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異世界転生幻想放浪記  作者: 灼熱の弱火 
堕ちた心と堕ちぬ心
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第89話 嵐の前の騒がしさ

 


「ディードさん、ディードさん。起きてますか?。朝ごはん一緒にどうですか?。」


 朝、ドアをノックする音にディードが目覚める。朝方まで≪住処(バックヤード)≫での激しい魔力の消費で目覚めが悪いディード。未だに頭がすっきりしない様子でドアを開ける。


「おはよ~。今準備するから待ってて。」

「あ・・・ごめんなさいまだ寝ていたんですね。顔色が少し良くなさそうですけど大丈夫ですか?。」


 寝ぼけたディードの顔を少し心配そうに見るレミィ。


「大丈夫だよ、アイリスが少しはしゃいじゃってね。少し寝不足だけど問題ないよ。」

「そうですか、あんまり無理はしないでくださいねディードさん。」

「ああ、ありがとう。」


 ディードはレミィの頭を優しくなでる。撫でられたレミィはディードの手が心地よいのか、彼女の耳と尻尾が嬉しそうに小刻みに動いている。

 ディードが手を止めるとレミィは自ら彼に抱き着く。


「レミィちゃん?。」

「えへへへ、抱き着いちゃいました。」


 照れ隠しをしながらディードの身体に顔を埋め、小さな幸せを感じているレミィ。

 彼女はそれだけでは満足せず、さらに大胆な行動に出る。



「ディードさん・・・・。」


 レミィは上を向き目を瞑る。それは言うまでもなく求めている仕草であった。


「レミィちゃん、分かってると思うけど、俺にはリリアと恋人がいるんだけど。」

「そのリリアさんから許可を頂いています。むしろしてこないとダメだと言われてます。」

「俺の恋人はどこへ向かっているんだろう。」


 ディードが少し遠い目をして外を見る。その様子を見ながらレミィはクスクスと笑っている。


「レミィちゃん・・・・本当にいいの?。」

「はい、ディードさんじゃなきゃダメなんです。私もディードさんの恋人になりたいんです。1番はリリアさん、2番は私でいいんです。それじゃダメですか?。」




ディードは行動で示す、レミィと唇を合わせ彼女を力強く抱きしめた。

「ん・・・・。」


 レミィの甘い声と共にディードは少し力を弱めるが、レミィは離れたくないとディードを逆に抱き着いた。


「こんな変な男だけどよろしくね。」

「こんな変なウサギですけど、よろしくお願いします。」


二人はそう言い合い、笑みを浮かべながら再び唇を合わせる。

やがて2人は唇と離すと、互いに優しい笑みを浮かべ準備を整えた後、朝食を取りに食堂へと向かって行った。



「おはよう・・・その様子だとちゃんと出来た様ね。」

 リリアは先にテーブルにつき2人を待っていた。そこの言葉を聞きレミィはディードの腕にしがみつき照れ隠しをしている。


「リリア、お前はそれでいいのか?。」

「私達をちゃんと構ってくれるならいいと思うわ。前にも言ったけど2人ぐらい構えるぐらいの器の大きい男を見せなさい。」

「器の大きい男ねぇ・・・・・こう?。」

「え!?・・・・ん。」


 ディードはリリアに不意打ちで彼女にキスをする。最初こそ驚いたものの、リリアもディードの行動を受け入れ目を閉じる。


「・・・ばか。恥ずかしいじゃない。」


 耳まで赤くしたリリアは、俯きながらそう話す。3人の甘い雰囲気の中少し遅めの朝食を取る。だが周りの雰囲気は彼等を取り残し、殺伐としたオーラが満ち溢れていた。






「今日は休みだから何も俺と一緒に行動しなくてもいいんだよ?。」

「そうなんだけど、特にする事も無いし工房行くなら一緒に行くわよ。」

「私も行きます。何かお手伝い出来る事があれば言ってください。」


 ディードは、狩って来た素材をジロエモンと相談するべく、工房へと足を運ぶ。


「お?ディード。おはようにゃ、昨日教えた酒場どうだったにゃ?。」

「ララさんおはよう。落ち着いて飲める酒場で良かったよ。」

「ほほう、いい事聞いたにゃ、今度ジロさんと一緒に行くにゃ。」

「ああ、そうしてくれ。」


 ララと簡単な挨拶を済ませ、ディードはジロエモンが居る工房の奥へと足を運ぶ。


「おおディードおはよう、今日はどうした?。」

「おはようジロエモンさん。魔武器を少し見て欲しくてね。」


 そう言うとディードはアイテムボックスから15階のボス双頭狼(オルトロス) から出た壊れた弓を取り出しジロエモンに見せた。


「これが魔武器か、ってこれは・・・?。」

「そそ、折れている弓なんだ。一応魔武器として使えるみたいなんだけど、ちょっと使い勝手が悪くてね。直す事出来る?。」


 アイリスとの訓練中、ディードも1度は折れた弓を使ってみたのだが、アイリス程巧く使いこなせなかった。折れ部分に魔力の注ぎ方がうまくいかないと、意図せずに変形してしまい、自分を傷つけかねない場合がある。

