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邪道


 僕らはマグロスレスリングの会場へと向かうことになった。

 道中なんとか断ろうとしたんだけど、どうもそういうことができる雰囲気ではない。

 ミリアさんもああいっていたし、やるしかないのか……。


 その間に、マグロスレスリングの説明を受ける。

 ルールはシンプル。


 リングの上に上がって、取っ組み合いをするというものだ。

 武器を使ったり急所を狙ったりするのは禁止で、手をついた方が負けということらしい。


 純粋な腕力の強さだけではなく、相手に手をつかせるための技術も必要となるらしく、マグロスに住んでいるドワーフ達は日夜マグロスレスリングをしては酒を飲むという生活を送っているんだとか。


 うーんなるほど……角が立ちそうなので、ノーコメントでいこうと思います。


 やってきた会場は、思っていた三倍くらいしっかりと作られていた。

 中心にある試合場の四隅には太い鉄柱が立っており、鉄柱同士を蔦のようなもので繋げている。多分だけど、選手が場外に出ないための処置なんだろう。


 そしてマグロスレスリングを観戦することができるように、周囲には観客席がもうけられている。


 今回の代表が僕ということで、リーダーであるビスさんと僕が戦うことになった。

 リングの上にやってくると、ビスさんは既にパンツ一丁になり準備運動をしていた。


 服を脱いだから、その身体の発達具合がよく見える。

 血管がバキバキになっていて、少し動く度に筋肉がすごい勢いで躍動していた。


 服を着ていると不利になるということで、僕も服を脱ぐ。


「ウッディ様の上裸……(ごくり)」


「あ、案外しっかりと鍛えているんだな……」


 後ろの方からナージャ達の寸評が聞こえてくる(アイラのはちょっと違うかもだけど)。


「それでは用意……始めっ!」


 背後に気を取られているうちに、試合が始まった。

 ビスさんがその体躯に見合わない素早い動きでこっちに接近してきた。


 ――当然ながら僕は、正攻法で挑むつもりはない。


 僕はまず、『植樹』を使いリングに世界樹を植えた。それを植木鉢に入れる。

 そして相手を引きつけて引きつけて――思い切り投げつけるッ!


 ビスさんが突如として現れた植木鉢に驚き、防ぐために両手でガードの姿勢を取った。

 植木鉢とビスさんがぶつかる瞬間に即座に樹木間転移を発動し、ビスさんの右手の上に転移。


「そおおおいっ!!」


「おおおおっっ!?」


 自重と今の僕が出せる全力を合わせて強引に右手を下げると……ぺたり。

 ビスさんの右手がレスリング場についた。


「勝者、ウッディ!」


 ナージャが即座にそう声を上げると、いつの間にか観客席にやっていたドワーフ達から野次が上がる。

 それを制したのは、他の誰でもなく選手であるビスさん当人だった。


「なるほど、たしかにこれを武器ということはできないだろう。一本取られた……と言わざるを得ない。小さい子供と思い舐めてかかった俺のが、慢心のツケを払わされただけだ」


 スキルの力を使ったごり押しでなんとか勝つことができた。

 というわけで無事マグロスレスリングは僕の勝利で終えることができたのだっ……


「では続きまして第二試合! ナージャ選手VSアリアナ選手!」


 って、まだ終わりじゃないのっ!?

 ……ていうか、ナージャもやるのっ!?



 本当に終わりではなかった。

 なんとあの後、今回マグロス火山にやってきた五人全員がマグロスレスリングをやることになった。

 なんでもこれはここのドワーフ達に認めてもらうためのある種の通過儀礼らしく、半強制で皆取っ組み合いをさせられることになった。

 ちなみに男女間の配慮はされており、僕以外のメンバーは皆女性のドワーフ達と戦っていた。


 僕は女性のドワーフを見るのは初めてだったけど……なんというか、皆オブラートに包んだ言い方をすると、愛らしい見た目をしている。

 成人していても身長は僕の胸のあたりまでしかなく、目がくりくりとしていて頭が大きく、身体も第二次性徴が来る前のような状態で成長が止まっている。


 けれどそのパワフルさは流石ドワーフといった感じで、ルルさんなんかは自分より一回りも小さいドワーフに投げ飛ばされていた。


 こうして無事五人全員が試合を終え、これで問題なくドワーフ達を連れてくることができる……と思いきや、そうは問屋が卸さなかった。


 僕らの健闘を讃えるという名目で、酒盛りが始まったのだ。

 ミリアさんに聞いたところによると、ドワーフは基本的に何か理由をつけてはお酒を飲むらしい。

 そしてその酒の誘いを断ることは、何にも増して彼らを不機嫌にさせるのだという。


 エルフとはまた違った意味で変わった種族だなぁと思いながらも、僕は酒宴に参加するのだった――。

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