第85話 夢の花
ディード達3人はジロエモンの工房を出て再びギルドへと向かう。
中に入るとすぐにココルと目が合いディード達を手招きする。
「ディードさん、査定が終わってますこちらにどうぞ。」
3人はココルのいる受付に行き彼女は革袋を取り出しディード達に差し出す。
「査定の結果ですが、金貨4枚と銀貨26枚となりました。ご確認ください。」
「わぁ~こんなに・・・。」
「凄いわね・・・。」
「確かに。」
ディードはすぐに革袋をアイテムボックスに収納しその場を後にした。
3人は宿に戻り早めの食事を取り、そこでギルドでの報酬を分け合う事にした。
「取りあえず一人1枚ずつ金貨を分けて残りは取っておこうか。」
「ええ、それで問題ないと思うわ。資金は少し取っておいた方がいいものね。」
「こんな大金いいんですか?。」
「もちろん。それで欲しい物を買うといいよ。装備やポーションの類は資金の方から出すから気にしないで。」
「はい・・・それじゃ大事に使わせていただきますね。」
リリアは平然とポケットに金貨に突っ込み、レミィは大事そうに手持ちの袋に詰める。ディードはそのままアイテムボックスに収納し本日はこれで解散となった。
夜も暮れ街に明かりが灯り酒場や娼館が活気づく頃、ディードは一人花屋街のすぐ近くまで来ていた。
(うーん確かこの辺のはずなんだけど?)
ディードは以前、ララがリリアとレミィに持たせた酒に興味を持ちララにその場所を聞いていた。しかしディードはリリアとレミィの酒癖の悪さから2人を連れてくるを躊躇い一人でその場所を探していた。
背後に忍び寄る人影に気づかずに。
「やっぱりおかしいですね。こんな所に一人で来るなんて。」
「でしょ?アイツ、夕食の後なんか私達とすぐ離れたがっていたし怪しいとおもってたのよ。」
遠くでディードを監視しているリリアとレミィ。
彼女等は建物の影にコソコソと隠れながらもディードを見失わない様に監視している。
ディードが辺りを探していると、奥の方から一人の女性が歩いてくる。見た目からして娼婦だ。ディードを初心な客だと思い今夜の相手になろうとしているのだろうか、話し込んでいるのだがレミィが聞き耳を立て話を拾うとしているのだが、周囲の声が騒がしく聞き取れない。
「何よあいつ、あんなにデレデレとした顔しちゃって・・・・。」
「い、痛い痛い。リリアさん、だからって私の耳を握らないでください。痛いし話し声聞えません。」
ディードが娼婦と話をしている様子をみたリリアは、レミィの片方の耳を無意識で握り絞めていた。
やがてディードはその娼婦とは別れ一人歩いてゆく、それを尾行しながらついて行った場所は、酒瓶とカクテルグラスの絵が看板が描いてある酒場だった。
「酒場?でもそれだけなら私達も一緒に誘ってくれても良いのに・・・?。」
「ですよねぇ。・・・あ、もしかしてそこにお目当ての娘がいてそこで買うとか?。」
「ぐぬぬぬぬ・・・。浮気じゃないのアイツ、証拠掴んだらとっちめてやるんだから。」
ディードが店の扉を開け中に入る、店の中は、少し小洒落た雰囲気を持つ小さな酒場、カウンターの席は6席程、テーブル席は4人が座れる席だ。
リリアとレミィは店の外からディードを見る為に小さな窓に顔を覗かせていた。
「いらっしゃい。あら、若い兄さんだね。ここは静かに飲む酒場だけど大丈夫かい?。」
「ああ、大丈夫。そこのカウンターでいいかな?。」
「ええで、今日はまだ客も少ないし好きな所に座ったって。」
ディードは店の女主人に促されカウンターの席へと座る。
「兄さん今日は何にするん?。」
「そうだね、ユメカさんのオススメでお願いしようかな。」
「おや?兄さんどっかであった事あるっけ?。」
ユメカは自分の名前を言い当てられたのに驚きディードの顔をマジマジと見る。
彼女はディードをどこかで見て話した記憶が無いか思い出そうとしたが記憶に無かった。
「いいや、初対面だよ。俺の知り合いがさ、おすそ分けで酒を持って来てくれたんだ。その酒を気に入ってね今日はここに来たんだ。」
「ん-、最近酒を渡した所っていうと・・・・あ、あの工房の関係者かな?。」
「そうそう、でねまた飲みたいと思ってここに来たんだよ。」
「おー嬉しいなぁ、若い兄ちゃんがウチの酒を気に入ってくれるのは素直に嬉しいわ。これからも御贔屓になぁ。ほなら兄さんが飲んだ酒の色覚えとる?同じのを1杯サービスしちゃるわ。」
ユメカは上機嫌でディードに飲んだ酒の色を聞いている。その様子を外から見ている2人の人物。店の窓に張り付いている姿が周囲の視線をあつめているが本人達はそれにまだ気づいていない。
「それならオレンジ色のスクリュードライバーだったかな?それを貰おうか。」
「そうかそうか・・・それ気に入ったん?なら待っとき、気合入れて作るから。」
「いいね、あ、・・そういや木札にも『夢花 作』って書いてあるぐらいだから自信作なのかい?。」
ディードは木札に書いてあった日本語を思い出し、ふと言葉にする。
その言葉にユメカはピタっと動きが止まり、ディードに問いかける。
「ちょい待ち、兄さんあれ読めるの?。」
「え?だって日本語で書いてあったでしょ?。」
「日本語!兄さん日本人なんか!。」
ディードは笑顔でその問いかけに答える。
「元、日本人だ。」
「元?って事は1度死んでこっちの世界に来たって事かいな?。」
「多分それで合ってると思う。初めまして・・・でいいかな?福々山高樹の記憶を失わずに転生した、元日本人のディードだ。会えて嬉しいよ。」
その言葉にユメカは感激し、ディードに飛びついた。
「おおおおおお!ウチ以外にもこっちの世界に来てるおったんか!感激やわー!。」
「ちょ!倒れる倒れる。」
「あはははは、嬉しいんや、ウチ、ウチ。やっと日本の事知ってる人に会えて嬉しいんや。」
「そうか、俺も嬉しいよ。」
ディードは飛びつきついて来たユメカを支える為、反射的に手を肩に回そうとしたのだが・・・そこでドアが勢い良く音を立てながら開く。
「ディー!何してるの!!!。」
そこには立っていた人物はリリアだ、後ろには頭と目だけの姿が見えるレミィもいる。
「り、リリア?なんでここに?。」
「夕食の後、怪しく感じて後を付けてきたのよ。何よ、私とレミィちゃんだけじゃ足りなって言うの?この浮気者~!!!。」
「ちょ!ちょっと待ってりりぐべら。」
ディードはリリアに説明しようと制止するように伝えようとしたが、既に時遅く彼女の渾身の右ストレートを頬に受けていた。
「なんや兄さん、随分こっちの世界で青春を謳歌してるやな。」
ディードが殴られる寸前に身を翻し難を逃れたユメカはそう呟いた。
殴られ床に落ちたディード、突っ込みたくても綺麗に決まった右ストレートが彼の意識を混濁させていた。
長かったので分けました、残りは後日。