 直せないのであれば、素材として使い道があるかと思案している最中だ。



 ジロエモンは折れた弓を手に取りじっくり観察する。時折独り言を言っている様だったったが、やがて一息ついたのか首を横に振りディードに渡す。


「駄目だな、魔武器が何出来てるか検討もつかん。修理しようにも他の素材を使うにしろ、今の俺には到底無理な話だ。」

「そっか、すまない。」


 ジロエモンがすまなそうにディードに返す。弓を受け取ったディードも逆に無理難題を突き付けた様な気がして素直に謝っていた。


「まぁ魔武器の事はおいておこう。昨日渡した素材で何か出来るのかと後、追加の魔物も置いて行こうかなと思ってね。」

「一応挟み甲虫は武器と防具を作る予定だ。だがお主らの装備にするにはちと弱いかもしれんな。」


 ディードとジロエモンは素材を見ながら装備の話に盛り上がっている。

 女性陣の方はと言うと、色々な話で盛り上がっている様だった。


 日中の日差しが高くジリジリと太陽が照り付ける3の鐘が鳴る頃、ジロエモンの工房でもそろそろ昼食を取ろうかという話が出て来る頃。


「すみませーん。ここの工房にディードっちゅー人来てます~?。」

「あら?夢花さん。昨日はどうも。」

「おお、リリアはん。ディードの兄さん来てます!?。」


 声の主は夢花だ。どうやらディードを探しにこの工房へと来たらしい。

 リリアとレミィを見つけて何やら興奮気味だ。



「ええ、奥にいますよ。ディー!。」

「ん-?なにー?。」

「おおおおおお!ディードはーーーん。」


 夢花はディードを見つけると、一直線に走り抱き着く。


「え?何?どうしたの?夢花さん?。ってか酒の匂いが!?。」

「ディードはんやろ?おおきに、おおきに!ウチ嬉しいんや。もう嬉しくてたまらんのや!。」


 かなり興奮した様子の夢花、勢い余ってディードに顔にキスの嵐を送る。

 それを見たリリアとレミィは夢花を引き離そうとする。


「何してるんですか!昼間からディードさんから離れてくださいー!。」

「そうよ!離れなさいこの酔っ払い。ディー!一体何をしたの?。」

「俺が分かる訳ないだろ?。夢花さん一回離れてちゃんと説明してください。」


 3人で夢花を引き離す、未だ興奮覚めあがらない彼女は勢いも荒く語る。


「酒や!また味が分かる様になったんや!ウチの魔法がウチにも効くように戻ったんや!、ディードはんやろこれやったの?。朝な、なーんか気持ち悪くなって、2日酔いだと思って迎え酒にあの蜂蜜酒を飲んだんよ。したら流石に重かったのか、すぐ吐いてもうてな。したらなんか黒い塊が出てきたんよ、そしたらなんか身体が軽くなってスッキリしてな?兄さん聞いてる?そんでな、蜂蜜酒飲みながら、今日魔法の酒の仕込みでもしようとやってたんよ?、したらなーんか自分で作ったのにいい匂いがしてな、そうそうそん時作ったのはまたギムレットやったんよ?でな・・・。」


「夢花さん落ち着いて、話が逸れている。要は自分の魔法で酒の味がまたわかるようになったって事?。」


 ディードは要点だけを抑え夢花に問いかける。


「そうや、だから嬉しいねん!もうな、諦めていたんよウチ。またこれであっちの世界の酒が飲めるよ思うと嬉しくてしょーがないわ。今なら兄さんに抱かれてもいいわ、ウチ。」


 夢花は上機嫌でそう言うと、リリアとレミィの視線が鋭くなり、夢花を睨みつける。だが、当の本人はどこ吹く風、ディード以外に視界が入っていない。


「多分それ俺じゃない、きっとリリアが魔力譲渡を繰り返して夢酒を造らせたから魔力が1度変質して、魔力酔いが抜けていたんだと思う。」

「それでも、ディードはんがウチの店に来てくれたおかげでこうして治ったんや。おおきに!。」


 そう言うと夢花は再びディードに抱き着く、リリアとレミィはそれを引き離そう騒ぐ。それを見たララは大いに笑い、ジロエモンは呆れたような目で見ていた。

 するとそこへ一人の客が工房へ入ろうとしていた。


「邪魔するぞ。」

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