第6話 魅了
6話です。
チート主人公の予定なのですが、まだまだうまく表現できていません。
「「知らんがな」」
2人に突っ込まれて茫然とするリリア。それもそうだろ、自分がとてつもない事をいってる事に気づく。
2日で南に一月かかる距離に自分がいる事に狼狽える。今の自分には出来る訳がない、飛行魔法でやれば出来なくはないが今の状態では出来ないし信用されるわけがない。 どこかの貴族から、武器屋から、どこかのパーティーから隙をみて盗んできたと言ったほうがまだ現実味がある。 リリアは混乱のあまりに思考が停滞する。
「師匠、あんまり虐めないでくれ、多分本当の事だと思う。」 「理由は?」
ディードがドルガを制止する。 リリアはディードを見つめている。ただ理解できない、なんで本当だと信じてくれるのかと疑問も思う。
「彼女の言った【地震】と【光の渦】にちょっと思い当たる事があるんだ。それに、師匠も本気で疑ってる訳じゃないでしょ?」 「なんだ気づいていたか?」 「え?」 リリアは驚き、茫然とする。
「前に担がれてるからね。それに彼女の魔力の多さに気づいてないわけないでしょ?」
「成長したのぅ、確かにそこの嬢ちゃんは魔力の量が凄いな、ファルナと同じ位かそれ以上か。俺の鑑定でも正確な所まで見きれないな。」
2人の会話が理解できずに混乱するリリア。どうやら話は一応信じてもらえてる様に感じた。
「信じてくれるんですか?自分で言ってはなんですが、説明がおかしいのに・・」
「嘘だと決めてこのまま置き去りか追い出した方がいいかい? その様子だと禄に休めてもないし食事も取れてないでしょ?一応母さんに頼んでみるけど、魅了の方もなんとなると思うよ。」
「本当ですか!後でお金は必ず払いますから頼んでもらっていいですか?お願いします!」
ディードに喰いつく様な勢いで近づくリリア、ディードとの距離が近づき少し押されれば身体が密着できそうな距離だ。余程嫌な目に遭ったのか縋りつく様な目だった。2日間で何が起きたのかは、この音が教えてくれそうだ。
「「「プキギィィーーー!」」」
街道の奥からあまり見たくないシルエットが見受けられた。オーク3匹、しかもかなりの興奮状態だ。
獲物を見つけたが余程嬉しいのか、よだれを垂らし走ってくる。
「あいつら、もう追ってきたの?この2日間追い回されてもう沢山よ。」
あー あいつらが原因だったのか、確かに3匹相手は厳しいな、まして得意な魔法が封じられての相手は無謀だろう、挑めば負ける未来しか想像できない。逃げて機会を伺うが正解だな。とここに思うディード。
よく見ると、3匹にかなりの疲労と所々傷が見られる。 チャンスだ。
食料がわざわざ自分から、やってきてくれたのだ。感謝しないと。
「ディー、分かってるな、夕飯が来たぞ」「ええ、ついでに干し肉も作れるね。うちに1匹、師匠のトコに1匹、村に1匹でいい?」 「十分だ、ファルナにも栄養をつけさせないとな。もうすぐだろ?」
「うん、父さんが落ち着かないから、外で干し肉と燻製でも作ってもらうよ。家の中でウロウロしてて、うるさいしね。」「ガハハハ・・・3人目だというのに、相変わらずなのか。変わった奴よ、男ならどっしり構えておればいいのに。」 「はははは、そうだね、っと、リリアだっけ一応武器は渡しておくよ。」
ドルガとディードの会話についていけず、置いてけぼりの彼女にディードはアイテムボックスからナイフを取り出し彼女に渡す。 ふつうの調理用のナイフだ。
「一応出番無いと思うけど、護身用に渡しておくね。少し下がって休んでて。」
「私も戦います。」 「すぐ終わるから大丈夫。」 「ディー、来るぞ。」
ディードはドルガの声に反応し、オークのいる方角へ振り向く。
≪オーク≫、それは顔が豚で二足歩行で歩き、知能は低いが三つ指で武器を持つ種族、背丈は人族並でで人族には厄介な存在だ。田畑を食い荒らし、村人を襲う、女性は攫われ劣情を繰り返される。
だが、肉は食用として重宝され、加工すれば干し肉も作れ、日持ちする食材となる。
ただ、力任せに襲ってくることが多いので、油断できない魔物だ。
ディードは鞭に魔力を込め戦闘態勢に入る。3匹横に並んでいる為一気に仕掛ける必要がある。
「師匠、左1匹よろしく。」 「おう、気おつけろよ」
ディードは走りだし、距離を詰める。魔力の籠った鞭は青白く光る、同時に左手には風の魔法を唱えていた。鞭の射程距離に達すると唱えていた呪文を発動させる。『風よ、連らなれ連らなれ、敵を遮れ風圧』
ディードの放つ風圧はオーク2匹の顔に当たり視界を奪った、大きなダメージを与えるより効率、安全を重視した為だ。風圧を喰らい視界を遮られている隙に、ディードは端のオークの足元を狙い鞭を振るう。
