04 シジミ
ワゴンテーブルにお茶の準備を済ませて、和気あいあいと居間に入って来たのは四人。
ニエルとメリルさん。
チームアランを支えてくれているメイドたち。
マクラちゃんと、もうひとりいるけどあのメイドは誰だ?
そういえば、さっきモノカさんがチームモノカの新メンバーとか言っていたような。
「ご紹介しますね、チームモノカの新たなる旅の仲間、試作型武装魔車にしてメイドのシジミです」
「シジミ、です」
「ふつつか者の可能性を秘めたニューフェイスではありますが以降よろしくお見知りおきを、です」
モノカさんと同い年くらいというか背丈も体型も瓜二つの、メイド姿も愛らしい少女がぺこりとお辞儀した。
モノカさんが同じ衣装を着てくれればその愛らしさが二倍だなぁ、などと考える前に気になるセリフがあった。
「今、試作型武装魔車にしてメイドって言いませんでしたか」
「まさにそれこそが今回の突然のご訪問のキモだったのですが、現在の居間の空気をアレするためにも、まずはお茶でも」
気を使ってくれたモノカさんに、まことに申し訳ないと、ただただ頭を下げるしかない、俺。
お茶を楽しむ一同。
我が家では、メイドも一緒に同じ卓を囲んでお茶を楽しんでいる。
初めて見た時はニエルのその態度に内心で首をひねったものだったが、
気づかい無用のそれが、依頼や鍛錬で疲れた身体と心を癒すのにいつしか必須となっていって、
のちに加わったメリルさんにも同じように振る舞ってくださいとお願いすることになる。
「シジミさんとモノカさんたちの出会いがどんなだったか、知りたいですっ」
立ち直ってくれて嬉しいよ、マユリ。
「マスターモノカの『シブマ1号、シジミモードッ』と言う猛々しい雄叫びと共にケムリの中から出現したのが私たちの輝かしきファーストコンタクト、です」
マユリは、困惑している。
「不躾ですまぬが、良ければ自己紹介をお聞かせ願えればありがたい」
立ち直ってくれて嬉しいよ、リリシア。
「アリシエラママの手によってロイ様のお屋敷の地下深くの秘密工房にて生みだされました、です」
「ここにいらっしゃる皆々様と共に過ごしたロイ様宅からアラン様宅までの初めての長旅は私の小さなメイドハートの大切な思い出となったのがとてもとても嬉しいの、です」
リリシアも、困惑している。
「お茶のご用意をするスムーズで洗練された動きには、目を見張るものがありましたよねぇ、メリルさん」
「お若いのにお作法も知識も完璧で、私もうかうかしていられません」
我が家の家事を取り仕切るとびきり優秀なふたりのメイドのお墨付きですか。
特にメリルさんが手放しで褒めるのは、非常に珍しいのだ。
あと、メリルさんもとても若々しいですよ。
「メイドマスターセシエリア様からは動作データのみならず何よりも大切なのはご奉仕した方々に喜んでいただく事だというメイドの矜持を叩き込まれて参った次第なのであります、です」
「ご期待のハードルを軽々飛び越えられるようにより一層のアップデートに励む所存にございます、です」
ニエルとメリルさんはとても嬉しそうですね。
「なんだかアリシエラお姉さんとセシエリアお姉さんがそばにいるみたいでうれしいなっ」
楽しそうで何よりです、マクラちゃん。
「ロイ様のご家族全員の魂を受け継ぐよう製作されたこのシジミですが誠に遺憾ながらリノア様のふくよかさだけは持ち合わせておりません、です」
「足りないモノを補えるよう精一杯ご奉仕させていただく所存との決意表明をご挨拶に変えさせていただきます、です」
マクラちゃんの拍手は、やがて一同全員のものとなった。
なぜか、モノカさんの拍手はうつむいてぷるぷる震えながらだったが。
「場も落ち着いた事ですし、改めてシジミの勇姿のお披露目と参りましょうか」
立ち直ったみたいで良かったですね、モノカさん。




