幕間ディードの夢
――樹
高樹――――
――高樹、貴方にはいつも言っているでしょう?
――――――高樹だから貴方は――――
高樹――――私達は貴方の――――ダメだね。もう疲れたの別れましょう。
――――高樹お父さんが!――――
高樹貴方だけが頼りなのよ?お母さんと一緒に――――
――あははは高樹、もうね母さん何もかも要らないのよ。あははははは
――――――――ごめんね――――――
ディードは夢を見ている。それはディードの過去に起こった夢だ。
ディードの前世、福々山高樹は不器用な人間だった。
彼は3人兄弟の真ん中で上には兄、大樹、下には妹、美樹が居た。
母、美咲は父、逸樹を愛し平凡な家庭を築いていたと思う。
母は高樹には厳しかった。兄、大樹は母に溺愛され何をしても褒められ、許される存在。
一方高樹は母の愛情の落差を感じつつも平穏に暮らしていた。だがそれも許されたのは少しの間だけであった。 それは妹の存在が産まれた頃からだった。 兄は母を妹に取られ、妹はまだ母の愛情を感じたくて年の差があるのにも関わらず、大人げない兄妹喧嘩が頻繁に起こっていた。
やがてそれも兄が中学に上がる頃には母から離れがちになり、妹は母を独占し始める。そこ小さな溝ができ兄と妹は互いに干渉しないようになっていく。その頃父は仕事先で病に倒れてしまい、しばらくは仕事に復帰出来なくなってしまう。そして高樹が高校2年に頃に母から言われた一言が今も魂にこびり付いている。
「いい?高樹、貴方はお父さんを私を皆を助ける為に高校を出たらすぐに働きに出てお家にお金を入れるのよ。」
その何気ない一言が高樹には痛く心に刺さった。 つまり彼は所謂搾取子として育てられたのだと確信する。兄はその頃大学を出て社会人なって家には居たが、自分で働いた金は自分の物だと主張し家に入れてなかった。母はそれを諫める事もせずに高樹にその一言を放ったのだった。
兄は愛玩子、高樹は搾取子、そして妹はまだ小さいが愛玩子の様に育てられている。
高樹は不器用な人間だった。当時それを指摘して兄に協力を求めていれば変わっていたのかもしれない。
だが、彼にはそれが出来なかった。自分が少しの間頑張れば、父も仕事に復帰し元の生活に戻れると、どこか楽観視していたのだった。
彼の高校時代、放課後は常にバイトだった。来る日も来る日もバイトに明け暮れ、収入のほとんどを家に入れていたのだ。やがて高校を卒業する頃、高樹にも春が訪れる。
高樹の初めての彼女の存在だ。彼女の名前は優花。似顔が優しい可愛い子だった。
だがそれも長くは続かなった。原因は高樹の母と妹による妨害だった。
高樹が家に入れるお金を減らされるのを杞憂し、徹底的に邪魔をしたのだ。最初は頑張っていた彼女も次第に元気がなくなり最後には『疲れた』と言って一方的に別れを切り出されてしまった。
高樹は悲しんだが、母と妹は喜びその日は豪勢な食事だった。人を陥れ喜ぶ顔、卑下た目尻に三日月型の口の笑みは高樹は生涯忘れる事は出来なかった。 新しく彼女が出来てもまた邪魔をされる、ただただ、・・・・家に入れる金が少なくなるという理由だけで・・・・そして高樹は特定の女性と付き合うのをやめてしまう。
父が元気になって仕事復帰するまでの我慢と、自分に言い聞かせ必死に働く。
だが高樹の願いを虚しく、父は原因不明の病に侵され日に日にやつれていく。専門の病院で見て貰い病名が発覚した時には既遅く介護が必要な状態まで父は衰弱していた。
仕事と父の介護と身を粉にして働く高樹・・・・だが上の兄と妹は一切関心がなく手伝ってはくれないばかりか、高樹から金銭を無心するまでになり果てた。
この頃には父を愛していた母は、父の姿に嘆きうつ病を発症する。
数年後父は他界。この時兄妹は既に独立していて父の訃報の連絡をいれたが、反応がない。
葬式の手伝いや資金援助を兄妹に求めていたが直接の連絡は取れず、友人を伝って連絡を試みたが結果は残酷なものだった。 『私達は結婚し既に他人である。』・・・・と身勝手なものだった。
