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異世界転生幻想放浪記  作者: 灼熱の弱火 
堕ちた心と堕ちぬ心
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第70話 ニエノヒメ

 

 周囲に紅蓮の炎をまき散らし、杖に話しかけ頬ずりするリリアに一同はドン引きしていた。


「こ、これだけの威力の魔法をほぼ詠唱無しで撃つだと・・・?それでいて剣士なのか?あのお嬢ちゃん・・・。」

「私もリリアさんの魔法を始めてみましたけど、あの威力は凄いです。」


 ディード達の事を低ランク冒険者と侮っていたギロンでさえリリアの放つ魔法に唖然としていた。

「ナンナンダあの女・・・・。」


 紅蓮の炎をバックにはしゃぐリリアに対し周囲の誰もが驚いている。

 だがディードはリリアは封印されて魔法が使えないという事を知っており、話を聞く限りではかなりの使い手だと認識していた。

「信頼のおける俺達の仲間さ、低ランクが全て弱い訳じゃない。確かに俺達は冒険者になりたてかもしれないけれど、鍛える方法はいくらでもある。そろそろ負けを認めて投降してくれると楽なんだけど・・・・。」

 

 ディードは刀をギロンに向けそう伝えるが、彼は酷く歪んだ顔でディードを睨み返す。双剣は少しづつではあるが、黒い刀身が薄くなり刃の部分が見え隠れしている。

 その影響なのだろうか、ギロンの勢いはガロンと対峙した時より動きが鈍い様に感じられた。


「誰ガお前ナンカニ、オマcなkかにぃぃいいいx。」

 段々と聞き取れなくなってきているギロンの声、それでも攻撃の手を緩めないギロン、それに合わせ攻勢に出るディードは、意図的に双剣の右側だけを狙い破壊しようとしていた。打ち合わさる甲高い金属の攻防に、皆が注目していた。


「双剣ガ腹ヘッテいなkrば、お前ナンカオマエなんk。」

 双剣の効果がかなり薄くなったのか、それともギロンが疲れて来たのか、明らかに動きが鈍くなった。ディードはギロンの攻撃に合わせ双剣を弾くと、右手の双剣を狙いすまし刃を抉り込むように刀を振るった。双剣はついにその衝撃に耐え切れず、亀裂が入り黒いモヤが出はじめた。


「グウゥ・・・・双剣ガ・・・。」

 双剣の効果が切れたのか、ギロンは激しい息切れと共に片膝をつく。勝負あったと思われたが、ギロンは諦めていてはいなかった。


「くっそ・・・黒牙(くろきば)ヨ、もっと俺ニ力をヨコセ!ジャナイト俺はココデ負ける!モットモットちからをヨコセぇええ。」

 吠える様に双剣に話かけるギロン、両腕を水平に広げ力一杯に双剣を握りしめる。

 その瞬間、ギロンの身体に黒いオーラは舞い上がり両腕に纏わりつく。


「まだだ、マダダ俺はお前をコロスまでアキラめない。」

 両腕に力が漲っているのだろうか、ギロンは獰猛な笑みを見せ再びディードに刃を向けようとした時、誰もが予想しなかったことが起こった。


 




ザシュっと聞こえる一つの音、それはギロンの胸を双剣で貫いていたのだ。自分の胸に突き刺さる双剣、彼は自分の胸を刺さっている双剣を見て、訳が分からず茫然としている。

「・・は?・・ナ・・・ナンダコレ?。」

 


そう呟きギロンは双剣を抜こうとしたのだが、さらにそこから変化が起こる。

 双剣は突然意思を持ち始めたかのように、刀身から口が生えそこからギロンを喰らっていく。ギロンは振りほどこうとするが、双剣はお構いなしに彼の身体を食べていく。

「や・・・ヤメロ、俺を喰うな!痛い・・痛い・・だ、ダレカたすけてええええええ。死にたくない!じにだぐないよぉぉぉおおお。」

 内側から喰われていく自分の姿に発狂し、涙を流しながら叫ぶ。ディードは彼を助けるべく、双剣を斬ろうとしたのだが、右手の双剣がディードに向け発狂する。


 その発狂音は、衝撃波を含んでおりディードをその場で釘付けにする。

 その衝撃が止むころには既にギロンは首だけになっており、彼の目にはもう何も映ってはいない様に見えた。

 その凄惨な様子をリリアとレミィは直視できずに目を逸らし嗚咽する。

 双剣はギロンの全てを食べ、そして亀裂の入った右側の双剣をも喰らい黒いモヤを纏う。 

 


