第81話 15階を目指して、その2
12階へと降りた3人に待っていた景色は11階よりも緑が濃く、青々としている草原だった。時折吹く風が心地よく、青々とした若い草の匂いがする。遠くには鬱蒼とした森が見える。
「ここが12階か、さっきよりは草が生繁っているね。」
「そうですね。ここは【草原狼】と【草原大蛇】の2種類がメインです。どっちとも気配が感じずらく、この草むらを利用して襲ってきますので気を付けてください。」
レミィは自分の半分膝上までに伸びている草を指差し2人に伝える。
「それにしても良かったです。もし狼系を討つなとか言われたら15階はどうしようかと思ってましたので。」
レミィが少し安心したような、それでいて複雑な心境を2人に話す。
「15階は女王蟻と同じ様に、ボスがいるんだっけ?。」
「はい、【双頭狼】と呼ばれる2つの頭を持つ狼がいて、火と水の2つの魔法を使ってくるそうです。」
「相反する魔法を使ってるって結構面倒よね。」
「ですねぇ、あ、リリアさん止まって下さい。多分罠があります。」
レミィが手を出しリリアと止める、彼女は身を屈ませ草むらの先にある何かを警戒している。
「ディードさん、ここ周辺の草を魔法で切れますか?一応どんな罠か見ておきたいので。」
「いいよ、リリアの少し先の周辺の草を斬るね。」
ディードはレミィに指定された場所の周辺の草むらをウィンドカッターで斬り裂く。
そこから出てきたのは、大地から紫色の液体が滲み出る小さな水たまりの様な罠だ。
「恐らく毒の罠の一種だと思います。いつの間にか踏んで毒状態に陥れる嫌な罠ですね。」
「よく気付いたね、凄いよレミィちゃん。」
「ああ、凄いね罠を感知する事が出来るの?。」
「何となくですね。一応獣人なので匂いと音には普通の人より敏感な所がありますので。」
褒められ照れつつも先に進むレミィ、しばらくすると彼女は立ち止まり戦闘態勢にはいる。
「何かがこちらに来ます。ディードさん先程のように周囲の草を切って頂けますか?。」
「了解。」
ディードはレミィに促され、ウィンドカッターで周囲の草を斬り払う。
そこを足場に3人は、ガサガサを音を立てて寄って来る魔物の警戒していた。
「来ます!。」
レミィの言葉の後に草むらから飛び出してきたのは、身体が緑ががった牙の大きい狼【草原狼】だ。ディード達は襲い掛かってきた草原狼に正面から立ち向かう。ディードとリリアは飛び出してきた狼に剣を払い1撃で仕留め、レミィは兎の盾で1度止まらせてから双剣で確実に突き刺し事なきを得る。
さらに足元からは少しタイミングをずらして【草原大蛇】がディード達に襲い掛かる。大きさは2mは程の長さで、周囲に溶け込むように緑色の身体をくねらせ襲って来る。
本来ならば草原狼との波状攻撃で冒険者達を苦しめる状態であっただろうが、先に草原狼が撃破されてしまいあえなく返り討ちに遭う。
「連携で来られたら面倒だったね。」
「そうですね。はやり蟻の巣からはさrない数が増えて押し寄せて来るって感じが多いですね。油断しているとトラップで足止めされ、その隙に魔物が集まってくるって感じらしいです。」
「気を付けて進まないとね。」
ディード達はさらに進みながら次の階に進む。
13階へと辿り着き、降りた先に広がる光景は森の中であった。
「おお、森だ。結構木々が多いね。」
「ダンジョンって本当に凄いわね。」
「ここからは森の魔物達が出て来るので、気を付けましょう。話によると木々の間を飛び回る【森林猿】やトレントなどがいるそうです。中でも厄介なのが森林猿とトレントによる共闘だそうです。」
「共闘?」
レミィの説明にディード、リリアが首を傾げる。
「はい、森林猿はトレントの木を渡りながら風の魔法を使ってくるそうです。そしてこちらから攻撃する際にトレントが森林猿を護る様に身を返すそうです。基本高い位置にいる森林猿は弓や魔法の攻撃がメインとなりますが、数に限りがあり油断しているとすぐ矢が無くなったり、魔法が撃てなくなるとういう状況に陥りやすいそうです。」
レミィの説明を何度も頷き聞き入る2人。しかしレミィが次の説明に入る前に魔物達がやってきた。
「説明する時間もくれなさそうですね、来ます気を付けてください。」
周囲からドスドスと音を立ててこちらにやってくる。
トレントいくつもある木の根が足の代わりになり音を立てながら歩いてくる。その木の枝に乗っているのは数匹の森林猿だ。