散々甘やかされ、我儘に育った2人は病弱の父、情緒不安定な母を切り捨てていた。
高樹は絶望した。介護の為に仕事を辞め、アルバイトをしつつ介護と両立。精神的に壊れかけた母を支えながらの日々・・・・・報われる事無い先の見えない中での訃報。そして兄弟からの仕打ちに、高樹は疲れて壊れかけていた。そしてひっそりと行われた葬儀には、親族は母と高樹のみ、兄や妹は連絡一つ寄越さなかった。
母は自分の教育の仕方を今更後悔した。本当に今更である。そして自分が救われたいが為に自分を傷つけるという矛盾した行為を繰り返す。そしてついには母の精神が完全に壊れ、最後は笑いながら自ら死を選んでいった。
母の最期を見届けた看護師は、こう言い残していった。
「――――父さんごめんね。――――。」と・・・・
高樹は何もかもやる気が出なくなっていた。最後の言葉すら高樹では無かった事が信じられないでいた。
家族の為に頑張り、報われない日々を送り、母を支えていたのにも関わらず、高樹は礼の1つ受け取っていなかった。
高樹もまた壊れてしまっていたのだろう。あの日両親の墓参りの帰り、高樹は全てを処分する事を考えていた。家もわずかな財産も自分の命も何もかも処分する予定だった。
だがあの日、高樹は異世界の神々の喧嘩に巻き込まれ命を落としてしまったのだ。
それはある意味救いの手だったかもしれない。
そんな走馬灯のようなダイジェストを夢で見ていたディードは夜中に目を覚ました。
彼は寝汗で全身が少し濡れていた。
(何年振りだろ。前の出来事をこんな風に夢に出てくるのは・・・・)
そしてディードが酷く喉が渇いていたことに気づいた、多分夢でうなされていた事だったのだろう。
アイテムボックスから水筒を取り出し、喉を潤した。
(ふぅ・・・・、本当に今更なんだよな・・・既に第2の人生を送っているのになんであの夢にうなされなければいけないんだろうか・・・一度ファグの所へ行って原因を調べて貰おうかな。)
そんな思いを馳せ片膝を抱えそこに顔を乗せ考えるディード、夜も更けているせいか木の扉の脇から差し込める月の光がやけに綺麗に感じる。
「眠れないんですか?。」
ディードが片膝を抱えウトウトしながら考え込んでいると、ふと脇から声が聞こえた、声の主はレミィだ。
「ああ、ごめんね少し変な夢を見ちゃってね・・・・もう寝るよ。お休み。」
「はぃ、おやすみなさぃですぅ~・・・。」
そう言葉を交わし、抱えていた膝も伸ばしベットに仰向けになるディード、傍らに寝ているレミィとあまり触れないように自然と配慮し目を瞑り・・・・・・・・・かけたその時!!突然ガバッと跳ね起き身体かけていたシーツを剥ぎ取る。 暗くて見えずらいが確かに人の形をした何かがそこでモゾモゾとしていた。
ディードが慌てて木の窓を開ける。夏の夜空と共に月の光が部屋を差し込み一人の少女を映し出す。
それはディードのベットで少し丸まりながらウトウトとしているレミィだった。
「な、なんでここにいるのレミィちゃん・・・・?。」
ディードの問いかけに対し、彼女の耳が小さく震える。声が聞こえ彼女も寝ぼけ眼でゆっくりと起き上がった。彼女は半目でまだ眠りから覚めておらず、耳もしおれた状態だった。
「なんでぇ~?・・・えっとリリアしゃんとお酒のんでぇ~それから・・・ディードさんのとこに来ました。」
彼女はまだ眠気の取れない状態でボーっとしながらディードの問いかける答える、時々舟をこぐように睡魔が襲っているが、なんとか耐えている様だ。
「来ましたって・・?・・・・え?お酒?・・・ってかドアに鍵かかってるけど・・・・?。」
状況が読み込めないディードは、一つ一つ整理しようとする。
(まずはお酒だ。夕食は宿の食事で飲んでいなかった。って事は夕食の後、俺と別れてから飲んだって事か・・・・まぁこれはいい。問題はドアだ。どうやって入った?)
