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異世界転生幻想放浪記  作者: 灼熱の弱火 
堕ちた心と堕ちぬ心
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第84話 マスター

 

「ギルドマスター。」

 そう兵士に呼ばれた男はディート達に近づく。

 容姿は中性的で瞳は緑、髪型は後ろに流し、少しゆったりとした服を着たエルフだった。


「やぁ、君達があの虹の翼の3人だね。まずは踏破おめでとうと言っておこうか。私の名前はイーグ。ここグラドゥの冒険者ギルドのマスターをしているよ。」


 イーグはそう気さくに3人に声をかける。


「ギルドマスターありがとうございます。偶々運が良くて助かりました。」

「謙遜しなくていいよ、3人で突破できるなんてパーティーなんて早々いないからね。これからも頑張って。それとあの件(罠魔物)はファリップから聞いている。解決に向けた策も取れるようになったし感謝するよ。」

「はい、ありがとうございます。」


 イーグは笑顔でディードに近づき握手を求めて来る。

 ディードは少し疑問に思ったが出された手を拒む理由は無くそのまま握手する。


 笑顔だったイーグはわずかに硬い表情へと変わる、だがその表情を見抜いたものは居なかった。

(・・・見えないか・・・)


 イーグは心の中でそう呟き、ディードとの握手した手を放し背を向け歩き出す。


「それじゃ私はこれで・・・やっと貴族様のお相手から解き放たれて休みたいんだけど、仕事が溜まっていてね、先に戻るとするよ。」


 そういい残し、イーグはギルドの方向へと歩き出していった。


「なんか不思議な人だったねディー。」

「・・・ああ。」


 握手された手を少しみつめていたディード、だがリリアとレミィに促されギルドへと向かう。

 

