第7話 正体
第7話です。拙い文章ですが、良かったら見てやってください。
優しく微笑むのは、ディードの母、ファルナである。
その瞳と髪の色は輝く金色、優しく微笑む顔はエルフの象徴と言っても過言ではない美しさを備えている。 見た目は20代前半、後ろに流したロングヘアー、白く絹のような白い肌、白のドレスに薄いストールをかけ微笑む姿は、見る者の心を癒し、魅了し、平伏させる。女神の様な存在だ!(父グレイヴ談)
ファルナはディードに優しく話かける。
「ねぇ、ディー、そちらの可愛いお嬢様を紹介してくれる。何か困ってるようだけど?」
「ああごめんね。こちらの子は、リリアって言うんだ。さっき結界の外に出たら、ゴブリンやオークに追い掛け回されていた所を助けたんだ。それで、魅了の呪いが掛けられていて、このままだと危険なので村に入れたんだけど、こーなっちゃった。」
ディードは苦笑いで、簡単に説明する。 母ファルナは、少しだけ目を瞑り何かを考え唱えている。
やがて、ゆっくりと目を開きディードに向かい言葉を伝える。
「ねぇ、ディー、悪いけど、月見草と日向草を取ってきてもらえる? 呪いを打ち消すには必要なの。」
月見草は夜に咲く花、日向草は昼に咲く花だ。どちらも結界の中に生えている。この村ではハーブとしてよく使われる香草だ。
「それとエリン。外が少し騒がしいの、少し静かにしてもらって、集中するから・・・そうね、お父さんごと水をかけてもらえる?それで見張ってて欲しいの。」
ファルナは2人に優しくお願いをする。少々手荒な気がするがきっと気のせいだろう。
「わかった、行ってくる。」 「任せて。」2人は母の頼みごとに即座に対応する。
「それじゃ母さん。リリアをよろしくね。」
ディードはドアを開け、家の後方へと走り出す。一進一退の睨み合いが続いている村人達は、ディードの事には目もくれず、ただドアの奥にいるであろうリリアに熱い視線を向ける。
一方、エリンはドアの影から呪文を唱える。
『水よ、水よ、集え集え。我が敵に水の檻を与えよ。水牢獄』
詠唱が終わると同時にドアの前に立ち呪文を放つ。
放たれた呪文は、どこからともなく水が現れ、周囲を囲む。村人たちは水に包まれ、上下左右に生まれる水流にもがき苦しむ、魔法版洗濯機だ。もちろん父グレイヴとドルガも一緒だ。
30秒くらいで魔法を解除、水は消え去りその場で倒れこむ村人住民、やがてエリンは背後のドアを閉め、笑顔でこう伝える。「目、覚めた?」
「なんで俺たちまで・・・・」 不満を言い出す、ドルガとグレイヴ
「母さんのお願いだから」 笑顔で答えるエリン、その姿は10代の少女が悪戯に成功した満面の笑みだ。
「なら考えあっての事だ、仕方がない。」 「しょうがないな・・」 身体を起こす2人。
「なんか、納得いかないけどまぁいいわ。お母さんが少し静かにしててだって、父さんは闘気抑えてだって。集中できないって。」
「わかった、母さんのお願いならそうしよう。」 娘からの伝言に素直に聞き入れる、父グレイヴ。
ジト目で見つめるドルガだったのだが、ドルガも反論できない為異論は唱えない。しかし、
「コイツらはどーする?縛っておくか?」
「その前にドルガ、皆どーしちまったんだ?正気を失っていたけど?」
「あー、コイツらが大人しくなったらゆっくり説明するんだがな。」
「んー多分大丈夫なんじゃない?お母さん意味もなく、あたしに水を指定しないでしょ?」
そんな会話が流れる中、村人達が次々に起きはじめた。ドルガ、グレイヴ、エリンの3人は村人達を見つめ観察するが、どうやらファルナの思惑通りになったらしい。
「ゲホ、ゲホ・・・あれ? 俺今まで何したんだ?」「あれ?ここは?」「さっきまで何をしていたんだ俺は?」 魅了されている間の記憶が曖昧だが、次々と起き上がる面々に安堵する3人。
