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悪役令嬢は踊らせ、られる。

悪役令嬢は踊らせ、られる。

作者: 里予田 華子

初投稿です。拙い文章ですがよろしくおねがいします。

 それは、学園の卒業パーティーでのことでした。

「ヴィクトリア·デントアール!お前との婚約を破棄させてもらう!」

 テオドール王太子殿下が、わたくしに言いました。体が震えます。

「何故でしょうか?」

「当たり前だろう!崇高なる王家である私が、お前のような混じりものと結婚するわけがない。隠していたようだが、私には通じない!皆、聞け!この女は公爵家の血など一滴もひいてないのだ!こいつは、前公爵の養女だ。」



 確かに、わたくしは公爵家の血をひいてません。公爵家の人間は、白銀色の髪に海色の瞳をしていますが、対するわたくしは、白金プラチナブロンドに茜色の瞳をしています。

本当の両親は10年前に事故でなくなりました。母親は平民でしたが娼館で生まれたため貴族の血を引いていました。そして、娼館にやってきた父親である当時の伯爵令息と出会い恋に落ちたそうです。父は周りの反対をおしきり母と結婚しわたくしが生まれました。わたくしの記憶の中にある父と母はとても幸せな顔をしていました。両親の死後、厄介者として親戚たちにたらい回しにされていたところを父の親友で前公爵であるお義父様に引き取っていただきました。

でも、今更そんな事を言って何になるのでしょうか?これは、公然の秘密です。これだからこの王子はだめなのです。


「そして、なにより私の運命である、マリアンヌ・ヘリア嬢をいじめた。身分が下のものをいじめるなど、次期王妃としてありえない!」

 王太子殿下の後ろから、桃色の髪をした、男性方によると守りたくなるような子だと言うマリアンヌ・ヘリア嬢が現れます。

「私は、ヴィクトリア様にいじめられてましたぁ。とっっっても怖かったですぅ〜。でもぉ、テオ様に助けてもらったのでぇ嬉しかったですぅ。」

へリア嬢が言った内容に周りがザワザワしました。わたくしがいじめていた、ということにではありません。花頭(テオドール)殿下のことを愛称で呼んでいること、大した証拠もなくわたくしを糾弾しようとしていることにです。

もし、わたくしが無実だったらどうするのでしょうか?どっちにしろ彼女に貢ぐ令息は減るでしょうね。


 体の震えが止まりません。笑いが今にも出そうです。すべてわたくしの計画(きゃくほん)通りになりました。今まで8年間彼に協力してもらい、この日のために動いてきました。

王太子殿下、いや花頭(テオドール)殿下に婚約破棄してもらう、そのために運命の相手――ヘリア嬢――まで用意しました。へリア嬢を選んだ理由は、何人かの運命の相手の候補がいたのですがその中で一番顔が良く、一番操りやすそう(一番頭が悪そう)だったからです。初期の計画では、わたくしの性格が悪すぎる、ということで破棄してもらおうと思っていましたが彼に止められてしまいました。わたくしは別に良かったのですけどね。

挙げられる罪はわたくしが捏造したものです。このまま計画(きゃくほん)通り進むと、傷心のわたくしが領地に帰りきちんと調査をしたところ、無実だったとわかる、公爵令嬢の罪をでっち挙げた花頭(テオドール)殿下は王位継承権の剥奪、へリア嬢は男爵から縁を切られ平民となるはずです。

花頭(テオドール)殿下とへリア嬢は、自分たちでわたくしを追い詰めたと、喜んでおられますがすべてわたくしの手のひらの上、わたくしに踊らされていたのです。


「――トリア、ヴィクトリア!聞いているのか?本当に可愛げのない女だな、すました顔をしてられるのも今だけだぞ!」

 聞いていませんでした。わたくしは自分の考えに没頭すると周りのことが見えなくなります。悪い癖です、彼にも直すように言われていたのに。

それで何でしたっけ?すました顔をしてられるのは今だけ、でしたっけ。当たり前でしょう、わたくしの計画(きゃくほん)なのですから。自分の計画で慌てるような馬鹿はいないでしょう。

「この女は、将来の王妃であるマリアンヌを殺そうとしたのだ!よって、王家を害そうとしたことにより処刑にする!」

「……は?」

 思わず、表情が崩れます。流石に殺そうとすることまでは計画きゃくほんにありません。

「何を言っているのですか?わたくしはへリア嬢を殺そうとなどしておりません!証拠はあるのですか。」

「今のお前自身の言葉が証拠だ!疚しいことがあるから反論するのだろう。衛兵!この女を牢へ連れて行け!」

「そうですぅ!将来の王妃を殺そうとした罪をつぐなってくださいぃ。」

 衛兵がわたくしを取り押さえます。ここで反抗するのは簡単ですが得策ではありませんし、牢へ入ったとしても彼が助けに来てくれることでしょう。わたくしは大人しく衛兵についていくことにしました。

でも、ホールを出ていくときに見えたへリア嬢が本当に怯えて見えたのは何故でしょうか?



 ✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽



 牢に入って3日程経ったでしょうか?見張り番から聞き出したことによると、卒業パーティーの1週間前へリア嬢は男に襲われたそうです。幸い男はすぐに捕まりへリア嬢に怪我はなかったのですが、尋問するとわたくしが命令したと吐いたというのです。

見張り番には、自分が命令したのにそんなこともわからないのか、と可哀想なものを見る目で言われました。きっと嫉妬に狂って婚約者の恋人を殺そうとしたが失敗し、牢に入れられたせいで何が正しいのか判断できなくなっている令嬢だと思われています。

見た目()()はいいですもんね、花頭(テオドール)殿下は。


「彼はまだでしょうか?そろそろここから出られてもいいと思うのですが…」

 薄くて固くカビ臭いベッドに腰掛け高いにある窓をながめます。ここは貴人牢ではなく、一般牢なのです。さすがのわたくしも驚きました。一般牢であるのもここから早く出たい理由の1つです。私は貴族なので、このような場所には、なれてません。

それに、気分も悪いです。わたくしはいまだにパーティー時に着ていたドレスのため、コルセットでお腹を締められているのです。普通、牢に入る時は囚人服に着替えさせられますが、わたくしにそれがないということはただの嫌がらせでしょうね。

しかし本当に遅いです。まだ3日しか経ってないではないか、とおもうかもしれません。でも彼の本気だと、あのような冤罪は半日で晴らしてくれるはずです。このように彼が来ないことは、わたくしの不安を掻き立てるとともにある恐ろしい仮説を立ててしまいそうになります。

彼がわたくしを裏切った、という仮説を。彼との付き合いは婚約期間より長いので、それはありえないと信じてます。


 コツコツと足音が聞こえてきました。彼が来てくれたのでしょうか?それとも終わりが来たのでしょうか?牢の鍵が開けられます、来たのは……


✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽




3日ぶりの太陽が眩しいです。髪が短くなった所為でさらされた首元が、風に撫でられてスースーします。わたくしの下に来たのは終わりでした。

『罪人に長い髪は必要ないだろう。』

と自慢の髪の毛を切り落とされました。一歩一歩進んでいく間にも終わりは近づいてきますが1つ、はっきりしたことがあります。

彼は裏切ったのです。それが悲しくもあり虚しくもあります。怒りは不思議とわきませんでした。


処刑台が見えました。鉄の刃が輝いているのがよく見えます。

わたくしの処刑には、今王都にいる貴族の当主たちが見ながら行われます。これは、王家に逆らうとこうなる、という見せしめの意味もあるためです。公爵家当主が座る場所に彼もいてわたくしを見ています。

あっ!目が合いました。あったと思います。あれは本当に彼ですか?彼の瞳はまるで冷たい冬の海のようです。記憶にある彼の瞳は海は海でも暖かく綺麗な海です。いや、隠していただけで本当はあのように見ていたのかもしれません。

そんな瞳で見られても、全く怒りはわきません。そのまま彼を見ていると、わたくしにだけ見えるように彼の手が何やら形を作ります。わたくしと彼だけにわかる暗号です。

『と・て・も・じょ・う・ず・な・ダ・ン・ス・だ・っ・た・よ・』

 たったそれだけですべてわかりました。わたくしも彼に踊らされていたのです。

なんだか、泣いてしまいそうです。すべて彼の計画(きゃくほん)通りでした。この処刑を決め、さっきからずっとニヤニヤしながらわたくしを見ている花頭(テオドール)殿下に聞かれます。

「最後に言い残すことはあるか?」

彼からのメッセージに気づかなかったら何もありませんでした。でも、気づいたわたくしには泣きそうになりながらも伝えたいことがあります。

「言ってくださればっ、わたくしは、あなたのために、いくらでも、踊って、差し上げましたのに、では、お元気で、さようなら、ですわ。」

彼に似合わないと散々言われ続けた令嬢言葉ですべての思いを告げると、処刑の時間を告げる鐘が鳴りました。首が台に固定されます。

そして、冷たい鉄の刃―彼の瞳よりは暖かい―が落ちてきました。一瞬鋭い痛みがはしり、わたくしの意識は真っ暗な闇の中に沈んでいきました。


最後に見た彼の瞳は、少し暖かくなっていた気がします。




✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽





お義父様は何を考えていらっしゃるのでしょうか?あんな花畑野郎とは結婚なんてしたくありません。あら、失礼。口がわるくなってしまいましたわ。え?似合わない令嬢言葉はやめろ、ですって?いくらお義兄様でもそれはないでしょう。

それより、花頭(テオドール)殿下のことです。あれは、わたくしと顔を合わせた瞬間『お前のような愛想のない不細工と王太子である私が婚約してやるんだ!感謝しろ、私には逆らうなよ。』

などといったのですよ。婚約してあげるのはこちらの方なのに、わたくしがいなければ王太子になどなれなかったのに。あれとなんか結婚したくありません。結婚するぐらいなら自分で喉を突いて死にます。でもあれのために死にたくなどありませんので、今からお義父様に頼んで破棄させてもらいます。

公爵家からの破棄はできない?では、どうしたら良いのでしょうか?


『こちらからできないのなら向こうに破棄させたらいいだろう。』


少し考える素振りを見せたあと彼は、――お義兄様であるレオンハルト・デントアール公爵令息――は微笑みながら言いました。暖かい海色の瞳に、気づくか気づかないくらいの濁りを混ぜながら…








 

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