恐る恐るディードはドアの方に目をやる。だが月の光で多少明るくなったとはいえ、ドアの細部まではっきり見えるわけではない。 ディードは仕方なく光の魔法【光玉】を唱え宙に浮かせる。
そこから見えたドアは鍵の部分を中心に三角形を描くように斬り裂かれている。
鍵周辺を斬れば、確かに鍵は要らずドアは開く。鍵は未だに仕事をしており、時折隙間風に揺らされプルプルと震えていたのはきっと気のせいだろう。
(ドアがぁぁぁぁ。なんで切り抜かれてるの?この子お酒入ると行動が大胆になるよな・・・)
前回もレミィが虹の翼に加入した記念に、3人で酒を飲んだのだが、その深夜ディードの部屋に忍び込み、夜伽をしようとした事がある。
「ちょっとレミィちゃん、なんでドアの鍵の周辺部分を斬り裂くのさ?ってかミスリルの小太刀抜き身で持ってきたの?!。」
ディードはドア付近に置いてあったミスリルの小太刀が抜き身の状態で放置されている事に気が付いた。
レミィが持ってきたのだろう。 きっと鍵がかかって開いていないことを想定し、小太刀を持ってきたのだろう。
そしてディードは彼女を問い付けようとし、彼女を見た時にその姿にビックリする。
レミィは白のキャミソールドレスを纏っている。きっと寝間着なんだろう。
今、彼女は女の子座りをして、眠い目をこすり夢の中と現実を行ったり来たりしている。
その仕草は可愛い、だが月の光に照らされ白のキャミソールドレスが淡く光る、これが反則的に可愛さを強調している。時折優しく吹く夏の風はドレスを優しく動かし彼女のボディーラインを教えてくれる。
小さな双丘と頂は、時折風に揺られ自己主張をし、普段立っている兎耳は今はしおれたれている。
そしてふらふらとした頭でディードを見ては、小さな微笑みをする。普段見る事ない彼女の一面を見たディードは、先程の嫌な夢を吹き飛ばすには十分だった。
(可愛い・・・・・いや違う違う!確かに可愛いドレスを着てレミィちゃんはここに居る。・・・だけど他の衣服はここには見当たらない・・・・・・まさかその姿でここに来たのか・・・・)
レミィの部屋はディードの1つ上の部屋にある2人部屋でリリアと一緒に寝ている。だが酒に酔いミスリルの小太刀を片手に下着姿でこの部屋に来る・・・・誰かとすれ違っていたら、相手にとってそれは修羅場にしかならなかっただろう・・・・
「レミィちゃん、この部屋に来たのはいいんだけど、どうしてきたの?」
「ほぇ?・・・・えっとぉ・・・・。」
ディードは取りあえずこの部屋に来た理由を尋ねる。取りあえず前回の事が無いと信じつつも聞かずにはいられなかった。
「えっとぉ・・・ララしゃんがくれたお酒をリリアしゃんと飲んでぇ~そしたらぁ・・・・リリアさんいつの間にか寝ちゃって~、そしたら~ディードさんのとこに行こうと思ってきましたぁ・・・でも寝てると思ってたから鍵で開けました。・・・えへへへ。」
「その小太刀は鍵じゃないよ・・・。」
ディードは半ボケ状態のレミィに冷静な突っ込みを入れていた。話をまとめるとララから貰った酒を2人で飲んで、リリアが撃沈その後ディードの部屋に小太刀をもってやってきたと言う事になる。
「そうそうディードさんも一緒に飲もうと思って~お酒を持って来たんです。でもディードさん寝てたので寝顔を近くで見てたら私も寝てましたぁ。だから一緒にのみましょうよぉ」
呂律と思考がチグハグなレミィは、そう言ってベットの隅に置いてあった丸みを帯び、木の札が付いた酒瓶を取り出し、一緒に持って来たコップに酒を注いでディードに渡す。トポトポと心地よい音を鳴らし注がれる液体は、柑橘系のさわやかな匂いを伴うオレンジ色の酒だった。
(見た目はオレンジ色の酒・・・匂いも仄かに香る柑橘系の匂い。女性向けの甘いお酒なのかな?)
