第65話 犯人
ダンジョンの入り口では、人でごった返していた。何人かは出入口付近で戦闘で血の匂いで引き寄せられたゴブリン達を迎撃している。出入口付近に3人の冒険者の男女が横たわっていて3人共かなりの重症のようだ。回復魔法をかけている者もいるようだが思うようには進んでいない。ディード達は怪我人を助けるべく、人混みを割って入っていった。
「回復魔法を使える者だ、状態は?。」
「来たか!3人共かなりマズイ状況だ。俺の【回復】だけでは3人も賄えない。どっちでもいいから引き受けてくれ。このままだと3人共ダメか誰か一人を見捨てなきゃいけない。」
回復魔法をかけながら冒険者は必死に回復魔法をかけている。倒れている3人をよく見ると人は片腕を肘から下がなく、もう一人は腹部を刺されているのか下半身が血まみれで呼吸も浅い。もう一人は全身が切り傷だらけでかなりの出血が多く、意識もなく呼吸が止まりかけている。
「わかった。この2人を助けるから、貴方の手前に居る方に専念してください。」
「2人?回復薬でも大量に持って来てるのか?。彼等は低ランクの冒険者だ、そんな助け方をしても金の無駄だぞ?。」
冒険者は怪訝な顔しディードを見つめるが、その真剣な表情に促され自分の手前の冒険者の回復を専念する事にした。 ディードは2人が横たわっている間に入り、両手がかざしながら回復を試みる。
「行きます! 光よ聖なる光よ彼の者に大いなる癒しを与え給え。【大回復】」
ディードの両手から光りが集約され横たわっている冒険者に光が注がれていく。光に包まれた2人は傷が逆再生でもするかの様にゆっくり傷が塞がっていく。
「な!【大回復】を同時に使うだと!神官か?。」
周囲が騒めきディードの方向に視線が集まる。ディードはそんなものは気にせずに魔法をかけ続けている。さすがに同時に大回復を使うのは思ったよりも魔力の消費が早く、彼の額に汗が出始めていた。
「く・・・さすがに持ってかれる量が違うな。慣れない事するもんじゃないな。」
そう独り言を呟きつつも2人の傷を癒していくディード。やがて2人は傷も癒え呼吸も落ち着いた要る様に見えた。落ち着いた様子を見てディードはすかさずもう一人の冒険者の様子を見に行ったが、もう一人は回復は終わっており落ち着いた様子だった。
「すごいな、エルフは・・・【大回復】を2人同時に使ってなお平然としてられるなんて俺なんかとわ大違いだ。」
そう言って地に腰を下ろし天を仰いだ冒険者は魔力をかなり使ったのかかなりぐったりしている。
「はははは・・・・まぁハーフなんですけどね。そっちも凄いじゃないですか、3人に回復をかけ続けて最後には大回復をかけてあげられるなんて。」
「これでもダンジョンでは回復役を担っているからね。今日は休暇で偶々通っただけだったんだ。俺はアレコ、君の名を聞いても?。」
「俺はディードです。」
当面の危機を脱し互いに自分の名を名乗りあう2人。そこへ心配したリリアとレミィの2人がディードの所に寄って来る。
「もう大丈夫なのよね?ディー?。」
「大丈夫ですか?ディードさん?。」
「ああ2人共。取りあえずはだね・・・後は本人次第だろうけど・・・。」
そういって横たわっていた3人を見つめる、一人は片腕が、一人は腹部がもう一人は血で見えなかったが目がやられている様だった。そして腹部を刺されていた冒険者は女性だ。大回復である程度は治っているが、失った部分は未だに回復していない。
命を繋ぎとめるのを優先してディードは【神聖回復】を使っていない、仮に使えたとしても3人分賄える程の魔力はあるかどうかはわからず、且つリリアの【魔力譲渡】を充てにして使う訳にも行かなかった。 それは大勢がいる前でやってしまえばディード達の能力が知れ渡る事になり厄介ごとを産みかねないからだった。
(公にすれば後が面倒になりそうだしな。もしこの人達が金銭的に困る様だったら後でこっそり治しに行くのもアリかもしれないな・・・・。)
そう考えている最中に、一人の男が目を覚まし始めた。片腕がない男の冒険者だ。
「・・・・・っ・・・ここは・・・。」
「目が覚めたかい?俺はアレコ、君を治療した者だ。君の名は?」
「俺は・・・チマ。そうだアイツ等は!。」
「探しているのは一緒に出てきた2人かい?それならすぐ隣で寝ているよ。その2人を治療したのはそこの彼だお礼を言うといい。」
アレコが指を差し示す方にチマは顔を向ける、そこに仲間の顔があって安心した様子だった。だがその表情もすぐに暗くなり悲壮に満ちた表情で絞り出すように言葉が出てきた。
「俺達3人は助かったのか・・・そうか・・・助かったのは3人だけか・・・。」
