第79話 15階を目指して
朝ディード達はダンジョンに入る為、2の鐘が鳴る前に入口前で入場を待っていた。目的はダンジョンの11階へ、そして15階まで進む為だ。
「ギルドの話だと11階から景色が変わり、通称【平原】へとなるそうです。」
「へー。そこから魔物の種類が変わって来るの?。」
「そうらしいです。10階までが通称【蟻の巣】。そして15階にある転移の魔法陣を目指しましょう。そこに触れると1階へ戻される仕組みらしいです。」
「へー、良く出来てるね。取りあえずそこまでいけば今後は15階へ転移出来る仕組みなる訳だ。」
以前レミィはギルドから情報量を払って、11階からの魔物種類と聞いていたので彼等にレクチャーをしていた。 3人は十分に準備を整え、目指すは10階の女王蟻へと決めていた。
「まずは3人で女王蟻を撃破、11階に辿り着いたらそこで1泊してから15階を目指す。ここまではいい?。」
「ええ準備はいいわよ。この杖で雑魚は全部薙ぎ払ってやるんだから。」
「リリアさん、それだと素材が台無しになって売れなくなるので手加減はしてくださいね。」
「分かってるわよ。ちょっと丸焼きにするだけだから。」
「あははは、わかってないじゃないか、まぁとりあえず頑張ろう。」
ディードは拳を天に向け掛け声をかける。彼女達はそれに応じ、おー!と合わせてくれた。
ダンジョンに入ってから9階までは3人の脅威となるべきものは居なかった。低階層での魔武器のトラップも無いか確認しつつ進んでいた所、見つけたのは1つ。
ディードが刀で掬い上げ宙に浮かし、リリアが剣で叩き斬り一瞬で終わった。
そして彼等は9階層で1度休憩を取り女王蟻に向けて作戦を練っていた。
そして10階層のボス女王蟻と対峙する。
まずはリリアが先制で紅玉の杖で兵士蟻達を一瞬で焼き尽くす、ディードが脇からレミィは正面から突入する。女王蟻は正面から来たレミィに喰らいつこうとするが、彼女は兎の盾を使い女王蟻の頭部より高く飛ぶ。
ディードはその隙に女王蟻の側面の足を一気に斬り、側面の足を破壊し動きを止める。
そして足を斬られ片側に倒れ込んだ女王蟻は崩れながらもディードに噛みつこうとするがレミィが上空から降ってきて頭部を双剣で突き刺す。
藻掻き苦しむ女王蟻はレミィを振り払おうとしたのだが、ディードに腹部を切り落とされ、駆け付けたリリアに首を切り落とされ命尽き果てた。
「ふぅ、やったね。」
「ええ、いい連携だったわ。」
「はい、3人でも問題ないですね。」
女王蟻を撃破しハイタッチを交わす3人、素材をアイテムボックスへとしまい次なる階層へと歩み始めた。
そして彼等は11階へと辿り着いた。
3人は驚きのあまり、気の抜けた声しか上がらなかった。
10階から11階へと降りた際、そこに見えた景色は先程までの洞窟の中とは違い、広い平原が視界一杯に広がっていた。端には森があり、奥には山々まで見える。本当にここが11階とか疑ってしまう程景色は一変した。
「ここが11階か・・・。」
「話には聞いてましたけど本当に平原に出るんですね・・・・。」
「凄い・・・・ねぇ・・・。」
あっけに取られている3人だったのだが、遠い所から羽音が聞えて来くる。
その音は徐々に近づき、やがて姿を現す。
大きな挟みを持ち、茶色い外骨格、そして6枚の細長い羽を持つ昆虫だ。
「あれは【挟み甲虫】という甲虫です。羽と頭部以外は防具などの素材になるそうです。丁度3匹なので1匹づつ仕留めましょうか。」
