第68話 ギロンその3
ギロンに強襲され、後方に押し込まるディード。それを見て高笑いするギロン。
「ハーーーハッハッハ。久しブリだなやさ男。とりあえずシネ。話はそれカラダ。」
言動が一致しないギロンにガロンの双剣が頭上から彼を襲う、だがその双剣は難なく受け止められる。
そしてガロンの放った双剣をまるで蠅を追い払うように弾き返す力にガロンは驚く。
「アニキ何するんダ?まずはあのヤサ男を始末するから、そしたらまた一緒にダンジョンで一旗揚げよウヨ。今度は俺がマモッテやるからさ。アハハハハハハハハハ」
目は虚ろ、声は所々聞き取りずらく容姿も変わっているギロンに驚くガロン。
「お前は本当にギロンか?。」
「そうだよ。アニキいつも一緒だったジャナイカ。同じ村でアンタに憧れて後を追ったギロンダヨ。」
「ああそうか・・・・それなら俺の言う事を聞けるな。今すぐ攻撃をやめギルドに出頭し処罰を受けるんだ。出頭すれば死刑は免れるだろう。だが同じ冒険者を葬ったお前は、キチンと捌きを受けるべきだ。」
その言葉にギロンは首を大きく傾げる、彼にはガロンの言葉がよくわかっていない様にも思える。
「ナンデダ兄貴?俺が何をシタっていうんだ?。」
「ならその身体を見て見ろ、その両腕はなんだ?肩まで黒く染め上がり剣の様になって、そして何人の冒険者の命を奪ったのだ?。」
ガロンはギロンの腕を指差しそう伝えた。ギロンは指摘され初めて自分の身体に異変が起きている事に気が付く。だが彼にはそれが嬉しかったようで腕を交差させ撫でる。すると黒い両腕からはキキキと金属同士をこすりつけた様な不快な金属音が聞こえてきた。
「ウハハハハ。俺ノ両腕が剣みたいにナッテいる。スゲェ・・・あんナ低ランクの冒険者でもイイ餌になるんだな。」
笑いながら他の冒険者の命を刈り取った事を自慢げに話すギロンに、ガロンは怒り任せにギロンに斬りかかった。ギロンは簡単にそれを受け止め払いのける。 弾かれたガロンは自分との力量の違いに驚く。
以前のギロンならガロンの一撃を弾く事も、それを払いのける事すら出来ない、魔武器の効果だとガロンは推測する。
「魔武器・・・・いやそれを模したミミックか・・・命を奪う事すら躊躇わないようになるとは・・・。」
「兄貴何言ってるんダ?こんなのタダの餌だ、放って置けばイクラでも増えル。だからおれ・・・。」
言葉の最期を言い切る前にガロンの双剣が放たれる、ギロンはそれを再び受け止めたが、今度は弾き返す事は出来ない。ガロンの本気の剣撃だ。
「赤い爪は基本、弱肉強食を教えてきた。これについては反論しない。だが命を奪う事は教えていない。」
「だから何ダ?、俺はもう赤き爪ニはイナイ。・・・いや俺はガロンを超えて赤き爪のリーダーにナル。だから俺ノ魔武器、黒牙のエさとなれ、ガロン!。」
2人は双剣をぶつけ合い対峙する。そこから繰り出される双剣同士の激しい斬り合い。周囲に甲高い金属音と火花が散る。 その周囲を避ける様に左右に分かれつつもディード達に向かってくるスケルトンの群れにディードは対応に苦戦を強いられていた。
「こ、こいつら魔核が無い!。どうなっている?それになんだ?この攻撃方法は?。」
左右から襲って来るスケルトンの群れには魔物の核である、魔核が存在しなかった。それだけではなく、彼の攻撃方法は自分や仲間の骨を投げつける事だった。 一見シンプルな攻撃で大した事ないと思われたが、投げつけられた骨同士が地面に落ち、再びくっつき合いスケルトンとして立ち上がる。
ディードの達の背後からも同じタイプのスケルトンが増援に来て周囲を取り囲む、白い骨が周囲を埋め尽くす。
斬っても弾き飛ばしても、欠けた部品を取り囲み、不格好なスケルトンが出来上がり再び襲って来る。リリアの斬撃は効果があるものの、一度崩れ他のスケルトンに取り込まれる事を繰り返し埒が明かない。 レミィも双剣による斬撃よりもアントブーツによる打撃を優先していたが、効果が薄い。
唯一効果的な方法は、魔法による攻撃だけだった。
それを担っていたのは、ファリップだった。だが彼も集中して魔法が使えるわけでもなく、次々と飛んで切るスケルトンの一部を回避しつつ火の魔法【火球】を放つ。
「くそ・・・キリが無い。アレもギロンの仕業か?」
「いや、そんな事な無い・・・と願いたい。ディード!少し俺に攻撃が来ない様にすることは可能か?。」
「ええ、周囲に石壁を張って防御する事は出来ます。そこからまたスケルトンは立ち上がりそうですが何とかします。」
「わかった、それを頼む。」
ディードはファリップの願いを聞き入れるべく、地に手を当て無詠唱で彼の周囲4方向に2m程度の即席石の壁を展開する。ディードは武器を鞭に持ち替え中距離からスケルトンを薙ぎ払う。
