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コンラートの血


 コンラート公爵は、アリエス王国の北部を収める大貴族である。

 東を見れば同じく大貴族であるトリスタン伯爵領があり、両者は親の代から良好な関係を保ち続けていた。


 コンラート公爵は鉱山の採掘権や林の権利を巡って西のマグラード侯爵家と小競り合いを繰り返しており、その関係性は悪化する一方。いつ戦争になってもおかしくないような緊張が続いている。


 そしてトリスタン伯爵は、隙あらばこちらの様子をうかがおうとしてくる東の隣国に対して備えをしなければならなかった。


 別の敵を抱えている者同士、仲良くした方が得が大きかったのdあ。


 けれどここ最近、両者の距離は離れつつあった。

 その理由は細かくあげていけばキリがないが、やはりトドメになったのはウッディとナージャとの婚約破棄だろう。


 廃嫡されたウッディは勘当同然で北の砂漠地帯へと追いやられてしまい、彼の代わりに婚約を結ぶことになったアシッドのことをナージャは認めなかった。

 そのせいで両者の緊張は高まっている。


 南にある中小貴族達の領地を削り取りながら西部にも目を光らせている現在のコンラート家に、戦力的な余裕はない。


 そのため平定を急ぐべく、コンラート公爵に命じられたアシッドはその素養の力を戦場で発揮させているのであった。


「吹き飛べや――カオスフレアッ!」


「「「ぐわあああああっっ!」」」


 アシッドの『大魔導』の素養は、代々コンラート家に受け継がれてきた最強クラスの素養の一つである。


 アシッドは四属性魔法に対する適性を持ち、さらには系統外魔法である闇魔法すら会得している。

 今では闇属性を他の属性と掛け合わせて放つことまで可能になっていた。


 彼が放つ闇の業火が、コンラート家の支配を拒む貴族連合軍達を包み込んだ。



 アシッドが気合いを入れて何発か魔法を打ち込むだけで、敵軍はあっという間に壊滅してしまった。


「はあっ、はあっ……こんな雑魚共の相手してる場合じゃねぇんだ! さっさと掃討に入れ!」


「「――はっ!」」


 強大な魔法を連発し、息を荒げながらもアシッドが命令を出す。

 こうして彼が指揮をするコンラート公爵軍は、無事に南部に残っていた反抗的な貴族連合軍を倒すことに成功するのだった。


「これで……やっと帰れる」


 アシッドは父直々に行われてきた地獄のような魔法の訓練にも耐えてきた。

 領主としてやっていく上には必須だからと、帝王学や領地経営の経済学などについてもひたすら知識を詰め込んでいる。

 戦場に向かう間であっても、決して鍛錬は欠かさなかった。


 初陣はとうに済ませていて、戦場に立つことにだって慣れてきている。

 戦働きだって、父と比べれば見劣るするとは言え、なかなかのものなはずだ。


 普通の魔法の素養を持っているようなやつでは到底できないような大魔法の連発がなければ、こう簡単に勝負が決まることはなかっただろう。

 全てはアシッドを嫡男に引き上げた『大魔導』のおかげだ。


「あのウッディじゃあ、こうはいかなかっただろうよ……クックックッ」


 今思い出しても笑えてくる、出来損ないの兄の蒼白になった顔を思い出す。

 半分だけ血のつながっていることすら嫌で嫌でたまらない、大嫌いな男が廃嫡されるあの無様な瞬間は、アシッドの一生ものの思い出だった。


 アシッドは血なまぐさい戦場を見るのに飽き、上を向く。

 既に日が落ち始めており、空には星が輝き始めていた。

 手に持った杖の握りを確かめながら、ぽつりとつぶやく。


「これだけ頑張れば……俺も父上に、認めてもらえるだろうか」


 アシッドは自分の口から出た弱い言葉を打ち消すように、慌てて首を振る。

 そして残敵掃討は終わりにして野営の準備をするよう、部下の兵達へと申しつけるのだった。


(領地に戻るまでは……あと少しの辛抱だ。そうすれば俺も、父上と母上に会える)


 ふぅとため息を吐いてからアシッドは視線を下ろし、サボろうとする兵の尻を蹴り上げる。

 まさか帰った時には、事態が急変していることなどつゆ知らず――。


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