第9話 武器
9話です。良かったら見てやってください。
深夜≪住処≫にて、
ディードが眠りにつき、≪住処≫へと入る。 まだ曖昧な状況の中、何やら歌声が聞こえてくる。
タン タタタタタタタ タン タタタタタタタ タタン タタン タタン タタン
タタタタン♪ 「「上手に「まてやーー!!!」
2人仲良く歌いながら、火をおこし大猪の後ろ脚を焼いている。ディードは最後まで歌わせずに叫ぶ。
「なんで、≪住処≫で焼いてるのさ! 火事に・・・にはならないのか、けどその足アレだよね?今日狩った大猪の足だよね?なに食べようとしてるのさ。前もアイテムボックスに入れた食料、少しづつ食べてたよね? 貴方達、食事要らないんじゃないの?それにその歌は、アレだよね?狩猟するゲームだよね?また記憶から見てたのかよ」
ディードは一人騒いでいるが、ファグとアイリスは特に悪びれた様子もなくお互いの顔を見てからディードに振り向き、一言。
「使用料」 その一言である。再び火を見つめる2人。 自由過ぎる親(神)なのである。
アイリスは、鼻歌に切り替えファグは尻尾を振る。そして、うなだれるディード。
ディードにはある制約がある。 それを超えてしまうと【使用料】とい名目で2人から魔力、
それに見合ったアイテムなどが徴収&消費されてしまう。
まずはアイテムボックス。現在ディードがアイテムボックスに入れられる空間の最大は、大猪で言うと、
1匹分なのである。それを超える容量を入れてしまうと、魔力を消費し続ける+アイテムを消費されてしまう。 なので今回、オーク3匹大猪1匹過剰分を入れた結果、魔力を消費し続け、食料を一部消費されてしまったのだ。 今回に限らずたまに食材が少しづつ減るのは、基本使用料という名の徴収なのだ。
本来、アイテムボックスは修練に修練を重ねて出来る魔法。しかも、完璧ではなく、入れたアイテムの時間が経過し、腐敗や劣化などがある。 しかしディードのアイテムボックスは完全に時間を止めることが出来るのだが、実はアイリスのアイテムボックスの一部を貸し出しているという。裏技なのである。
アイテムボックスの能力を授けるという、アイリスの言葉には嘘はない。
制約その2 女神の槌 これも制約付きのレアアイテムなのである。魔力を消費し使い続ける間は失敗をしないで製作できるチートアイテム。
ただし、一部の装備品には効果が無い+その装備が出来ないのである。無理に装備をしても扱えないのである。 そしてディードは弓が使えないという制約があるのだ。
ちなみに母ファルナは、弓の名手 精霊の弓というチート武器を持っている。性能は割愛する。
その制約の為に、アルフからは弓なしとバカにされる事があるが、接近戦には他のエルフより強い、そして【木精の鞭】を使いこなし弓が無くても中距離を保ち戦え、魔法で遠距離も行えるという万能魔戦士になりつつある。【木精の鞭】の製作は女神の槌で造られている。
能力はチートだが制約を課せられる仕様となっている。
「今回はお前があの子に格好いい所を見せようとしたからじゃないか?で必要以上に入れたと。」
「んな訳あるかい!どーせ見てたろ?今回は急ぐ必要があったんだよ。」
「往復しても良かったけどな。」 「ぐぅぅ・・・」
「だが、まぁ喜べ、ディード。お主LVがあがったぞ。」 「は?」
LVが上がった?何を言ってるんだこの2人は?そんな事今まで聞いたことがないぞ?