「言いたいことは色々あるんだが、取りあえず広場に来てくれ。オーク3匹、大猪1匹を狩ってきた。解体を手伝ってくれ。」 ドルガの言葉に対して、特に反論する訳もなく広場に向かう村人達。
「お父さんも行ってらっしゃい。」「俺もか?」
「うん、だって家でウロウロされても邪魔だもん、お母さん集中したいって。」
「うーん、わかった母さんの言う事なら従おう。それじゃ行ってくる。」
娘に促され、頭を掻きながら渋々と広場に向かうグレイヴ。 それを見つつジト目で見るドルガ。
それぞれが広場に向かい、解体を手伝ってくれるのだろう。勿論解体後は、皆で分け合うはずだ。
「さてと、家の中に遮音結界を・・・・いや、もうお母さんならやってるかな。 わざわざ、ディーに家に置いてある材料を取りに行かせるぐらいだしね。」
一人呟くエリン、その後彼女は庭に置いてある椅子に腰を掛けるのであった。
一方家の中では・・・・
「初めまして、魔族のリリアさん。少しお話がしたいの、いいかしら?」 「え?」
笑顔で、挨拶をするファルナに対し、リリアは驚愕する。それもそのはず、まだ誰にも自分が魔族とは言っていないからだ。何故、何故と・・・心の中で呟くリリア。
《魔族 または魔人族》、この世界の亜人族の中でも最も強いとされている種族だ。
魔法はエルフと変わらず強く、肉体は人間以上の能力があると言われている。
また魔族は角が特徴的で、魔族はほかの種族と関りをあまり持たないとされてる。
「なんで私が魔族だと、・・・角も無いのに。」
「それは内緒。別に嫌ったり危害を加える訳じゃないの。ただお話したいだけ、呪いも解除するように努力するわ。 そこの椅子に掛けてもらえるかしら。」
ファルナの促される言葉に、抵抗する訳もなく ファルナの前に座るリリア。
リリアだけが緊張し、重い雰囲気を一人で作り上げる。
ただファルナは優しく微笑みかけ、自分のお腹をさする。身重で動きづらいのに、優しいファルナの視線に重い雰囲気が解ける感じがしたリリア。
「お茶でよかったかしら。今、用意するわね。」
「いえ、あの、お構いなく。あの、身重なのに動かれたりしたら危ないので、やめ・・・・え?」
ファルナの事を制止しようと思ったリリアだったが、テーブルには既に淹れたてのお茶がそこにあった。
先程まで無かったはずのお茶が突如現れ、リリアの時が止まる。視線を少し外していただけなのに、さらに視線をファルナに戻すと、自分のお茶を飲もうとしている。
「驚かせちゃったかしら、ごめんなさいね。身重なので色々お願いしているの。私が動こうとすると、皆が心配しすぎるから。」
ファルナの悪意のない言葉に翻弄される、リリア。
やがてリリアも落ち着きを取り戻し、お茶を口にする。少し甘めのハーブティーだ。
優しい時間が数分流れ、リリアに緊張が解け少しづつ話をし始める。
兄弟の罠によって魔法を封印された事。 魅了の呪いを掛けられた事。
大きな地震が来て隙を見て、逃げ出す最中にダンジョンのトラップに掛かった事
気づいたら遠くに飛ばされいて、オークに追い回されていた事。
兄弟から蔑まされていた事
ポツポツ語り始めた。話すにつれ、俯き、彼女の瞳には涙が溜まっていた。そして、ファルナはリリアの話が一区切りした時、何かを言いかける前にそっと彼女の頭に手を触れる。
「よく今まで頑張りましたね。素敵な子、ここには誰も貴方に危害を加える人はいません。ゆっくり休んでいきなさい。」
リリアの頭をなで伝えるファルナ。彼女の溢れ出す感情はもう止められななかった。
「うぅ、うぁぁ~~~~~~!!」
リリアは俯き、伏せたまま顔を手で覆い泣き始めた。
外には聞こえない、優しい時間が流れていった。
ここまで見てくれてありがとうございます。