ダメージは与えられてるみたいだけど……うん、間違いなく火力不足だね。


「ナージャ、お願い!」


「ああ――ミリア、ルル、ついて来い! ドラゴン狩りの時間だ!」



 ナージャが放った飛ぶ斬撃が、ドラゴンへ飛んでいく。


「グルルッ!」


 ドラゴンはそれを避けようとするが、ナージャの放った速度の方が速かった。

 ブシッと音を鳴らし、ドラゴンの身体に傷がつく。


「行くぞ、ルル!」


「任せて、ミリアちゃん!」


 ミリアさんとルルさんも身体強化で底上げした身体能力を遺憾なく発揮させ、その姿を消した。

 見失っていた僕が気付いた時にはドラゴンに肉薄しており、二人の一撃がドラゴンにダメージを与えていく。

 ドラゴン相手だと最低限距離を取りたいからか、カタナを使って見事にダメージを与えていた。


 僕は彼女達に攻撃を当てないように気を付けながら密集黒弾を放ち続ける。

 特にドラゴンが飛んで空を逃げようと姿勢を変える時には、なんとして空を飛ぶのを邪魔するように攻撃を集中させた。


 流石に飛ぼうとする瞬間に攻撃を食らうと上手く飛ぶことができないらしく、ドラゴンを空に上がらせることなく地面に留めたまま戦い続けることができている。


 空を飛ぶ魔物の最も厄介な飛行能力を封じ込めてしまえば、あとは純粋な戦闘能力での戦いだ。

 そしてこと戦闘に関しては……


「グオ、オォ……」


 『剣聖』である僕の婚約者の右に出る者はいない。 

 ズズゥンと大きな音を立てて、ドラゴンが地面に倒れる。


 そしてドラゴンはそのままフッと、音もなく消えた。

 先ほどまで身体があった場所には一本の剣が置かれている。


「おおっ、これは凄い業物だぞ!」


 鞘までしっかりついていたドラゴンの剣を抜いたナージャが唸る。

 ドラゴンを倒したら出てきた剣だ、たしかに相当貴重なものなんだろう。


 ナージャはミリアさん達の剣を見て新しい武器をほしがってたし、是非彼女に使ってもらえたらと思う。


 こうして僕達は無事にダンジョンの魔物を討伐することに成功したのだった。

 ウッドゴーレムは結構やられちゃったけど……人的被害はなしで切り抜けることができた。

 これでようやく、ドワーフ達をウェンティに迎えることができそうだ。

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