ギルドに着いた3人は受付に居たココルに踏破証明書を差し出すと突然大声で叫んだ。



「え?ええええ!ディードさん達15階突破したんですか!?。」

 その声に周囲がどよめき、小さな小言が聞こえてくる。

「まじかよ、あの3人がか?。」

「俺達もまだなのに嘘だろ?」

「きっと高ランクのパーティー達の後について行ってすり抜けただけだろ?」


 聞えて来る声にうんざりしながら、リリアは呆れた声でココルに問いかける


「なんでそんな大声で言うのかな?・・・・。」

「あ・・・す、すみませんつい興奮しちゃって・・・。」

「「あ・・あははは・・。」」


 ココルは申し訳なさそうに委縮し誤り倒す、その姿にディードとレミィは苦笑いするしかなかった。


「それでディードさん達はランクの更新が出来ますがどうなさいますか?。」

「Cランクまではギルド判断で出来るんだっけ?。」

「はい、今回は15階踏破なので自動的にCランクにまで引きあげられることが可能ですが、手続きいたしましょうか?。」

「いや今日はこのままでいいや、魔物の素材とファリップさんが居たら鑑定してもらいたい物があるんだけど・・・・。」


 ディードの言葉に周囲が再び騒めくが気にせずに話をすすめる。


「申し訳ないのですが現在ファリップさんは多忙の為にお取次ぎ出来ない状態なのです。鑑定も今は断る様に言われていますので。」

「ああ、そうなんだ。それなら仕方が無い今度にしておくよ。それと少し魔物の素材を売りたいんだけどいいかな?。」

「はい、それなら大丈夫です。どうぞ倉庫の方へ案内します。」


 ディード達はギルド倉庫に案内され、アイテムボックスから様々な魔物を置き始めた。

 女王蟻、挟み甲虫、大蝙蝠、草原狼、草原大蛇などなどを次々に取り出しギルド職員を唖然とさせていた。その光景にココルは顔が引きつり、ポツりと小言をこぼす。


「今日・・・・残業よね・・・。」



 査定が大分かかるとココルに言われディート達は1度ジロエモンの店を訪れる事にした。

「よう!お前さん方、随分と早い戻りだな。なんぞいい素材でも手に入ったか?。」

「どうだろう?一応挟み甲虫のとかの素材あるけど見て見るかい?。」

「おう、あんまり出すなよ?この季節じゃ腐るぞ?。」

「ああ、2~3個だけ出すしておくよ。」


 ディードはアイテムボックスから挟み甲虫を取り出しその場に置いた。

 ジロエモンはその素材をじっと見つめ何に使うか考えている様だ。


「ふーむ、これはまだ使いずらい素材だな。中身だけ取り除いて何に使うか少し考えておく。」

「ああ、それは急がないから大丈夫。それと頼んでたアレ出来てる?。」

「おお、出来とるぞ。少し待ってな。」


 そう言い残しジロエモンは工房の奥へ入って行く。

 奥から何かを抱えて持って来たジロエモンはディードに問い質す。


「一応注文通り出来んだが・・・本当にこんな物、何に使うんだ?。」

「ああ、氷を削ろうと思ってね。」


 ジロエモンが奥から持って来た物、それはお手製の手動カキ氷機だ。


「氷をか?この夏場にそれは面白そうだな。」

「ああ、魔法で即席で氷を作ってもいいけど、魔法で作るものを食べ過ぎると魔力酔いしちゃうしね。」

「そうなのか、まぁ魔法で作った食べ物なんぞ早々食えるわけないがな。取りあえず桶に水を入れて持ってくれば良いか?。」

「ああ、頼む。」


 ジロエモンは水を汲みに桶を持って歩いて行く、その姿を目で追っていると外からレミィとララの喧噪な声が聞こえてくる。 10日間一緒に装備を製作してた時によく聞こえてきたやり取りだ。ララがレミィの事をからかいそれに反応するレミィ、時折応えずらい話をリリアが振られ顔を赤くし狼狽える。そんな姿を2人は楽しみ、さらに話を盛り上げる。そんな3人を見てディードは

(女3人寄れば姦しい、ってことわざは本当だなぁ・・・)


 と、思い様子を見ている。しばらくするとジロエモンが桶に水を入れ持って来た。

 ディードはそれを魔法で凍らせ適当なサイズに切り分ける。台に氷を置き、固定しハンドルを回し始めた。


「ほぅ・・・薄い氷か。」

「ああ、これにシロップか果物のソースをかけて食べるんだ。暑いこの時期にはぴったりでしょ?。」


 ディードは氷を削りながらアイテムボックスから適当な器を取り出し氷を乗せていく。そこにアイスキャンディーで使った果物のソースモドキをかけていく。

 2つ3つと出来上がる頃には外で騒いでいた3人もディード達の所に寄り興味深々とした表情で様子を伺っていた。


「ディードさんそれは?。」

「これはカキ氷っていってね。アイスキャンディーの少し変わり種かな。」

「それなら美味しいやつじゃない。早く食べましょう。ってか私その回すのやってみたい!。」

「あ、私もやってみたいです。」

「それなら私もやってみたいにゃ。大きいのをつくるにゃ。」


 ディードからカキ氷機を半ば奪う様にして3人で回し始める。

 子供みたくはしゃぐ姿にディードは笑みを浮かべながらその様子を見ていた。

 やがて全員分が出来上がりそれぞれ手に持ち食べ始める。


「ふわふわした氷と果物のソースがくちの中で解けていきます。」

「ああ美味しいわこれ。アイスキャンディーも捨てがたいけど私はこっちのほうが好みかも。」

「ああ、暑い日にはもってこいだな。」

「美味しいにゃ、美味しいにゃ!。」

「あーララさん。一気に喰うと大変な事になるよ?。」

「大丈夫にゃ。こんなのは食べた内に入らないにゃ。食っても胸に行くだけにゃ!。」

「いや、そうじゃないんだが。」


 勢いよくカキ氷を掻きこむララを止めようとしたのだが・・・


「ふぉぉぉぉぉぉ、あ、頭が痛いにゃああああ。」

『ぐおおおおお、あ、頭が割れるぅぅぅ。』

 と、2つの声が鳴り響いた。


 1つの声の主はララ、カキ氷をその場に置いて頭を抑えながらのたうちまっている。

 所謂アイスクリーム頭痛だ。 冷たい物を一気に体内に入れると、体内の電気信号が誤作動を起こし、キーンと頭痛をともなう症状だ。


 もう一つはファグの声だ。彼にも同じカキ氷をアイテムボックス経由で送ってはいたのだが、既に時遅くララと同じ症状になっていた。




「お前もかよ・・・・。」

 違う意味で頭を痛めるディードであった。

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