「それはどうゆう意味だ?」 ディードが恐る恐る2人に聞いてみる。
「いや、今決めた。」
「てんめぇぇぇ!」 ディードは怒りを2人に向けるが、
「冗談よ。アイテムボックの許容量をもう少し増やしても大丈夫になったの。」
完全に弄ばれているディード。アイリスがファグを制止こう語る。
「元々は貴方の成長に合わせて少しづつ広げていくはずだったんだけど。アンタ結構無理矢理入れるから,
そっち側に少し余裕が出来たの。大猪の足はそのお代分ね。」反論が出来ないディード。
ディードは便利故に、薬草だろうと鉱石だろうと手ぶらになるので何でもポイポイ入れる事が多かった。
大きな獲物を狩ったら、先程のように入れる。前世の慣れだからだろうか、慣れは恐ろしい。
人間に限らず楽を覚えるとドンドン堕落していくのは、世の常なんだろうか。
「ぐ・・・具体的にはどの位入れられるようになったんだ?」
「んーもう1匹は入れても大丈夫よ。」 「そんなにか、それはありがたいな。色々幅が広がる。」
「まぁ私が言うのもなんだけど、程々にね。急激な拡張はしたくないし」
「わかった。善処するよ。多分明日は槌の方も使うと思うし消費量も抑える事にするよ。」
「あーそっちもLVアップさせようか?」
「そんな簡単にか!ってか今までなんでやってくれないんだよ!」
「貴方が成人するまで制御してたのよ。前に無茶してくれたからね。」
「ぐぅぅぅ・・・・その節はスミマセンデシタ。」
正論を言われるディード、この男も色々無理な事をしているのだった。
「それで、LVアップするとどーなるんだ?槌の方は?」
「消費する魔力が少し減るわよ。今回はそれだけ。」 割とお得に感じたディード。
そしていつの間にか背後に回っている、ファグが顔を近づけてこう語る
「LVアップの条件は満たしています。 LVアップしますか? YES◁ NO」
「なんでゲーム風に持っていくんだよ。ファグ、ってか最近何を見てるんだよ。俗まみれだぞ!」
「ドラ〇エとモン〇ン お前がクリアーしたのを見てた。後、テレビではコントのアレだ。」
「自由過ぎるぞ!この≪幻獣神≫ ・・・わかったLVするよ。もう面倒だ。好きにしてくれ。」
自由過ぎる2人に付き合い切れず任せてしまったディード。
喜び、はしゃぐ2人はもう一つ、大きな火をおこし後ろ足が無い大猪を焼き始め、クルクル回して焼き始めた。 ディードは頭が痛くなる光景を見ていたのだが、この2人とも付き合いが長い、最初はお互い硬かった。白い世界から2人が景色を記憶の中から取り出しアレコレやってきたのだ。
この2人がはしゃぐ光景もなんだか悪くないと思い、≪住処≫から出るのだった。
≪住処≫でディードが帰って数時間後
「そろそろ時が来たんだな、あの子が来てしまった。」 パチン
「そうね、・・・・あの2人はどんな未来を歩んでいくのかしら。」 パチン
「いずれにせよ、2人を見守る運命ではある。私達に出来る事は決して多くはない。」 パチン
「ええ、出来る限りの事は助けてあげましょう。私達の子を・・・」 パチン
「ああ・・・」 パチン 「・・・ファグ・・・王手」 パチン
「・・・・・今回も勝てなかった。」 「アンタ・・・尻尾振りすぎなのよ。」
翌朝、ディードとリリアは、村の東にある洞穴に入っていく。ドワーフ族が住む、ドルガの家に行く為だ。奥へと進むと明かりがひと際目立つ場所を通る。そこは足元以外、壁が光っており輝く通路になっている。
「綺麗ねここ。この壁は光石を敷き詰めたの?」 「いや・・・その・・色々とな・・」
首をかしげ頭に?が付く彼女にディードは、はぐらかし奥へと進む。
やがて、光る壁の切れ目にドルガの家のドアがあった。 ディードはドアを叩き中に入る。
「師匠いる~?もう作業場に行っちゃった?」 「いるぞ。少し待ってろ。もうすぐ準備が終わる。」
ドルガが道具と設計図を集め準備している最中であった。やがて準備が整い家を出る。
「ディー、今回は光石が必要になる。少し貰っていくぞ。」
「別に俺に許可はいらないって、いつも言ってるのに・・・・。」
「この光石ってディードの物なの?」 リリアが不思議そうに聞く。
「なんだ話してなかったのか。」 「そりゃ~ね。アレがバレるとまずいしね。」
「それもそうか。」 「むぅ、なんだか2人で秘密の話してる~。」
「ハハハ、そんな訳じゃないんだけどね~。ちょっと待ってて。」
ディードはアイテムボックスから、女神の槌を取り出し、壁を数回叩いた。
壁からは光石が大小数個剥がれ落ち、それを拾い上げる。
