第63話 遺品
「お主らは何をやったんじゃ!?ワシのとこに注文が大量に来たぞ?こんな量どうしろ言うんじゃ!ワシとララを過労で倒れさす気か?。」
ジロエモンの怒号が工房の響き渡る、原因はディード達だ。 あの模擬戦後、ジロエモンの工房に大量の注文が入った。刀10本ジャケット5着そしてブーツが20足と一晩でこの注文だった。
「あははははは・・・・・これは予想してなかったなぁ・・・。」
「そうね・・・これはさすがにね・・・・・。」
「うぅぅ・・・・・ブーツは私のせいです、ごめんなさい。」
苦笑いするディードとリリア、そして呻き声を上げながら、ウサ耳と頭を抱えつつ小さく丸まってカリス〇ガードをしているレミィ。 その傍らでララがレミィを指で突っついている。
「次々に押し寄せてくる客に聞いてみれば、お主らがこの工房を紹介したらしいな・・・・しかもアントブーツはその後さらに追加で来るぐらいじゃ・・・・まったく、どうするんじゃコレ・・・・。」
徹夜明けで寝ていたジロエモンはたたき起こされ、寝起きに大量の注文。とりあえず事情を聴いている最中、さらなる追加注文。全てを作り終わるのに簡単に計算しても3ヶ月以上かかるのを判断して1度注文を締め切った。
「さすがにこれは厳しいにゃ。悪いけど材料と手伝いよろしくにゃ。この数早めに作らないと折角の注文がダメになるだじゃなく、この後の信用もなくなるにゃ。頼むにゃ『玉蹴り兎』。」
「そんな2つ名は要らないです。やめてください。」
レミィはさらに自分の耳を引っ張り聞きたくないようだ。模擬戦の翌日、レミィには2つ名(あだ名)が付けられていた。付けた奴らはあの模擬戦を見ていた者達だった。
2つ名は『蹴り兎』。見た事も無いスキルを使い、俊敏に動きその脚力で相手を倒す様からそう呼ばれた。
ララは追加で注文に来た客がその様を興奮しながら語っていったという。追加の10名の半分はその場に居た女性冒険者で、その股間蹴りは見事だったとララに伝わってしまった。
一部の男性冒険者からレミィに対する熱い眼差しを送る事になり、再びレミィの姿を見るその日を楽しみにしていると言う。その話をララが聞いて笑い転げていた。こうしてレミィに付けられた2つ名をいじっては遊んでいた。
2人では作り終わるのにかなりの時間がかかると踏んだディード達は、ジロエモン達の手伝いを了承する。
それから約10日間は、忙しいの日々であった。
ダンジョンから装備に必要な魔物を狩り、帰っては素材の加工そしてそれを繰り返す事数回。
時々ララの悪戯や酒の差し入れなどで日数は予定より伸びてしまったが、注文の数を揃える事は出来た。
そして工房の手伝いを解放されたディード達は久しぶりにギルドに訪れる。ダンジョンに潜る際に手頃なクエストはあれば受注しておこうと思ったからであった。
「ううぅ、・・・入りずらいです。」
「大丈夫だよレミィちゃん。逆に考えよう、これでレミィちゃんをいじめる奴はいなくなったんだって。」
「でも、蹴って欲しいって言う、変な冒険者が来たらどうすればいいんですか?。」
「え~~っと・・・。」
「あ・・・・ははははh。」
2人は視線を逸らし話を逸らそうと考えていたが、いい案が思い浮かばず苦笑いをする。
レミィは2人の姿を見てギルドに入るのが怖くなり逃げ出そうとするがリリアになだめられて不承不承ながらもギルドに入って行く。
幸い(?)な事に熱い眼差しを送る男性冒険者は居なかったらしくギルド内は賑わっている
時間は2の鐘が鳴る前なのだが、この時間クエストボードには受注が困難なクエストしか残ってないはずなのだが、見る限り受注が減っていない。少し様子がおかしいと首を傾げるディード。
「今日はクエストを張り出すのが遅かったのかな?上位ランクの受注は減っているのに、俺等のランクはまだ結構残ってるな・・・・。」
