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異世界転生幻想放浪記  作者: 灼熱の弱火 
堕ちた心と堕ちぬ心
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第77話 報酬

「寝不足で来るとはいい度胸だなディードさんよぉ。俺は言ったよな?頑張りすぎるなよって?。ああん?」


「確かに寝不足だが、変な意味じゃないぞ?少し話合いをしてて朝を迎えただけだ。」



 若干チンピラのように脅し、鋭い眼光を付けてくるのはファリップだ。

 現在ディード達は、ギルドの内部にある部屋に通されている。メンバーは虹の翼と赤き爪のガロンそしてギルドの職員のファリップとココルだ。それぞれがテーブルについている。


 ディードは眠そうな目をしながら苦笑いをし、リリア、レミィも同じく寝不足のせいか苦笑いをしていた。


「一人身の俺に対する当てつけかこのヤロー。ココルよぉ残業につぐ残業でここまで酷使している俺に、アイツ等本当に酷いんだよぉ、慰めてくれよぉぅ。」

 ファリップはココルに同意を求めるが、ココルは心ここにあらずの状態だった。

 そしてココルが意外な一言をこぼす。


「ダンジョンで激しい戦闘の後に、夜2人を相手にするなんて・・・。」


「いやいや、違うからね?やましいというか、そっちの方はしてないからね?。」


「あの・・・ココルさん?。」

 ココルに同意を求めたはずのファリップだったが、物思いにふけていて言葉をこぼす。


「・・・ハッ!すみません。少しボーっとしてました。なんの話でしたっけ?。」


「・・・いえもういいデス。オシゴトシマショウカ。」

 少し茫然とした顔をしていたココルが、ファリップに声をかけられ我に戻る。

 そんな姿を見たファリップは諦めて仕事の話をし出す。


「ここに集まって貰った理由は言わなくても分かるな。先日のダンジョンにおける指定依頼の報酬についてだ。これは両名に金貨3枚支払う事が確定した。それとディード達虹の翼に対してだが、その低階層における新たな罠を発見、その回収及びその撃破に貢献した事によるギルドからの特別報酬を合わせて計23枚の金貨が支払われる事になった。依存が無ければここにサインしてくれ。」


 ファリップはそう言うと、2枚の羊皮紙を取り出しディードとガロンに差し出す。


「23枚って・・・・そんなに?」


 3人が喜んでいる傍ら、ガロンが顔を少し歪めながら不機嫌そうに問いかけてくる。

「・・・・おいファリップこれはなんだ?特別慰労金ってのは?。」

 ガロンは顔をしかめファリップに羊皮紙の文章の部分を指差す。


「ガロン。今回は非常に残念な結果になった。調()()()()()()()()()()()()()()()()()()()事に対するギルドからの慰労金だ、受け取ってくれ。」


「・・・・お前!。」

 ガロンは唸る様にファリップの名前を呼ぶ。だがファリップもガロンを見据え淡々と語る。


「まぁ腹芸をしてもしょうがないか。ガロン正直に言おう。今回この罠に対するギルドの対処は、突然変異の罠が出現したという事になった。数日前から低ランク冒険者が相次いで疾走、ギルドとしては単身調査役に買って出たギロンがその罠に嵌り帰らぬ人となった事にする予定だ。」


「もみ消すという事か?。」

「今回、事が事だ。魔族の・・・しかも王族が関わっているとい事が明るみに出ればどうなるかわかるだろう?。裏も取れない状況で明るみに出ると戦争に発展しかねない。今回は事実を曲げる必要があるとギルドは判断した。協力してくれガロンの事も悪い様にはしない。」


 魔族がかかわったとされる証拠は今の所ゾクマの証言のみ、実際に関わった証拠をこれから探すにも膨大な時間を要する事になる。

 当然相手は発覚した場合、魔族が関わっている証拠は残す事は無い様にしているだろう。かなり前から準備をしているようにも思えた。

 今から探そうにも既に証拠は闇に葬り去られているだろう。

 証拠もなく、魔族側に謝罪や弁明などを求める事は出来ない。逆に相手に有利に事を運ばれるか、最悪戦争を仕掛ける切っ掛けを与える事になり兼ねない。



 ガロンは目を瞑り深く考え込む、部屋全体に重い空気が流れる中ガロンは話す。


「わかった。それでいい。それでこの金はギロンの被害に遭った者達に行くようにすればいいんだな?。」


「理解が早くて助かる。今の所ギルドが把握しているのは、昨日の3人だけだ。あの者達はまだランクも低く、ギルドへの貢献も少ない。故郷に帰るだけの金は支払うつもりだが、彼等のその後の生活まではギルドはみれない。尤も金があり神殿で治療が出来るのであれば話は別だろうが・・・・。」


