第73話 計画
「ありえぬ、在り得ぬ。私がこの私が半身とはいえ、魔族以外の魔法使いに魔力で負ける事なんて・・・・。」
氷の檻に顔以外閉じ込められ、足掻くゾクマはこの状況が未だに受け入れられずに足掻いていた。
「半身・・・?」
ディードはその言葉に疑問を抱き、同じ言葉を繰り返す。
「ディー。こいつは多分、自分を何分割かに分けて使役出来るタイプだと思う。」
ディードの後ろからリリアがディードの呟きに対し返事をした。
「そうなの?。」
「ええ、魔族は固有能力の出現が多く多様の種族なの。私の異母兄姉も固有能力を持っているの、あの『封印』と『魅了』がそうなの。」
魔族の中には固有能力を持つものが多く存在するらしい。
「贄の姫を見つけて、こちらにも運が向いて来たと思ったが、こんな規格外れの魔法使いを連れているとは、姫様も中々運がよろしいようで・・・。」
ゾクマはリリアを忌々しそうに見つめ、それから大きな溜息交じりにディードを見つめる。
「ええ、2日間逃げに逃げて、寝る間も貰えずひたすら逃げたわ。あの時に出会わなければ私はここに立っていられなかった。そこだけ考えると運が良かったかもね。尤も私はこんな酷い仕打ちをされる覚えもないんだけどね。」
「角の無い姫様には勿体ないぐらいの光栄なお仕事なのですよ。歴史に名を残せる偉業を断るとは・・・・。」
「角が無いだけで排除、暗殺をしようとする魔族の歴史にどんな名前で載るか興味はあるけどお断りするわ。尤も私は角が無いんじゃなくて、変異して体内にあるんだけどねぇ・・・。」
リリアはゾクマを見つめながら呆れたように言う。
(今リリアがさらっと暗殺とか言ってたけど・・・・身内から殺されかけた経験あるのか・・・。)
複雑な思いを胸にゾクマとのやり取りをするリリアをディードは黙って見ていた。だがそれも束の間、ディードの背中を指でツンツンと押しレミィが話しかけてきている。
「ディードさん。あの・・・あの二人の麻痺・・・・・。」
「あ・・・忘れていた。」
あの2人とはファリップとガロンの事だ。彼等は未だに麻痺が抜けておらず動きが取れてない、ガロンは辛うじて動き出しているがファリップは未だに動けないでいる。ディードは2人に【抗麻痺】を唱え麻痺を解除した。
ファリップは何か言いたげな表情だったが、助けて貰っている立場上なのか一言ありがとう。と礼を言い、ガロンは悔しそうに、すまん。と言い残しゾクマを見つめていた。
――――
――
それからディード達はゾクマを拘束したまま、リリアに関する計画を聞いていた。
「ふざけないで!!私は魔族の為の玩具じゃない!!」
瞳に涙を浮かべながらリリアはゾクマに向けて怒りを露わにしていた。
ゾクマから聞いた計画は、常軌を逸脱した物だった。
それはリリアをレイス山脈のダンジョンに封印、その後魔物と交配を繰り返させ新たな魔物を産むというものだった。生まれた魔物は普通の魔物よりも数倍強く、魔族の簡単な術式で操る事が出来るという・・・・
一見不可能に見える計画だったがが、王子達の固有能力がそれを可能に出来るという事。
それに仮に死んでいても肉体は呪術に使える魔道具と変える事が出来るという事だった。
「生きていても、死んでいても私が魔族の為に贄にされるって・・・・酷い・・私が何をしたって言うの!!。」
「それが魔族の明日を作る為に必要な事なのですよ姫様。貴女に拒否権はありません。」
「お断りよ!!。」
リリアは動けないゾクマに対し剣を抜き斬りつけようとしたが、ディードとレミィの2人によって止められている。
「落ち着けリリア。ここでコイツを斬っても意味が無い。」
「そうですよリリアさん。今は出来るだけ情報を・・・。」
2人に羽交い絞めされるような恰好で止められるリリア、諦めたのか興奮が収まり冷静になりだした所から、両手で顔を押さえ涙を流していた。
それを不憫に思ったのかレミィがリリアを覆うような形で抱きしめている。
「一体なんだってこんな馬鹿げた計画を立てたんだ。」
「馬鹿げた計画では無い、魔族の未来の為だ。その為には必要な犠牲なのだよ。このラスティア大陸を取り戻す為に!」
「取り戻す?。」
ディードがゾクマの言葉に怪訝な顔をしながら問いかける。
だがゾクマはどこか1点を見つめ何かと話しているような仕草をし始める。
「残念ですがお時間が来ましたのでこれで失礼させていただきます。ディードと言いましたか。貴方の名前は憶えておきましょう。」
そう言い放つとゾクマの身体は解けはじめ、黒い液体のような姿となった。計画を話している隙に逃げる算段をしていたのだ。慌てたディードは逃がさないように、炎獄で閉じ込めようとしたが、半分以上逃げられてしまった。
「計画をベラベラと話していたのは本体に逃げる為だったのか。くそっ。」
ファリップの判断によりディード達はダンジョンを出る事になった。
リリアは未だにいつもの調子に戻れず、心配したレミィが寄り添う形になっている。
ガロンはギロンが居た場所から数本の毛を拾い集め茫然としていた。
「ガロン、気持ちは分からなくもないがそろそろダンジョンを出よう。」
ディードの言葉にガロン耳を傾ているが、そこから動けずにいた。
「おい、ガロン聞いているのか?。」
「俺は・・・何も出来なかった。」
ガロンが悔しそうに拳を握り締めている、力が強く爪が食い込んだせいなのかそこからポタポタと血が落ちはじめていた。
「ギロンを止める事も、あの魔族を殺す事も・・・何も何も出来なかった・・・。」
「・・・・・・。」
「悔しい・・・自分の弱さが悔しい。」
「そう思えるなら、お前は前に進めるんじゃないかな?。」
「ディード・・・。」
「俺だって勝てない相手はいる。上には上がいるんだ、失敗もするし仲間も泣かせてしまった。でもな、それを糧にして次は無いように力をつける事が大事じゃないかな。」
「・・・・。」
「技を磨け、力を磨け、そして己を磨け。今俺に言える事はそれだけかな・・・。」
「どういう意味だ?。」
「技と力は今以上に付ける努力を、そして己を磨くとは自分の心を磨く事。他者を護り、支え合い力を合わせれば今以上の力を発揮できるって事かな。まぁ全部師匠の受け売りなんだけどね。」
「・・・・俺にも出来るのか?。」
「出来る出来ないの問題じゃない。やるんだ、良きリーダーならな。」
ファリップが口を挟む、ガロンは1度ファリップを見つめた後ギロンの遺毛を見つめる。
「・・・そうだな。ほんの少しだけここに居させてくれ。」
「わかった。俺等は少し離れた所に居る。」
そう言ってディード達はガロンと少し距離を取る。
その後、声を殺して泣くガロンの姿があった。悔しそうに彼は何度も拳を地面に叩きつける姿はとても印象的だった。