その言葉を合図に3人は飛び出す。ディードとリリアは襲って来る大きな挟み顎を難なく回避し、甲虫の下へと潜り込むとそれぞれの武器で一刀両断する。
レミィは、喰らい付こうとする挟み顎を兎の盾で防ぎ、動きを止めさせる。その隙に6枚の羽根を切り刻み地上に落としてから頭を双剣で串刺し亡き者にした。
ディードは挟み甲虫をアイテムボックスにしまい平原の奥へと進みはじめる。
「ここは湖かな?。」
「そうですね、魔物も潜んでいるはずなので慎重に進みましょう。」
「おっきい湖だねぇ~。」
3人が向かった先は大きな湖、かなりの広さなのか周りには木々が生繁っており豊かな水源を示してる。すぐ脇の前のほとりには【大蛙】らしき魔物がいるが、色が青く別種の様だ。
「うっ・・・カエルが・・・。」
リリアは蛙を見つけた途端、嫌な顔をし数歩後ろに下がり始める。
「リリアさん蛙が嫌いでしたね。あれは【水蛙】っと言って水属性の魔法の水玉を撃ってきます。けれでもここまで来れる冒険者さん達ならそこまで苦にならないって言ってましたよ。」
「レミィちゃん、その【水蛙】のすぐ下に居るのはもしかしてスライム?。」
ディードは水蛙の脇にいる、薄い青色の半透明のぶよぶよの物体を指差した。
その物体はは上下に呼吸するかのように動き、よく見ると小さな核の様な物が見える。
「え~っと・・・あれはなんでしょうか?スライムじゃなさそうなんですよね?ギルドの人にはスライムって話は聞いてませんし・・・?」
2人がその物体を観察している最中に、奥の水蛙が3人の事に気が付き声を上げる。その声はまさしく蛙の鳴き声。1匹がゲコゲコと鳴くとそれに反応するように他の水蛙も鳴きはじめる。 まさしく蛙の合唱だった。
聞えてくる蛙の声にディード達は警戒していたが、その警戒を裏切るような形でディード達に襲い掛かってきた。
水蛙は、そのぶよぶよとした物体を長い舌で投げる者、水魔法と一緒に弾き出す者、口に咥えて近くまで近寄り吐き出す者と多種に渡る攻撃法だ。
不意を突かれた2人、レミィは兎の盾、ディードは回避したが、レミィが兎の盾で防いだのが災いしてディードにぶよぶよとした一部がかかってしまう。
その跳ねた残骸が衣服にかかるとすぐに猛烈な異臭を放つ。
「うわっ!なんだコレ臭い。」
「ご、ごめんなさい大丈夫ですか?。」
レミィが慌てて謝るも尚も水蛙達の攻撃が続く、レミィは次々と兎の盾を出して凌いでいたのだが、埒が明かないと踏んだのか徐々に後退し始める。すると防いで落ちた物体は、小さな核が動き回り徐々に大きくなる。大きさがサッカーボール位になると突然その核は口を開け襲い掛かって来る。
下からの不意の攻撃に何とか刀を喰い込ませ切り落とすディード。
その正体がわかった時、ディードは嫌な顔をする。
「げ、レミィちゃん。こいつ水蛙の卵だ。刺激を受けると卵が孵化して襲って来る。」
「1度離れましょう!この攻撃は一見地味ですが数で押し切られる可能性があります。リリアさんも・・・・・・り、りりあさん?。」
レミィは次々と来る攻撃を、兎の盾で防ぎ回避と忙しかった為後ろを見る余裕は無かった。振り返るといくつもの卵を被弾し、ぶよぶよを所々纏っているリリアの姿がそこにあった。
リリアは迫りくる攻撃に剣で斬り、避けたりしていたのだが、前の2人が避けはじめ突然死角からくる攻撃に彼女は避け切らず被弾してしまっていた。
リリアはわなわなと肩を震わせ、怒りなのか恐怖なのか判らない奇声をあげる。
「ぴぎゃあああああああああああああああ。」