蠢く黒いモヤはやがて姿を変え、黒いミミズに鋭い牙が生え手足が4本生えた様なおぞましい姿になる。大きさは中型の犬くらいだ。


「こ、これがミミックの本当の姿なのか・・・・。」

 ディードはそう呟く。その忌避したくなるような姿になった魔物にディードは刃を向け視線を逸らさずにファリップに問いかける。


「ファリップさん、こいつは討伐対象でいいですよね?生かしておく必要は?。」

「ああ、全てを見ていた。そいつは危険だ、殺しても構わん。」

 その一言を聞きディードは刀に力を入れ斬りかかろうとする。

だがどこからともなく、それを制止させる言葉が聞こえてくる。


「ふぉふぉふぉ、それは困りますねぇ。いい実験体なので出来れば生かしておきたいのですよ。」

 いつの間にか周囲に白い霧が立ち込める。レミィとガロンは声が聞こえる様に意識を向け武器を構えた。ディードの反対側、後方から聞こえてくる声だった。


「悪いのですけど、それは数少ない成功例なのですので、私が回収に参りました。」

 そう言って現れたのは、ギロンに双剣を渡したゾクマだった。彼は商人の時は違い、紫色のマントに、青い珠が付いた杖を持っている。


「ゾクマ!何故ここに・・・。」

 声を上げたのはガロン、彼とは商売上の付き合いでアイテムなどを仕入れている。

「これはこれはガロン様。本日も猛々しいお姿で・・・・。」

「ふざけるな、お前のような商人がここに単独入れるはずがない、ギロンにあの双剣を渡したのも貴様だな。」


 牙を剥き、今にも襲い掛かろうとしているガロン。だがゾクマは大きなリアクションで嘲笑う様に返す。

「おお、怖い怖い。さすがのワタクシでもその威圧には恐怖しちゃいますねぇ。」

「貴様!。」

 ガロンを見つめながら身震いをするゾクマに怒ったガロンは彼に殴りかかる。

 それと同時に何かに反応し、本能で危険と判断したレミィがガロンを止めようと声をかける。

「ダメです!罠ですガロンさn・・・・・。」


 止めようとしたレミィは最後まで声を出す事無くいきなり倒れ込んでしまう。

 レミィだけでは無くガロン、ファリップも前のめりに倒れ込む。動こうとするが痺れ喋る事がままならない。


『ディー!まずいこの霧は痺れ毒が混じっている。』

 ファグが念話でディードに話しかける。ディードは慌てて呼吸を止めて、解毒薬を取り出したが、飲む事は叶わず彼もまたその場に倒れ込んだ。


「ふぉふぉふぉ、悪いですけど皆さまにはここで、退場していただきますね。今後ともここ迷宮都市グラドゥで来る時まで活動しなければいけませんので。」

 ゾクマはそう言うと歩きながらこちらに向かい、ミミックを拾い上げる。

 

 そしてゾクマの右手にはいつの間にか持っていた、黒い結晶をミミックに与えていた。

「さぁもう1度ダンジョンで(冒険者)を食べ進化をするのです、私の実験体よ。まずはここの連中を・・・・・そこのハーフエルフから喰らいなさい。そしてあのエルフの女を喰らえばお前は更なる魔武器に進化する事でしょう。」


 黒い結晶を食べ終わってから、ミミックはその場を降りてディードの方に向かう。

 前のめりに倒れたディードは、ヒタヒタを歩き近づくミミックが迫ってくるのを見るしか出来なかった。


「さぁ、いい声を上げ私のミミックに命を捧げなさい。尤もこの私が造るこの魔霧は魔族か私よりはるかに上回る魔力を持っていないと、声もあげられませんがね。」

 卑下た笑いをしながらディードを見下ろすゾクマ。ミミックはディードの目の前に立ちその牙を彼に向け、大きく口を開け捕食しようとしていた。




「悪いけどそんな事させないわよ。」

 ディードの背後からそんな言葉聞こえ、霧の中からリリアが飛び出しミミックに剣を突き立てた。彼女は即座に紅玉の杖をかざし魔法を放とうとしていた。

紅蓮の鳥(クリムゾンバード)よお願い、この霧を打ち払って!。」

 リリアがそう言葉を伝えると、紅玉の杖から先程より一回り小さい紅蓮の炎の鳥が飛び出してきた。その炎の鳥は周囲を飛び回り霧を払い視界を鮮明にし役目を終え消えていく。


「馬鹿な!何故動ける。そのエルフの女、何をしたのだ!?」

「何もしてないわよ、でもアンタはムカツクから取りあえず動けなくするわよ。」

 そう言うとリリアは剣でゾクマを突く。

 虚を突かれたゾクマはリリアの剣が腕に刺さり苦しむ素振りを見せた。


「私の魔霧を何ともないとは・・・・お前魔族か?。」

「さぁね、そんな事より大人しく投稿してくれないかしら?。」

「それは出来ない相談だな。私はこれでも忙しい身でね、これからやるべき事しないと、()に怒られるのでね。」


 ゾクマはリリアを見ながらそう言うと、右目に魔力を込め怪しく光らせた。

 リリアは咄嗟に身構え防御をしたが、その身に何も起こらない。彼は彼女が何者かを調べる魔法を放った。そこに映し出されるのは、自分よりも遥かに高い魔力の渦を体内に持ち、体中に角が変異した骨格を持つ彼女。それを目にしたゾクマは狼狽え始める。


「・・・・馬鹿な・・・お前は・・・いや貴方は・・・何故ここに居る・・・。」

 ゾクマはリリアを見ると激しく動揺していた。何度も何度もありえないと呟き言葉をこぼす。




「ニエノヒメ。」

本年もこんな感じでまったりと書いて行こうと思います。

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