里
エルフ達の政治は、長老と呼ばれる長生きしているエルフ達による合議制で決められている。
僕らはこの里のお偉いさんである長老達が集まっている会議室へと呼び出されているのだ。
「おじゃましま~す……」
中に入ってみると、そこにいたのは初めて見るよぼよぼのエルフ達だった。
ただ中にはまだ若い、それこそ二十代にしか見えないようなエルフも何人かいる。
長老達のリーダーと思われるのは、テーブルのお誕生日席にいる女性のエルフだ。
彼女は他の人達よりも更に若く見え、僕とそう変わらない年齢にしか思えない。
「私はファナと申します」
「僕はウッディと申します。よろしくお願いします、ファナ様」
「神獣様とその御遣い様……というよりかは、仲のいいパートナーといった感じですね」
「そ、そんなのはまだ早いですわっ!」
なぜか焦りだしたレベッカをあやしながら、内心で冷や汗を掻く。
どうやらファナさんには、全てバレてしまっているようだ。
よく見ると彼女の耳は、他の人達と比べてと長かった。
僕が観察していたのかわかったのか、彼女が首をわずかに傾げる。
「ハイエルフを見るのは初めてですか?」
「なるほど、通りで……はい、初めてです」
ハイエルフというのは、以前エルフとダークエルフが二つの種族に別れる前に生きていた始祖エルフに最も近いと呼ばれる存在だ。
寿命もエルフの何倍もあり、千年を超える時を生きることができるという。
どうやら彼女はこの里ができた時からここにいる、ビビの里の重鎮らしい。
だったら話が早い。
彼女と話を通してしまえば、一気に話が早く進むはずだ。
「アカバネさん達から話は聞きました。調査隊の方は、地脈の異変の原因を見つけたのですか?」
「ええ、発見しました。といっても……今の私達では、容易に手出しのできぬ相手ですが」
「もしよければ、詳しい話を聞かせてもらえませんか? もしかしたら僕達も、手を差し伸べることができるかもしません」
「地脈から魔力を吸い上げていたのは、カリカ草原に居座っている強力な巨人族――ギガファウナだったのです」
「カリカ草原だって!?」
声を上げたのは、僕の後ろで有事の時のために控えていたナージャだ。
彼女の顔色が明らかにおかしいと思い話を聞くと、なんとカリカ草原はナージャの家であるトリスタン家が所有している草原という話だった。
「巨人族はとにかく体力が多く、また、強力な魔法抵抗を持ちます。魔法戦を得意とする我らとは相性が悪いのです。私が現地に向かうことができればそれでもなんとかなったでしょうが……現在では結界を張っているためここを出ることもできません」
「え、結界を張っているって、それじゃあ……」
「はい……このエルフの里を守ってくれていた神猫ヤンピィ様は……既にこの世にはいないのです。世界樹も最近では元気がないこともあり、恐らくこのまま地脈からの魔力供給が期待できないとなると……そう遠くないうちに、枯れてしまうことでしょう」
神獣様が死んでしまい、ハイエルフのファナさんがなんとかして保っている結界。
枯れかけている世界樹と、それを指をくわえてみているしかないエルフ達。
そして地脈を吸い上げどんどん強力になっているはずの、トリスタン領に暮らしている巨人。このままではトリスタン領に甚大な被害が出かねない。
なるほど、たしかに一つ一つの問題は難題だ。
けれどこれ……僕らなら、全部まるっとまとめて、解決できちゃうんじゃないかな?
僕は考えを自分なりにまとめ……うんと一つ頷いてから、顔を上げる。
「今ファナさん達が抱えている問題、僕らが全部解決してみせます。その代わりと言ってはあれですけど……僕らのお願いを聞いてもらえませんか?」
そう言って笑う僕を見て、ファナさんはきょとんとした顔をするのだった――。
【しんこからのお願い】
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