「君の言葉から察すると仲間が居たのか・・・・それと同士討ちと聞いたがそれは仲間割れか?。」
「違う!俺達はいきなり襲われたんだ!奴に・・・・。」
チマは怒り興奮気味に語り出す。
「俺達≪空の誓い≫のメンバーは初めて女王蟻に挑むつもりだった・・・・だけど7階に辿り着いた時に一人の獣人が俺達に襲い掛かってきたんだ。仲間の2人はその場でやられてポーターも失った。俺達は傷だらけになりながらも逃げて上の階まで上がってきたんだ。だけど傷だらけで手持ちの回復薬も底が尽きてそして追い付かれて・・・・また・・・・ちくしょう・・・俺達が何をしたって言うんだ。」
チマは仲間も助ける事も出来ず、逃げるだけしか出来なかった自分達に苛立ちを悔しさを滲ませ涙ながらに語っていった。
「そうか・・・それは大変だったね。そいつ顔は覚えているかい?覚えているならギルドに相談するといい。この騒ぎだなんらかしら手助けになると思う。」
「ああ、あの獣人の顔は忘れない・・・と言うかあいつは・・・・。」
チマはいきなり襲ってきた獣人の特徴を語ろうとしたが、彼は一方向だけを見つめ固まっていたその先にいたのは・・・ガロンとココルとファリップの3人だった。
「やぁディード君昨日はどうもありがとう、おかげで徹夜がしばらく続きそうだよ。」
「もう、ファリップさんそんな嫌味言わないでください、ここには同士討ちされた人の話を聞きにいたんじゃないですか。それにディードさん達が治療に参加してくれたおかげで話を聞けるまで回復された方もいるようですし。」
ココルとファリップはディードに近づき、ガロンは一歩離れた所で腕を組んで佇んていた。
するとチマはうまく動かない身体を無理矢理動かし、自分の仲間を庇う様に手を広げガロンを睨みつける。 ガロンはその視線に気づき何事かと見ていた。
「チクショウ!出口にも仲間が居たのか!口封じか?これ以上は仲間をやらせわせんぞ!」
チマは両手を広げ未だ目覚めぬ仲間を庇う様に道を塞いでいる。その瞳は真剣そのものであり近づけば襲い掛かると言わんばかりだった。
「・・・・なんの真似だ?。」
ギロンはチマを凝視しながら問いかけた。彼自身チマとは面識が無いようにも思える。
「この惨状を作ったのはお前だろ!ガロン・・・いや赤き爪!。お前のせいでお前のせいでぇぇぇ。」
チマは片手で殴りかかろうとするがガロンに届くことなくディードに止められる。止めたというよりもチマの足取りが未だに覚束ず、勝手によろけただけなのだがディードに拾い上げられた。
「チマさん・・・・でしたっけ?詳しくお話を聞かせて貰えますか?それによっては貴方を助けになるかもしれないです。」
そうディードは伝えるがチマの方は未だにガロンを睨みつけ殴りかかろうとしている。
「コイツの!コイツの仲間が俺達に襲って来たんだ!アイツだギロンだ!お前らがやったんだろう!。」
ギロン、その名前を聞きガロンは目を見開きチマに近寄る、するとチマはディードの支えを振り払い左手でギロンを殴りつける。
バキッ!鈍い音が鳴り響く、ガロンは避ける事なくチマの一撃を顔に貰う。その行動に殴ったチマも驚いたが次の瞬間ガロンはチマの胸倉をつかみ上げ互いに正面から向き合う様に仕向けた。
「ギロンが・・・・ギロンがやったと言うのか?コレを!。」
「ああそうだ!お前と同じ毛色の獣人の双剣はアイツしかいないだろ!他に誰がいる!。」
ガロンはその言葉に震えていた。それは勿論恐怖から来る震えではない、激しい怒りを制御出来ていない怒りから来る震えだった。チマを放り投げ、無言でダンジョンに走り去っていく。
「待て!ガロン一人で突っ走るなガロン!ガローーン!!。」
ディードの言葉に耳を傾ける事無く、ガロンはダンジョンの兵士の制止を振り切り一人ダンジョンに入って行った。
一方同時刻ダンジョンの10階では女王蟻とその兵士蟻達の大量の死骸が山積みにされていた。
「ほら喰えよ。もっと強くなれるんだろ?・・・・ああ、そうか・・・まだ人間を喰い足りないのか。・・・いいぜコレを喰ったらまた冒険者狩りしてやるよ。だからもっと強くなれよ・・・・。」
その死骸の山の頂には、真っ黒で1本の赤い線が入った双剣を握りしめるギロンの姿がそこにあった。
良かった、続きを早よ書けと思ったらブックマークか評価などを頂けるとありがたいです。
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
追記
ガロンとギロンの名前が一部逆になってました。ご指摘頂きありがとうございます。




