08 おもい
王都男祭り
元々は武勇を誇る屈強な戦士たちが、その肉体美を宴席でさらけ出したのが始まり
いつしか競い合うようになり、城下町全体で盛り上がる大きな催しとなった
忘れがちだが、この国は今まさに他国との戦争中
そもそも俺たちが召喚されたのは戦争に即戦力として参加させるため
今は戦時のため、無期限中止となっていたその祭りが
なぜか突然開催されることになり
今頃王都城下町は開催準備でおおわらわ
熱のこもったリリシアの説明に、ふと思った疑問をぶつけてみる。
「えーと、ひな壇に上がった屈強な男たちがポーズを見せつけてそれが採点される、で合っているのか」
こくこくうなずくリリシア、何だろうその表情は。
「あちらの世界で言うところのボディビルダーの大会、みたいな?」
首をかしげるマユリ、何だろうその表情は。
「どうだろうアラン、いや妻をそのような場に向かわせたくはないと言うのなら、遠慮なくそう言って欲しい」
「それについてはリリシアの好きなようにして欲しい、ただちょっと意外だったから、な」
熱のこもったひとみのリリシアが饒舌に語り出した
「実は、幼い頃に父に連れられて祭りを観に行ったことがあるのだ」
「あの日父と見た、参加者たちの鍛え抜かれた身体が目に焼き付いている」
「見せかけだけでは決して無い、日々の過酷な実戦と毎日の苛烈な鍛錬とによって磨き抜かれた戦士たちの饗宴」
「修練こそが騎士を輝かすという私の想いを知るふたりなら、きっと分かってくれると思う」
「お父さんとの大切な思い出のお祭り、ということなのね」
マユリが涙ぐんでいる。
「良いんじゃないかな。 存分に楽しんできて欲しい」
少しホッとしながら、了承した。
「ふたりとも感謝する」
「祭りは明日、城下町の噴水前大広場だ」
「みんなで観ることが出来て、本当に嬉しいぞ」
「「はい?」」
顔を見合わせる、俺と、マユリ。