 昨日の3人とはチマ達の事だ。 

 チマ達は一命はとりとめたものの、冒険者としてやっていくことは難しい状況に置かれていた。一人は片腕、一人は目、一人は腹部の損壊を受けている。

 例えこのハンデを背負って冒険者に戻る事も出来なくは無いが非常に過酷な事だろう。ハンデを背負ってるからといって他の冒険者が、彼等を優遇する事はない。むしろ避けられる対象になってしまう。 

 足を引っ張るものなら、それこそ排除の対象になる。命が助かったとしても彼等には決していい未来が約束されている事は無いと言える。


「・・・わかった。その様に事を運ぶ。それで彼等はどこの宿にいる?」

「旅人の宿。ポーター達がよく使う宿に移動したらしい。今後の事を考えると少しでも金を節約したいのだろう。」

「あそこか・・・わかった。」

 ガロンはそれ以上言う来なく、羊皮紙に自分の名前を書きファリップに渡し目を瞑った。


「あそこの宿ですか・・・。」

 レミィ俯き小さく呟く。その宿はかつて彼女も利用していた宿だった。


 かつてレミィはその宿の隅で小さく先の見えない日々を過ごしていた。

 そんな自分を救い上げてくれたのがディードとリリアであり、2人には感謝している。

 だがチマ達は逆に暗く先の見えない日々に落ちようとしている。


「何とかしてあげたいな・・・。」


 小さくポツリと独り言をこぼしたレミィ。

 ディードはそんなレミィを見つめ、そっと彼女の手の上に自分の手を重ねた。

 その手は温かく優しく、ディードはそんな優しいレミィの考えを読み取ったかのように包み込んだ。


「後でお見舞いに行こう。良くなりますようにってね。」

「ディードさん・・・。はい!。」

「勿論私も行くわよ。」

 リリアも賛成しディードの膝の上に手を置く。それを感じたディードは反対の手で彼女と手を繋いだ。


 テーブルの下で仲睦まじい状況だったのだが、ココルは咳払いをしディード達に羊皮紙の署名を求めた。慌てたディードは署名を書き込みファリップに渡した。

「これで支払いは確定した。ココルこれを持って支払い金額を持って来てくれ。」

「はい、それでは少しお待ちくださいね。」


 ココルは軽く会釈をし部屋から出て行く。それと同時にファリップはディード達に鋭い視線を向ける。


「あのダンジョンでの出来事は結構重い物だと思ったが、朝になって見ればこの状況・・・どうやって持ち直したんだリリアちゃん。」


「話合いよ。内緒のね。」


 朝方の事を思い出しリリアは顔を少し赤らめファリップから視線を逸らす。だがそれが答えと言わんばかりの態度にファリップは大きくため息を漏らす。


話し愛(はなしあい)か・・はぁ~若いっていいねぇ。おじさんに君達が眩しくてしょうがないよ。・・・まぁ話はもう少し続くのだけどいいかな。」


 ファリップは自分の背後から荷物を取り出し、テーブルの上に1つの水晶を取り出した。

「これは《真実の目》という魔道具だ。ランクCに上がる時に使う物で、その人の種族や状態などを映し出す道具だ。これをリリアちゃんに使わせて貰いたい。ゾクマの言う事が本当ならば、君は魔族だ。あの話が本当だとすると、こちら側はすぐにでも動き出さなければならない。勿論この事は上部の人間にしか話さないと約束する。使わせてくれないか?。」


 ファリップは真剣な表情で、リリアに頼み込む。

 リリアは戸惑いどうするべきか悩んでいた。


「リリア大丈夫。誰に知られても何を言われても俺が守るから。」

「わたしでもですよ。」


 ディードがリリアの手を上からそっと重ね笑顔で伝える。反対側にいたレミィも続くようにリリアに声をかけている。その様子に安堵し、リリアはファリップへと視線を向ける。


「大丈夫です。」

「そうか、ありがとう。早速だがこの水晶の触れてくれ。」


 ファリップに促され、リリアは水晶に手を置く。すると水晶が少しだけ光を放ち文字が浮かび上がってきた。


 名前 リリア・フィーア・ゾルティア

 年齢20歳

 種族 ???魔族

 状態 魔法封印

 ランク D

 備考 ????????