奇声を上げたリリアは剣を振り回し、来る物来る物を次々と斬り払う。しかし斬れば斬る程彼女にどんどんとぶよぶよの物体が付着していく。
「落ち着けリリア!一旦ここを離れるぞ。」
「そ、そうですよ。後ろに下がって!」
「いや――!!。」
リリアは紅玉の杖に魔力を込め魔法を撃ちだす。
「蛙嫌い嫌い嫌い!【紅蓮の鳥】お願い!アイツ等を焼き払って!。」
放たれた紅蓮の鳥は湖に居た水蛙を容赦なく焼き始め轟音を立てる。
その音に反応したのか、周囲の木々が揺れ始め幾つもの木から何かが落ちる音が聞こえた。
「ぴっ!ぴいいいいいい!!!。」
落ちた物音に視線を向けたレミィが今度は甲高いの悲鳴をあげる。
彼女の視線の先には中型犬ぐらいの大きな芋虫がこちらににりじ寄ってきている。
その中に数匹全身が毛に覆われている種もいる。レミィはそれに生理的嫌悪を抱き悲鳴を上げている。
「いいいい、いもむし!ディードさん毛が一杯のいもむしがあああ。嫌だ気持ち悪い!。」
「レミィちゃんまで、兎に角平原まで走ろう!。」
「はぃいいいいい!。」
ディードはレミィと共に平原へと戻る。その先にリリアを回収し3人でその場を離れる。
辿り着いた先は先程の平原だ。しかし魔物達は尚、彼等に襲い掛かって来るべく追いかけてくる。新たな魔物まで引き連れて来ていた。木の魔物【トレント】だ。
先程リリアが放った紅蓮の鳥が引き金になったのか、数体ディード達に向って来ている。 一番早く追い付いたのは、芋虫だった。奴らは身体を丸め車輪のように転がりながら追い付いてきた。
そしてディード達に追い付き始め、数匹はそのまま丸くなったまま体当たりのように、もう数匹は黄色い糸を吐き出してくる。
「「いやぁああああああ。」」
生理的嫌悪に襲われた2人はパニックになりその場で震えている。
ディードは襲って来る芋虫を刀で斬り払う。真っ二つに切り離される芋虫から体液が飛び出しディードにかかる。
「うげ、こいつも臭い!。」
「もういやぁあああああ。」
「炎の楽園に住みし紅蓮の大鷹よ、我が力に応えて敵を薙ぎ払え!【紅蓮の大鷹】」
リリアは紅玉の杖に、魔力を込め炎の大鷹を生み出し杖を振るう。
炎の大鷹は大きく翼を広げ突き進む、大鷹の通った後には炎が産まれ魔物達を飲み込み焼き始める。炎の絨毯爆撃だ。
迫ってきていた魔物達は、燃え盛る大鷹に逃げる事すら叶わなく、炎の海に沈められた。
やがて湖まで大鷹は辿り着いたのだろうか、大きな水柱が立ち大きな音が聞えて来た。そして炎は止むと周囲には炭や綺麗に焼き焦げた魔物達の姿がそこにある。
「うええええ。匂いが取れないよぉ。」
「うぅぅぅ、気持ち悪いです。」
「確かにこれは厳しいね・・・・。」
3人は服や、装備についた匂いの元を振り払い、互いの困った顔を見合っていた。
すると3人は示し合わせたようにクスクスと笑い出し始める。
「お互い酷い有様だね、ふふふふ。」
「ええ、これは酷いですね。」
「そうだな、特にリリアが一番酷いんじゃないか?。」
「否定はしないわ、貴方達は急に避けるから私避け切られなかったし。」
「あははははごめんごめん、こっちも慌ててた。」
「ふふふふ、ですね。さすがにあれはビックリしました。」
「さて、この酷い有様をなんとかしないとね。水獄で洗う?。」
「それだけだと匂いが取れなさそうですね。出来れば服と体は別々に洗いたいのが本音ですね。」
「あ! それならいい方法があるわ。」
そうリリアは告げた後、リリアは少し先にある大きな岩を指差した。




