エピローグ
結局、仲直りができたのかどうかの判断は僕にはつかなかった。
けれど起きたアシッドと話をした時の彼の顔を見ていた限り、前よりは関係もいくらか前進したように思う。
そして次の日、まだ傷の残っている身体を半ば引きずるようにして、アシッドは領地へと帰っていった。
もっとゆっくりしていくように言ったのに、相変わらず彼は人の話を全然聞かない。
けれど……
「じゃあな、クソ兄貴」
そう言ったきり振り返らなかった去り際のアシッドの顔は、なんだか憑きものが落ちたように見えて。
僕は兄として最低限の役割くらいは果たせたのかなぁと、少しだけ思うのだった。
ギガファウナを倒すことに成功したことで、ビビの里の世界樹はその力を取り戻した。
というか僕が色々と手を加えたおかげで、なんだか以前よりも元気になっているらしい。
世界樹を何本か追加したことで使える魔法陣の幅が増えて、ギネアの街のように収穫以外のものも色々と融通を利かせることができるようになったみたい。
僕が置いてきた樹木守護獣のアースモール達は、今ではエルフの研究者達の間でマスコットになっているらしい。
それを聞いてレベッカも対抗心を出したらしく、彼女は定期的にビビの里の世界樹の地脈操作を行うことになった。
いや、だからなんで君が対抗心を出すのさ!?
ウェンティにまつわる問題も解決したし。
ギガファウナを倒してエルフの里の問題もなくなった。
ひとまず喫緊の問題は全て片付けることができたわけだ。
というわけで久しぶりに、ツリー村で宴会をすることになった。
するとどこから話が伝わったのか、色んな人が参加を求めてきはじめてしまって。
全員を呼ぶわけにもいかず、やってくる人達を選ばなくてはいけない上体になってしまった。
僕は今、事前の準備で少しだけくたびれているのを必死に押し隠しながら、壇上に立っていた。
「えーっと、それでは……何に乾杯すればいいかな?」
「それでは、私とウッディ様の輝かしい未来に」
「私とウッディの婚約にだ!」
僕の隣に立っているのは、アイラとナージャ。
ナージャはいつもより胸を張って、喜色を隠し切れていない。
今回、僕が改めて子爵として叙爵をされるうことになったことで、僕と彼女との関係性は変わった……というか、元に戻った。
ギガファウナを討伐し食料生産すら可能とする僕のスキルの力を知った伯爵が、僕とナージャが再び婚約をすることを許してくれたからだ。
これでナージャの肩書きは、自称婚約者から婚約者に変わった。
彼女が楽しそうに笑っていて、僕も気分が良くなってくる。
あ、ちなみにアイラの方もナージャと婚姻をした段階で、僕の側室になることが内定している。
なのでこころなしか、アイラの機嫌も良さそうだ。
「エルフの里を救ってくれた英雄に!」
ハイエルフのファナさんに、僕を里まで連れて行くことを許可してくれたアカバネさん。
後ろの方にはメゴさんやマゴさん、ウテナさん達の姿も見えている。
「ダークエルフの窮状に手を差し伸べてくれた勇者に!」
「私達に未来をくれた領主様に!」
そしてそのすぐ隣には、ダークエルフ達の代表としてきてくれたミリアさんとルルさんの姿がある。
エルフとダークエルフのこじれた仲を元あったように一つに戻すには、まだまだ時間がかかる。
きっと僕なんかじゃ想像もつかないような、とてつもなく長い時間が必要になるだろう。
けれど今こうして同じ場所に立っている彼女達を見ると、その端緒くらいは作れたんじゃないかなぁという気持ちになってくる。
「公爵に一泡吹かせた王国の新たな青き血に!」
「姉上のこと、絶対に幸せにしてくださいね!」
そしてこの場には、ナージャの家族枠でトリスタン伯爵と彼女の弟のウェイン君の姿もある。
初めて見るツリー村に圧倒されたり、エルフやダークエルフ達を見て更に顎が外れそうになるほど驚いていた彼らだったけど、今ではいつも通りに戻っている。
というか、そんなに心配しなくても大丈夫さ。
ナージャのことはきちんと、幸せにしてみせるから。
「ウッディ様、今後ともごひいきに!」
「私達のことも忘れないでくださいね~っ!」
少し離れたところには、商人のランさんとその護衛である『白銀の翼』の面々の姿がある。
彼らが上手くウチの品を捌きながら奴隷を買ってくれていたり、各地からウェンティへ人を誘致してくれたおかげで、ツリー村の人口はかなり増えている。
いきなり解放されても奴隷達も困るだろうから、今は色々と仕込みの段階だ。
けれど人口が爆発的に増えたおかげで、現在一日に入る笑顔ポイントの数は既に2000を超え3000に届きつつある。
これからはウェンティだけじゃなくて各地にもフルーツを卸さなくちゃいけない。
これで当座のお金は稼げるようになったから、後はウェンティの人達だけでしっかりと稼げる物作りをしなくちゃね。
しっかりとした産業のノウハウを持っている奴隷なんかも買い集めているので、そう遠くないうちに鉄鋼業や加工業にも手を出す予定だったりするから、まああんまり心配はしていないけど。
ちなみにランさん達の回りには、シェクリィさんやマトンを始めとして、ウェンティの十人達の姿が合わせて五十ほどある。
皆忙しい身なのだけれど、時間を合わせてやってきてくれたのだ。
ホストの僕は、気合いをいれなくっちゃいけない。
「えーっとそれじゃあ……皆の今後の発展を願って……乾杯!」
「「「乾杯っ!!」」」
最初はアイラと二人きりで、先がどうなるかなんてまったくわからなかった。
けれど今……僕の周りには、こんなにたくさんの人がいてくれる。
とりあえず最大の山場は越えたけれど、まだまだ課題はたくさんある。
けれど僕らで力を合わせればきっと大丈夫。
きっとどんな難関だって、僕らなら乗り越えられるはずだ――。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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