 と表示された。


「やはりゾクマの話は本当で魔族であったか・・・。そうなると奴らの計画と各地の情報も色々と精査しないといけないな。」


「ねぇ結構見えない文字が多いけど、これ壊れているの?。」


 リリアは首を傾げファリップに問いかける。彼は手をあげ首を振り違うと身振り手振りをする。


「残念だが、俺が込めた魔力よりも上位の者を鑑定すると文字が見れないらしい。だから、リリアちゃんは俺より上の魔力を持つ魔族って事が逆に証明されるんだけどな。ちなみに俺が使うとこうなる。」


 名前 ファリップ

 年齢43歳

 種族 人間

 状態 普通

 ランク ギルド職員

 備考 鑑定スキル 


 と表示された。

「ってな風になるんだ。」

「へーすごい機能ね。」

「まぁギルドの道具だからな、なんなレミィちゃんとディードもやっておくか?。」


 覗き込むように見ていた2人にもファリップはついでにと声をかける。

 ディードは乗る気だったがレミィは若干引き気味だった。


「いえ、私はどうせ兎獣人以外何も出ませんし。どうせならディードさんどうぞ。」

「いや別にそれで何かを競う訳じゃないし試しにやってみれば?嫌なら勧めないけど。」

「う~ん。そうですね、それじゃお言葉に甘えてやってみますね。」


 レミィが水晶に手を置くと水晶は小さな光を放つ。


 名前 レミィ 

 年齢 16歳

 種族 戦兎(ウォーバニー)

 状態 良好

 ランク E

 備考 幻獣神ファグの加護


 と表示される。

「げ・・・幻獣神ファグの加護・・・・・。」

 ファリップは目を見開き驚く、その水晶を食い入るように見つめる。


「こんな加護は今まで見た事が無い・・・初めて見たぞ。」

「え・・・いや・・・あの・・・。」

 レミィ自身何が起こっているのかよく分かっておらず困惑している中、ディードはその水晶を覗き込み種族の方に目が行った。


「あれ?レミィちゃんって戦兎(ウォーバニー)って種族だったの?。」

「いえ、まさかそんな私はいたって普通の獣人の村で兎獣人(ラビットマン)ですし、両親からは何も聞いてません。」


 レミィは手を振りディードに否定する。リリアはディードを引き寄せ軽く耳打ちをする。

「ねぇ、ディーもしかしてあの時・・・?。」

「ああ、可能性あるな・・・後で聞いてみるか。」

 あの時とはディードがダンジョンコアを破壊した際に、レミィの近くに倒れた事だ。

 その際に何かあったのだろうと2人は予想していた。



 だがこの事は公言しないほうがいいと判断し、ディードは誤魔化すように軽く咳払いをし、ファリップに問いかける。


「ファリップさん、俺もそれやっていいですか?。」

「あ?ああ・・・いいぞ。そこに手を置いてくれ。」


 茫然とした表情だったが、ディードに問いかけられ我に返った。

 今度はディードが水晶に手をかざすと、先程までの2人の反応とは違い水晶が眩しく光り出す。


 名前 ディわん

 年齢674わぅー

 種族?????

 状態 っへっへっへっへっへ

 ワンク D

 備考 がるyがpjss28


 と、表示された。さらに水晶の内側には肉球のスタンプがあちらこちらに見受けられた。 

 これにはその場にいた全員が驚き目を丸くした。



 ディードは犯人に心当たりがあり、すかさず念話を送る。

『おい!ファグお前だろ?この悪戯。』

『さすがにやり過ぎた。反省はしている。少しだけ表示を誤魔化そうとしたのだが、うまく出来なくてなもう1度触ってみろ。』


 ディードは仕切り直し、もう一度水晶に触れる。


 名前 ディード 

 年齢 16歳 

 種族 ハーフエルフ?