「そうね、これなんかそんなに難しいクエストじゃないわよ。ほら、兵士蟻の素材納品とか他にもあるわね。」
「そうですね、オーク肉も残ってますし、あれ?大蛙の素材納品もありますよ?なんででしょう?。」
人気があるクエストや手頃なクエストまで、ランクD以下のクエストが大量に残っている。
すると一人の男がこちらの疑問に気付き近寄ってきた。
「それは今低ランクの冒険者達がここぞってクエスト失敗をしているからだ。」
「ガロン・・・・。」
声の主はガロンであった、彼は腕を組みながら3人に近寄る。彼もまた少し疲弊しているように見えた。
「久しぶり・・・・と言えばいいのか。俺を負かした相手に話かけるのも少し癪なんだが、お前等ここ10日位見なかったが生きていたのか・・・・。」
「あははは・・・・・ちょっと色々とあってね・・・・。」
3人は視線を逸らしつつ苦笑いをしている。この10日間、ダンジョンに潜ったのは素材を採取する時のみなので低階層にしかとどまっておらず、しかも時間が短い事から会う事は無かった。
「・・・・まぁ詳しくは聞かん。お前らもにも注意されると思うが、ここ数日低ランクの冒険者達がダンジョン内で失敗を繰り返しているのだ。しかもほぼ全滅だ。」
「全滅・・・・。」
全滅・・・それは冒険者達の〝死〟を意味する。3人はその言葉を聞き、改めてダンジョンの恐ろしさを見に感じるのだったが、同時に疑問も浮かんできた。
「おかしい・・・・。」
「何が?。」
ディードが独り言を呟いたのだが、その言葉を拾いリリアは彼に問い直す。
「だっておかしいじゃないか?低ランクとはいえほぼ全滅っておかしすぎる。ガロンに言い方だと1組や2組の全滅ではないんでしょ?。それに勝てないと判れば撤退したっていいわけだし、助けを求めれば全滅は避けられるはず。低階層は人もそれなりに居るはずだから、全滅は逆に難しいはずなんだ。かなり強力な魔物でも出現しない限りは・・・・。」
「察しがいいな、だがその魔物は未だに目撃情報がない。ギルドはそれを含めて調査に乗り出そうとしている。」
「そうなのか、安心とは言わないけどギルドが調査に乗り出せば何かしら進展はあるはずだな。俺達は身長に11階を目指すよ。貴重な情報をありがとうガロン。」
そう礼を言いつつ頭を下げるディードにガロンを視線を逸らす。
「これは礼だ。俺の仲間の遺品を届けてくれたのでな・・・・。」
「遺品・・・・?。」
ディード達は反応に困ったような顔をし互いに見つめ合っている。彼等には身に覚えがないのでガロンに問いただしそうと思ったが、
「フォールという男の遺品を届けてくれただろう?あれはうちのメンバーだったやつだ。」
「フォール・・・あの魔武器を使っていた男ですね・・・・。」
彼の名前にレミィが反応し俯き暗い影を落とす。
レミィにとっては、まだ忘れる事が出来ない相手、彼はレミィを魔武器で斬りつけ激痛を何度も負わせた人間であった。その日初めて会った男の名前であっても彼女にとっては忘れる事の出来ない相手だった。
彼に2度の魔武器の効果をその身体に刻まれ、その直後ダンジョンの落とし穴に全員が落とされほぼ全滅に近い状態で、レミィはクラックが逃げ切るまでの囮役としてさらに魔武器で切り刻まれた。
その心の傷はまだ完全に癒えていない。
「魔武器?・・・・・・アイツはそんな物を持っていなかったぞ?。どういう事だ?」
「・・・・・え?。」
ガロンの言葉に耳を疑うレミィ。だが確かにあの日フォールは魔武器を装備しレミィに危害を加えていた。
「確かに私はあの日フォールと言う男に何度も傷つけられ、魔武器の追加効果で激痛を何度も味わされました。その後、ディードさんとリリアさんに助けられてダンジョンから出てきました。」
「信じられん・・・。」
「私が嘘をついているとでも?」
