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01 リリシア

『リヴァイス 08 特使騎士と旅の終わり』の続きで、


 チームアランのお話しです。


 お楽しみいただければ幸いです。



 俺の名前は佐州亜乱、この世界ではアランと呼ばれる冒険者だ。



 刺激と平穏、人生に必要なのはどちらかと聞かれたら、俺はバランスだと答えるだろう。


 異世界に召喚された俺は、戦い有りの刺激的な暮らしと良き家族に恵まれた平穏な日々の両方を手に入れることが出来た。


 望まぬ召喚をされた当初は運命に抗おうともしたが、今は全てを受け入れてむしろ召喚されたことに感謝さえしている。



 癖はあるが住みやすい屋敷での家族五人で過ごす穏やかな毎日、


 他のチームにも、頼りになる仲間たち、


 この町の人たちとの程よい距離感、


 冒険者ギルドで自分たちがやりたい依頼を選び、


 苦戦したりしなかったりして達成感を味わい、


 ふたりのメイドたちの趣向を凝らした料理を堪能し、


 ふたりの妻たちとの生活を堪能する。



 幸せ過ぎる毎日を享受していると、バチが当たるんじゃ無いだろうかと不安に思うこともある。



 そんなある日、



「お願いがあるのだが、アラン」


 普段はストイックで真面目一辺倒な妻、リリシアのおねだりは結構珍しい。



「姫様の仰せのままに」 ひざまずいて深々と礼。


 反応が無いので、見上げると、



「……」



 この表情は何だろう?


 喜怒哀楽でも困惑でも無さそうだ。


 いかに妻とはいえ全てを理解するにはまだ日が浅いのだろうか、


 少し調子に乗ってしまった自分を戒めるように勢いよく立ち上がった。



「すまん、ふざけすぎたようだ」


「違うぞアラン」


 慌てたように、饒舌に喋り出したリリシア。


「私は騎士だ。 その有り様に誇りを持っている」

「持ってはいるが突然アランが騎士の仕草をして怒っているわけでは無いのだ」

「もちろん姫様と言われて喜んでいるのでは無いぞ」

「アランが真面目に話を聞いてくれなかったことを哀しんでいるわけでも無い」

「惚れた男のひざまずく姿を楽しんでいるわけでは絶対に無い」

「常に冷静であろうとする私が困惑などするものか」



 自分の考えを見透かされたように全てを説明されたことに、唖然としながら考えた。


 残るはつまり、


「何か照れながらじゃなきゃ出来ないような、恥ずかしいお願いだとか」


「……」


 久々に見るリリシアが頬を染める姿は、相変わらずとても良いものである。


 普段妻たちからイジられる一方の俺が、この絶好の機会を逃すはずも無い。


「ひとつだけ、分かって欲しい」

「俺はリリシアのことは全てを投げ打ってでも守るべき大切な姫君だと思っている」

「その凛々しい姿だけじゃ無いぞ」

「気高さと誇りを常に失わない内面こそが姫君たる資質を輝かせているからだ」

「騎士の作法にはまだ疎い俺だが、ひざまずくことが真剣な気持ちの表れだという事だけは分かって欲しい」


 怒涛の追撃に真っ赤になっているリリシアを見据えて久々の勝利を確信した俺の背後に、伏兵が現れた。



「朝から、らぶらぶなんですねっ」



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