木の葉の色に似せているのだろうか、遠くから見えれば青々とした木に見えてくる。
森林猿はトレントの枝からウィンドカッターを放ってくる。
ディード達はそれぞれ回避事なきを得るが、トレントと森林猿の集団は増えていく。
どこからともなく現れたトレント達が数組となりディード達を取り囲むように陣取っていた。
「13階に降りて早々厄介ね。」
「ああ、近づけばトレントによる攻撃、遠くからは森林猿の魔法攻撃ってとこかな。」
「ええ、その通りです。気を付けてください。先に私が引っ掻き回しますので後をお願いします。」
そう言い残しレミィは単身トレントに突っ込む。単騎で突っ込んできたレミィを恰好の餌食とばかりに森林猿たちはウィンドカッターで攻撃してくる。だがレミィの速さについて行けず当たる事は無かった。レミィはトレントの近くまで近づき、大地の牙を突き刺す。地面から突如現れる大地の牙にトレントは成す術なく突き刺さり動かなくなる。
それを見ていた森林猿たちはレミィを脅威とみなし集中的に狙ってくる。
「こっちもいるのを忘れないで欲しいわ。」
「同感だね。」
リリアはトレントに火球を、ディードはアイテムボックスから鞭を取り出し森林猿を狙う。火球を喰らったトレントは苦しみ暴れる、その動きについて行けず振り落とされた森林猿をディードが鞭で仕留めていた。
数が減りディード達は一気に攻め立てる。逃げる魔物もいたが追わずに襲って来る魔物達だけを始末し一息つく。
倒した魔物をアイテムボックスに収納し3人は14階を目指す。
「それにしてもここら辺の魔物はよく集団で襲って来るね。」
「ええ、話のよると15階までは数による集団戦闘が多いそうです。その先に行くと個体の強さが増してくるそうですよ。」
「最初は数で、進むとと数が減り、個体が強くなるか・・・面倒よね」
「でも個体が強くなる分、見返りも大きくなりますし、強くなるもしくは報酬を多くするにはさらに下へ行かないとダメですね。浅い階層だとスキルや魔法が落ちてきませんし。」
ダンジョンの中で強い個体を倒すと稀にスキルや魔武器などの高額な見返りがある。
それを手に入れば強力な武器となり、売れば一攫千金も夢ではない。
冒険者はそれを求めダンジョンに挑む。
ダンジョンはハイリスクハイリターンの場所だ。
その姿形を見えぬ貴重な物を求め、冒険者は奥に進み、ダンジョンは強い個体を生み出し冒険者達を待ち構える。
「どうしてダンジョンは冒険者を求めるんだろうな・・・・。」
ディードのポツリとこぼす一言にリリアが答える。
「それはね、ダンジョンが冒険者を餌として求めるからって節があるの。」
「そうなの?。」
「魔族の書物からの知識なんだけどね、ダンジョンは冒険者達の命と知識などを求める為に魔物を産み待ち構えるんだって。それで最初は弱い魔物で誘い込んで徐々に強くしていくって訳。そして強くなった冒険者達を取り込んで得た知識や技術をスキルや魔道具にしてまた誘い込むって書いてあったの。」
「随分と理に適っている節だな。それなら一応説明も付くかな。」
「でしょ?でしょ?伊達に王女じゃないのよ、書庫に行けばいくらでも暇つぶしという名の勉強が出来るしね。」
リリアはそう言って両手を腰にあて、どうだと言わんばかりに自虐を込めた自慢話をする。どうやら色々と吹っ切れたようにも思えた。
腰に手をあてていたリリアだったが、何かを思い出したよう声を出す。
「あ、それで今一つ思い出したんだけど、求める物はもう1つあるんじゃないかって節が他の書物にあったっけ。」
「冒険者の知識と命以外にまだ何かあるの?。」
「ん-それはね、ダンジョンは魔物を作り出したり、どこからか召喚してくることは出来るだんだけど、もしかしたらダンジョンって人間を作りたかったんじゃないかって節があるの?。」
「人間を?。」
「人間もしくは魔族、エルフや獣人でもいいわ、もしダンジョンがそれを作り出したとしたら、ダンジョンって一体何なのかしら・・・・って読んでいるのに問いかけて来る著書があってね、珍しいな~って興味が沸いたわいたのよ。」
そうリリアはしみじみと思い出し2人に語った。
(もし、ダンジョンが人間を生み出すことが出来る様になったら、ダンジョンって・・・地球そのものを模しているのかも知れない。・・・・まさかね。)
ディードはそんな漠然とした考えをしながら次の階へと進む。