目の前に突如現れた石の壁に驚き声をあげるファリップだが、ディードの魔法だと気づき持っていた杖を地面に刺す。すると杖は淡い光を放ち、珠からは赤い光を放っていた。
「無詠唱でコレか・・・あいつ本当に低ランクの冒険者か?・・・・まぁ後で考えよう。今は時間が惜しい。コレを使うのは随分久しぶりだな。紅玉の杖よ、久しぶりの仕事だ、やるぞ。」
紅玉の杖と呼ばれた杖に手を掲げ集中し魔力を注ぐファリップ、杖は紅い光を帯び徐々に輝きを増している。
周囲のスケルトン達を払いのけ、時折投げつけられる骨を砕き守りに徹するディード。リリア、レミィもディード指示に従い近づくスケルトン達を倒していく。
ファリップが魔力を注いでいる間、ディードは守りに徹しつつもガロンの様子を伺った。
ガロンは傷だらけになりながらもギロンと対峙していた。どちらも本気で挑んでいるらしく余裕は無い、若干ガロンが押され気味だ。
「あの泣き虫グリエがここまでやるとはな。紛い物の力とはいえ厄介だな。」
「ソノ名前で俺を呼ブナ!オレハギロンだ。」
ガロンに違う名前で呼ばれたギロンは激怒し、更に双剣の速さを上げる。ガロンはそれに負けまいと剣を振う。
「俺の後を追い、この街になってきた時とは大違いだ。迷宮に入り初めて一人で魔物を倒した時、お前は昔のままだったよな?泣き虫グリエ?。」
「うるさい、ウルサイ、うるさい!ソンナ奴はもうイナイ。俺はギロンだ。何度もイワセルなコロス、殺すゾオオオオ。」
ガロンの挑発にギロンは声を張り上げ双剣を振る。その剣筋は、ただただ荒く上下左右に放っている。
ガロンはそれを見極め何とか双剣で回避しつつも反撃を繰り返している。
(あっちはまだなんとか持つな、問題はこっちだ。数で押し寄せられのはマズイ、時間稼ぎが終わったら攻勢に出ないと・・・)
そう考えつつも寄って来るスケルトンの群れを鞭で払いのけるディード。時間にして5分くらいだろうか、防戦一方のディード達に待望の声が聞こえる、ファリップだ。
「待たせた!いいぞ。」
その言葉を聞き、四方の石壁を解除するディード。ファリップは地に刺した杖を前にして両手を差し出し魔法を放てる準備をしていた。紅玉の杖は、全体に紅い光を放ち準備は出来ていた。
「取りあえず後方を片付ける。そこの2人下がれ!。」
リリアとレミィはファリップの声を聞き即座に彼の方へと駆け寄る。近くに来たのを確認しファリップは魔法を放つ。
「紅玉の杖よ、さぁ仕事の時間だ。派手に行こう!。『火の雨』」
杖から放たれるのは、拳大の火の玉。それが絶え間なくスケルトン達目掛けて轟音と共に解き放たれる。
その連射速度は凄まじく、まるで機銃銃だ。スケルトン達は成す術なく火の雨を喰らい続け崩れ去って行く。
あっという間に後方のスケルトンを消し去るファリップ。だが彼も余裕が無い様に見える。激しく息を切らし、杖にしがみつくように耐えている。
「ぜぇぜぇ・・・久しぶりとはいえ・・・鈍ったな・・・前は2回は余裕だったんだけどな。」
「十分な威力でしたよファリップさん。」
「まだだ。このスケルトン達には魔核が無い。どこかに操っている奴がいるはずだ、探すんだ。」
ファリップに言われ、操っている奴がいないか辺りを見回す。しかしそれらしい者はおらずそれどころか、先程まで激しくやり合っていた金属音が聞こえてこない。ガロンの方を見ると既に双剣が2つ共半ばで折れてしまい防戦一方だった。
「俺はガロンを援護する、レミィちゃんはこのスケルトン達を操っている何か探してくれ。リリアはファリップさんの護衛を!。」
そう言い残しガロンの方へ援護に向かうディード。リリアとレミィは言われたと通りに動き出す。
「ぐ・・・。」
多くの血を流し片膝つき肩から息をつくガロン。双剣は半分から先が折れてしまい、先程からギロンの攻撃をずらすので精一杯だった。 瞳からは戦意はまだある様に伺えるが、呼吸は荒く疲労と肉体のダメージはかなりのものだ。
「サスがに武器が折れチャここまでだね、アニキ・・・赤き爪のリーダーを譲リ、俺ノ下にツクナラ命は助けるけど?。」
「ふ、泣き虫グリエに助けを求めるくらいなら死んだ方がマシだ。」
ガロンは膝をつきながらもギロンを見据え闘志を燃やしていた。ギロンはその声に苛立った顔を見せ、側面に立ち剣を振り上げた。
「アアそうかい。死を選ぶカ、だったらコノ黒牙の餌になりヤガレ!。」
ギロンの双剣黒牙がガロンの首を狙う、だが首に届く前に甲高い金属音が鳴る。ディードだ。
彼はガロンを守るべく、刀でギロンの斬撃を防いだ。
「ディード。」
「邪魔スルナ、ヤサ男。俺は腹がヘッテイルンダ!」
「ガロンなんか喰ったら腹壊こわすぜ?ミミックモドキ、選手交代だ。」