 状態 良好

 備考 幻獣神ファグの加護 女神アイリスの加護 


「さっきのは何かの表示間違いだったのかな?あ、あははははは・・・。」

 ディードは苦笑いをしてその場を誤魔化そうとしたが、ファリップがさらに固まる。


「げ、幻獣神だけじゃなく、女神アイリスまで・・・・。なんだコレ・・・なんなんだこれ・・・?。」

 ファリップは驚きを隠せずに、一人呟いていた。




 微妙な雰囲気が流れる中、不意にドアがノックされる音がなりココルが入って来る。


「お待たせしました・・・?どうしたんですファリップさん。いつも以上に変な顔をして?。」

「・・・ココルちゃん、俺にもうちょっと優しい声をかけてくれたっていいじゃないか・・・。」

「ん~そうですね。お給料を上げて頂けるなら、嘘でも優しくしますよ。」

「嘘でもかい・・・厳しいねぇ・・・俺そんな権限ないのに・・。」


 ファリップがガックリと項垂れる中、ココルは革袋を2つテーブルの上に出しそれぞれに差し出した。報酬の入った革袋だ。


「先程のサインより確定した報酬ですので、よくご確認なさってください。」

 と、ココルは硬貨が多めの袋をガロンに、あまり音がしない方をディード達にそれぞれ渡す。 妙な感覚に捕らわれたディードはその場で恐る恐る革袋を開けてみると、中から出てきたのは金貨3枚のみだった。


「・・・・あれ?。」

「3枚・・・?。」


「お前等さっきのサイン見てなかったのか・・・。」

 ファリップはため息交じりで、再び背後にあった荷物から紅玉の杖を取り出しディード達の前に置いた。


「一応コレも報酬の一部だ。受け取れ、リリアちゃんは今これがあった方がいいだろう。」

「紅玉の杖を貰っていいの?。」

「ああ、代金はその分金貨20枚差し引いている。その書類にも書いてあったんだがな。ってかその杖、君の魔力が強すぎて俺の魔力を受け付けなくなったので、強制買取なんだけどな。」

「それでも嬉しいわ、ありがとう。」


 リリアは満面の笑みで紅玉の杖を受け取り、杖を抱きしめていた。その姿にレミィとディードは苦笑いをしつつも、彼女が嬉しそうならばと納得した。

(まぁお金は頑張って稼げばいいか・・・・)


「それじゃ本日はこれで終了だ。お疲れさん。」


 ファリップが最後に絞めディード達はギルドを後にする。

 ギルドからでた3人は、少し遅めの昼食を取る為に近くの店を探している。


「そう言えば、なんでレミィちゃんは寝不足だったの?俺は2の鐘が鳴るまで考え事してたんだけど。」

 不意にそんな質問がレミィの耳に入る。その言葉を聞き彼女はビクンと身体が反応する。


「え・・えっとあのですね、リリアさんと一緒にお話ししていました。」

 レミィはあの後すぐに戻ったリリアを不思議に思い廊下で待っていた。だがそこから聞こえたのは2人の愛の囁き。それを聞いたレミィは興奮しつつも、音を立てずにベットに戻りリリアを待っていた。


 そしてそこからレミィの怒涛の質問責めに2の鐘を過ぎても興奮収まらず、そのままギルドに来たと説明された。それを聞いたディードは恥ずかしながらもリリアを覗き込む。


「リリアさん、そんな事してたんですか?。」

「えっと・・・はぃ・・・レミィちゃんに勝てませんでした。」

 俯きながら顔を真っ赤にさせリリアは呟く。そこにレミィが口を挟む。


「これで私もリリアさんもディードさんと恋仲に慣れましたね。一緒に大事にされましょうね?リリアさん?。」

「ちょっなんでそうなるのよ、レミィちゃん?。」


「いいじゃないですか。私の努力も報われたんですよ、今日はいい日なんです。少しだけお昼豪華にしましょう?じゃないと私あの話をディードさんにしちゃいますよ。うふふ。」


「!?レミィちゃんそれだけはやめて・・・お願い・・・。」

「さぁ~どうしましょうかね~?。ディードさんどう思います?。」


そう問いかけられたディードは、ただただ苦笑いするしかなかった。



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