そう思いながらディードは酒を飲む、するとその酒はディードが過去に飲んだ事がある酒を想像させた。
度数の高いウォッカをオレンジで割った、スクリュードライバーだ。
ディードはその味に驚き、注がれた半分も満たない量を残し、マジマジと見つめる。
「ねぇ、レミィちゃん。このお酒ララさんから貰ったって本当?。」
ディードはレミィにこの酒の出元が確認する。彼女は大きく頷き、ディードの飲んでいたコップを奪う様にして残りの酒を飲み干す。飲み終えると彼女はディードに微笑みかけながら応える。
「そうですよ~。ララしゃん、夜に飲んでディードさんのとこ行けば可愛がってくれるって言ってましたぁ~。だから~可愛がってくれなきゃだめなんです。」
微笑みながら指で×を作り上目遣いで迫るレミィ。その可愛い仕草にディードは一瞬理性を持ってかれそうになる。
「ララさん・・・謀ったな・・・。」
ララの悪戯だろうディードは確信する。度数の高い酒をレミィに飲ませ、酩酊した状態でディードのとこに行けば酔った勢いで面白い事になりそうだ・・・・・と・・・仮に失敗してもララは損をするのは酒代くらいだし、何より面白い話を聞けそうなのでプラスマイナスゼロぐらいの気分で贈ったのだろう。
「ディードさん、わたしが持って来たお酒全然飲んでないですか。このすくりゅ~ぱいるどらいヴぁ~一緒に飲みましょうよ~。」
「レミィちゃん、スクリュードライバーだ。その呼び方だと掴まれて回転させられて頭から落とされる・・・・。」
「リリアさんのお酒も可愛い名前ついてましたよぉ。え~っとたしか、まなてぃ~でした。」
「マティーニじゃないかな・・・・。」
酩酊状態のレミィの会話に冷静に突っ込みを入れるディードであったが、さすがに夜遅くに酔っ払いの相手をするのは厳しいと感じるディード。ただでさえ最近は忙しい日々を送っている。
その忙しい日々を作った原因はディード自身なのだが・・・・
明日もやる事が一杯なので今日はもう寝ようとレミィに打診する。
「レミィちゃん、明日も朝早くから工房で作業しなくちゃいけないんだ、わかってるよね?。」
ディードは優しく諭すようにレミィに話しかける。彼女は微笑みながらコクリと頷く。
「だからね。そろそろ寝ないと明日の作業が辛くなるんだ。だからね?寝ようか?。」
「・・・わかりましたぁ~。それじゃ明日の為に早くしましょう。」
そう言って彼女はキャミソールドレスの肩紐をずらし始める。だが片方を下げただけでディードに止められる。
「待て。レミィちゃん一体何をするんだ?。」
「ほぇ?いい事ですけど?だめなんですか?。」
「ダメです!自分の部屋に戻りましょう!そして寝ましょう!。」
「それじゃダメじゃないですか?。」
「何がだめなんだ・・・・。」
レミィは不満げにベットをぽふぽふと叩く。その姿は一見愛くるしいが、彼女の頬は膨れその不満さを物語っている。
「だって、リリアさんと恋仲にならないのはディードさんが自信がなってララしゃん言ってました。」
「ララさん後で必ず仕返ししますからね・・・・・。」
「それで、ディードさん自信をつける為に、色々発散する為に娼館に行くんじゃないか?ってララさん言ってました。それならあたしと練習すればいいじゃないとララさん言ってました。だからお酒飲んでここに来ました。だからがんばれとララさん言ってました。私は間違ってないです?。」
「いいえ、間違いだらけです・・・。そしてララさんは明日あったら必ず仕返してやる。」
「いいじゃないですか!練習!するならあたしでもぉ。それか早くリリアしゃんとしてください。待っているあたしの事も考えてくだしゃい・・・」
ぽふぽふとベットを力無く両手で叩くレミィにディードはさらに首落とす。
(だめだこの酔っ払いウサギ・・・早くなんとかしないと・・・・。)
ディードはこの状況でレミィと同衾するつもりは無かった。それは先程の夢のせいでもあり、ファグ達が見ている可能性もありであり、何よりリリアの存在が見え隠れしている。 彼女と恋愛関係にあるかと聞かれれば、答えはNOだ。 だが気になる存在でもある事は否定しない、出来れば彼女が悲しい顔をする事は避けたかった。 しかしこの状況、いくら丁寧に説明しようとしても酩酊中のレミィに説教なんて聞くはずなんてない。 もう強制的に寝かせてしまおうかと思った時に、ふと思いついた。
「わかったそれじゃぁ、レミィちゃん練習しようか。」
「へ?いいんですか?・・あの・・・よろしくおねがいします。わたしをいっぱい使ってくだしゃいね。」
世の男が聞いたら感涙しそうなセリフを甘い声で囁くレミィにディードはさすがに心奪われそうになった。
「レミィちゃんは・・・ディードの部屋に行ったわね。」
少し前に起きたリリアは、ベットにレミィがいないことに気づき辺りを見回す。
だが、彼女おらず一緒に飲んでいた酒とコップが消えているのに気が付いたリリアは、レミィがディードの部屋に行った事を確信する。
「あの子は、本当に行動ある子なのね・・・もぅ・・・明日もやる事があるのに仕方ないわね。」
リリアもディードの部屋に向かう為に酒瓶と愛剣片手にディードのいる部屋へと向かう。彼女もまた酒が抜けているのではなく、鈍い思考で考え酒瓶と愛剣を持ち歩く。
リリアがディードの居る部屋に辿り着き、ドアの前に立った時彼女はレミィが部屋にいる事を確信する。
それはドアの周辺が斬り裂かれ少しの風でドアが前後に揺れているのがわかったからだ。
(あの子何してるのよ・・・・・)
そして部屋の前で声をかけようとした時に、部屋からレミィの声が聞こえた。それは笑い声ではなく、話し声でもなく、・・・・・レミィの甘く切ない吐息が漏れる声だった。
その声を聞きリリアは酔いは一気に醒め、さらに血の気までがサーっと引き自分が立っているのかさえも分からない程動揺していた。
(え?・・・今の声はレミィちゃん・・・え?え?なんで?)