「こんくらいかな?師匠。」 「そんなに要らないな。一番大きいの1個あれば足りるぞ。」
「それなら・・・」
ディードは拾い上げた2番目に大きい光石を、リリアの手を取りの掌に置く。
「これは口止め料で。」 「綺麗ね、この石・・・」 リリアが光石を見てそう呟く。
彼女の顔からは少し赤みがさしていた。 これでなんとか誤魔化せたようだ。 と思うディード。
ジト目でみるドルガの微妙な雰囲気が流れるのであった。
洞窟の出入り口付近に、大きな扉が付いている。彼等の作業場である。
扉を中に入ると、火が落とされた炉、直ぐ脇に大と小の金床 木の桶があった。
リリアは鍛冶場を始めてみたので色々な物が新鮮に見えた。
ドルガはディードに折れた剣を渡す。刃先の方は金床に置かれ、数種類の薬品が置かれていった。
「ディー、その折れた剣に少しづつ魔力を込めてみろ、刃に光が灯ったら止めとけ。」
ディードはドルガに言われるまま魔力を込め始める。 剣は魔力を吸い上げ徐々に手元から薄い光を帯び始める。少しづつ少しづつ魔力を込める。その作業は時間がかかるようだ。
「さて、嬢ちゃん、今日来てもらったのはこの剣を嬢ちゃん専用にすることと、もう一つファルナの願いを叶える為だ。協力してくれるかな?」
「ファルナさんの願いですが?、私に出来る事ならやらせていただきます。」
リリアはファルナの願いと聞き、躊躇なく答える。
「うむ、まずは専用武器の方だな。ディーの奴が魔力を込めている、込め切ったら嬢ちゃんの血を数滴たらす。その為に針があるから合図したら血を垂らしてくれ。」
ドルガはS字の様な形の先端が尖っている針をリリアに渡す。
「わかりました。それでファルナさんの願いというのは?」
「まずは剣からだ、焦らないでいいぞ。剣ももうすぐ準備が出来る。」
そう言うとディードの方に視線を向けると、ディードは剣に魔力を込め刃全体に薄い青白い光が灯っていた。
ディードは剣に魔力を込め終わり。剣を炉の上に置いた。
「それじゃ始めるとするか。この剣を作りなおすぞ。」 「「おー!」」
ディードは炉に手をかざし、【火球】を作りだす。 剣は炎に包まれ始め、やがて周囲に高熱を発した。
どれ程の時間が過ぎたのだろうか、剣を出しては槌で打ち、また炉に入れる作業を繰り返していた。
やがて剣は元より小さく、ショートソードに形を整えられていた。
ドルガが薬品をかけ冷やす工程に入る。 ディードは一息つくために壁に寄りかかった。
「お疲れ様。大丈夫?」 リリアがのぞき込む、
「ああ、楽しかった。」ディードは満足そうな顔をしていた。
「嬢ちゃん、準備はいいか? ほれ、ここに血を入れてくれ。」 「はい、今行きます」
リリアはドルガに促され、剣の中心に血を流す。血を吸い取った剣はドルガが薬品をかけ
剣の脇に刻印を入れ始めた。
それから少し時間がたち、1本のショートソードが出来上がった。
「明日鞘に入れて渡す。取りあえず完成だ。それとディー、まだ炉が落ち切ってないうちに、刃先を炉に入れろそして溶かしたら金床に置くんだ。」 「わかった。何を作るの?あんまり魔力も残ってないけど?」 「ファルナの依頼品だ。」
ディードは残りの刃先を炉に入れ再び【火球】を唱える。先程の要領で魔銀を溶かす。
魔銀 それはミスリル鉱石から取れるミスリルの下位素材。魔導伝達は優れているが、硬度がなく加工しやい鉄より硬く、鋼よりは硬くない素材だ、主に装飾品に使われることが多い。
溶けた魔銀を金床に置き、ディードはドルガに尋ねる。
「師匠、出来たよ。」 「おう」 ドルガは刃先に置いた薬品をかけ、取り出した結晶を置いた。
刃先だった物は、結晶を置かれた瞬間その結晶を包み込んだ。 やがて、淡い光がたち数種類の薬品をかけるドルガ。そして刻印を施し、1つのペンダントになった。
「嬢ちゃん、これに血を垂らしてほしい。」
「それだと私の物になってしまうのでは?剣だけじゃなくこれも頂いてしまうのはちょっと・・・」
「それがファルナの願いだからだ、これは、お主の素性を隠すアイテムとこの村の通行証代わりになる道具だそうだ。受け取っておけ。」
「え?なにそれ通行札じゃなくても通れるアイテムあるの?」
「らしいな、昨日手紙を渡されてはじめて知ったわ。」
促されるままに血を入れるリリア、血が入った瞬間、ペンダントは光輝いた。
それは、暗い作業場を明るく照らし、光の蝶が数匹、舞っていた。
1つの剣とペンダントは、リリアの一生の宝物になる事は、まだこの時誰も知らなかった。
最後まで見てくださってありがとうございます。