「違う・・・フォールについてだ。行動が不可解だ。」
「不可解?」
「ああ、ウチのメンバーに何も告げずに助っ人に行くなんてまずおかしい。それにやつは槍をメインで使う。連携もうまく取れないだろうし、いきなり武器を変えて挑むのは考えにくいのだが・・・・・。」
ガロンは目を瞑り少し考える、おそらく彼の事を考えていたのだろう。だがすぐに目を開け一つの結論に出る。
「死者は語らない・・・考えても仕方がないな。新たなメンバー編成で行くしかない。こんな所で止まるわけにも行かないしな。」
確かに死者は語らない。その人の考え、行動は肉体が残っていても語ってはくれないのだ。
「メンバーは2人減ったが、赤い爪はまだまだ健在だ。これから入れ替えでまた挑むだけだ。出来ればそこの3人を勧誘したいとも思ってるわけだが・・・・」
ガロンの見つめる先は勿論ディード達である。
「残念だが、うちは誘いには乗らないよ。何でも入れ替えればいいって訳じゃないだろ?。」
「ああ、だから即戦力としての勧誘だがな。まぁ断るとは思ってたし気にしておらん。だが俺がお前に勝つまで負ける事は許さんからそのつもりでいろ。」
「こっちも簡単に負けるつもりはないけどね。」
そう言ってディードは視線をクエストボードに移すのでった。
ディード達3人はクエストを受けダンジョンに潜り始めた。現在の階層は6階、特に大きな異変などは見当たらず、順当に進んでいた。
「あの話を聞いて注意して進んでみたももの、特に大きな変化はないわね。」
「そうですね、だからと言って油断するつもりは無いですけどね。」
リリアとレミィが周囲を警戒しつつも先に進む、ディードも背後を警戒していたのだが現在はコレと言って大きな変化無い。
だが、7階に進もうとした時に小さな変化が訪れる。
それは全滅したであろう冒険者の遺品が散乱していたからだ。
死体はなく、あったのはボロボロになった装備品とギルドカードが残っていた。3人は周囲を警戒するが特に何もおかしなところは見当たらず、危険はないと感じ遺品を集め始めた。遺品を集め始めたリリアはふと言葉をこぼす。
「妙ね・・・・。」
「妙・・・・ですか?」
「ええ。これだけ集中して遺品があるという事は、ここでこのパーティーは何らかしらで全滅したっていうのは間違いなさそうなんだけど・・・・何にやられたのかしら?。」
「それは魔物なんじゃ・・・・・?。」
「それがおかしいのよ。魔物だとしても対処するなり逃げるなる何か出来たはずよ?こんな集団で倒れているって事は一撃でやられたのかもしくは・・・。」
「もしくは・・?。」
レミィはその先の言葉を聞こうと首を傾げリリアの言葉を待っていたが、彼女は思い悩み言葉を閉ざしている。
「考えても仕方がない。俺等は調査員でもないしこれを回収したらギルドに持ち込もう。」
思い悩むリリアにディードが助け舟を出すかのように言葉を交わす。その言葉に賛同する2人は無言で散らばっている遺品を集めディードに渡す。
(もしかしたらリリアは仲間割れをしたのかも、って言いたかったのかな?確かに集団で倒れている事が不自然だ。内側から一気に仕留めなければ、誰かしら逃げてるし体勢をを整えて反撃に出るだろう。となると、相手は素早い動きを得意とする奴か魔法使いって線が妥当だ。だからリリアはあえて口にしなかったのかな?)
遺品を集め終えたリリアとレミィは周囲を警戒している。その間にボロボロになった装備品をディードがアイテムボックスに収納し順に入れ込む。だが最後の短剣を入れようとした際にそれは起こった。
「え?。」
ディードが気の抜けた言葉を発し、リリアとレミィはディードに注視する。ディード自体も何が起こったかわかっていなかった。何故なら・・・
「なんでこの短剣、アイテムボックスに入らないんだ?。」