レミィは自分が2番目の恋人と称し、リリアとディードを恋仲にさせる為に奮闘していた。
しかし裏ではディードと密会し、逢瀬を重ねている・・・・そう結論した彼女はレミィの声を聞く度に、身体が震える。だが・・・・ベットの軋む音と2人の声は彼女の耳に届く。
「あ・・・ダメです。そんなに・・ひろげないで・・・ヤダ。」
「これ位は受け入れて貰わないと・・・・ね。」
「まって・・・そんな・・・あ・・痛い・・・。い・・や・・助けてリリア・・・さん。」
彼女の甘い声から助けを求めている声もかすかに聞こえた。
リリアはその声を聞き、先程まで震えていた身体が今度は一気に怒りで震えだしていた。
(もしかして、レミィちゃんは組み伏せらせ無理矢理?!)
リリアは右手に握った愛剣に力を込め、ドアを斬り裂く。
「漣斬り!!。」
既に鍵の周辺を斬られたドアは、押せば軽く開く仕様に強制変更されていたのにも関わらず、横に往復の斬撃が入る。するとドアは横3分割にさせられ、ウエスタンゲート風に改装させられてしまった。
「ディー!!あんたレミィちゃんに何をしてるの!!!。」
ドアを分割して飛び込んできたリリアにディードは驚くことなく、冷静に伝える。
「ドアを破壊して入ってきた酔っ払いウサギに、頬をつねってお仕置き中だが?」
「・・・・そう・・・・。」
ディードはベットの上でレミィの頬を引っ張っている。むにむにと頬を引っ張られうまくしゃべる事が出来ない彼女はリリアを見つけ助けを求めている。
「りりあしゃん・・・たしゅけて。」
「・・・・・・。」
リリアは助けを求めるレミィに対し無言で彼女を見つめていた。涙目になりながらもお仕置きを受けているレミィに彼女はどことなく安堵してしまった。
助けてくれないリリアに対しレミィは痺れを切らしたのかディードに抗議する。
「もういいじゃないですか。このままじゃ、あたしのほっぺもウサ耳になっちゃいますぅ。許してください~。」
「・・・そうだね。迎えも来たことだし・・・・リリア・・・。」
言葉途中でディードはリリアを見つめながらレミィの頬をつねっていた手を放す。
ほっぺつねりのお仕置きから解放されたレミィはヨタヨタとリリアの方に逃げて抱き着く。
そして頭を抱えるディードにリリアは首を傾げる。
「どうしたの?。」
「どうもこうも同じ姿で来られたら、こっちも頭が痛くなる。」
「へ?」
リリアは自分の服装を見返した。
そうリリアはレミィと同じキャミソールドレスを着てこの部屋に入ってきていたのだ。お揃いで買った物なのだろう。しかしレミィと違い同じ物をリリアが着ると身長差のせいもあるが印象も変わってくる。
スレンダーなボディーから強調するツンと上向きの胸、キャミソールドレスのフリルの裾が彼女が動く度に下着を見せている。自部の姿を見た彼女は硬直し、その後顔が一気に燃え上がるように赤く染まっていく。
「とりあえず、今日はもう遅いからレミィちゃん連れて部屋に戻ってくれ。」
「~~~~~うん。」
恥ずかしさのあまりかレミィを抱きかかえたまま部屋を出て行くリリア。
やがてディードの部屋に静寂が訪れ不快ため息を漏らす。
「ドア・・・絶対弁償だろうな・・・。」
そう呟き後片づけをしようと、レミィが持って来た酒と小太刀をテーブルに置くディードにふと酒に掛かっていた木札に目をやる。そこに書かれていた文字にディードを驚き声を漏らす。
「まったく・・・悪い夢から覚めてみれば、夢のような事をうさ耳少女に言われ・・・そしてコレか・・・。」
そう呟くとディードはその酒瓶に入っていた少量の酒を一気に飲み干し、半ばやけにベットに潜り込む。
「夢じゃなければ明日の目覚ましは店員さんの悲鳴だな。」
そう言うと一人で笑い再び眠りにつく。
木札の表には酒の名前、裏には日本語で『夢花 作』と書いてあった。