鞭は狙い通りにオークの両足を絡ませる、そこへ一気に鞭を引き上げせオーク1匹を後方へ転倒させる。
素早く鞭を左手に持ち替え、右手に剣を装備したディードは、もう1匹のオークの魔核に剣を突き刺す。
剣はオークの厚い脂肪を貫き、魔核を貫く。悲鳴をあげ絶命するオーク、だが剣を引き抜こうとした時、もう1匹のオークに攻撃を仕掛けられる。
縦から降られた棍棒はディードの頭上向かって振り下ろされるが、ディードは素早く剣を手放し横に横転する。ディードに攻撃をしたオークは、棍棒を振り戻しもう1度ディードに狙いを定めたが、彼の意識はそこで止まった。
それはドルガの頭部への一撃だった。彼の渾身の一撃は、頭を瞬時に破壊し命を刈り取る。
ディードは倒れてもがいていたオークに対し大地に手をあて、呪文を唱える。
『大地よ石の槍にて敵を滅ぼせ!石槍』 放たれた呪文は地面から石の槍が飛び出しオークの頭を貫く。
3匹のオークはあっという間に2人に始末された。それは手練れの戦士たちによる瞬殺であった。
「成長したのディー、狙いも正確になっている。いつぞやの時とは大違いだ。」
「何年前の話だよ師匠。」 軽口を言い合い信頼してる2人を見て、リリアは茫然としていた。
「さて、血抜きを手伝ってもらえるかな?リリア。今日の夕飯はオークの煮込みだ。」
「え? あ、はい。手伝います。」 ディード達に促され血抜きを手伝うリリア。
一ヶ所にまとめられ穴を掘り埋められるゴブリン。ゴブリン達は残念ながら匂いがキツく、食用に向いておらず利用価値も低い、一般的に穴を掘って埋められるのがこの世界では主流だ。
10分程だろうか血抜きがある程度終え、ディードがアイテムボックスに、オーク3匹と大猪を2匹を入れる。ついでに、壊れた剣も一応回収して置かれた。
「随分大きなアイテムボックスなんですね。」
「いや、無理矢理入れて魔力を消費させてるよ。すぐに村に戻ろう。案内するよ。」
「そんな事が出来るですか?」
「嬢ちゃん、こいつは別格だ、そこいらとは一緒にしない方がいいぞ。」
そんな会話をやり取り、ディード達は村へ帰るのだった。
結界に札を当て入口を空ける2人。リリアは手を引かれ結界の中へと入れてもらう。
中央広場に近づくに連れ、村人や家畜達がリリアに視線を向ける。 この村に客人を入れるのは数年ぶりだからだ。 中央広場にたどり着くと、ディードはアイテムボックスから オーク3匹、大猪1匹をを順に取り出す。少し無理をしたせいか、ディードの額には汗が滲んでいた。
「ふぅ、さすがに疲れた。」と独り言をつぶやくディード。
村人が次々に集まる中、ディードは最後の大猪を取り出そうとした時に、異変に気付く。
(リリアに視線が集中してる?・・・まさか!) そう、リリアに熱い視線が集中しているのであった。
「ディード、その子は?お前の恋人か?」 「いや、違う、村の前で困っていたので連れてきたんだ。」
「ディード、その子泊める所無かったら家で泊めようか?」 「ちょい待てアルフ、この子はうちの客人だ。そんな気遣いしなくていいよ。」 「「ディードその子紹介してくれないか?」」
まずい、これが魅了の効果か、ディードが焦り始めた。さすがに村の仲間には手を出すことは出来ない。
ドルガがハンマーで地面を叩き衝撃を与える。
「今のうちに家に入れディード! ついでにグレイヴを外に呼び出せ。」
ドルガに、あだ名ではなく、早口言葉で名前を呼ばれる。 ドルガも焦っているようだ。
「わかった。リリアこっち!」 「え、はい。きゃっ!」 急に手を引っ張られ思わず声がでてしまうリリア、1度はドルガの衝撃で正気になりかけたが、リリアの声に村人がさらに興奮しはじめる。
まずい、かなりまずい状態だ。家からはさほど離れてなくすぐに着くが、集団で家に来られてもまずい。
ディードが家を空けようとすると「何事だ!」と父、グレイヴが出てきた、後ろには姉のエリンだ。
「父さん!姉さん!丁度よかった。ちょっとこの子を家の中で匿って。父さんは外で、姉さんは中へ!」
急いでリリアを中に入れ姉を引き込み扉を閉める。グレイヴは唖然として閉まる扉を見送ったが、背後から騒音が聞こえる。ドルガが村人を数人抑えつつ声を張り上げていた。
「グレイヴ!こいつらを家に入れな様に引き離せ!、ファルナにも危害が行くかもしれん!」
ドルガのその一言にグレイヴは瞬時に闘争心に火が付く。「あ”?ファルナに?」
凄まじい闘気が立ち昇る。 そう、グレイヴは愛妻家なのだ、しかもかなりの・・・・
瞬時に立ち上がった闘気に充てられ、怯む住民、本能で怯えと魅了の効果が入り混じる。なんとも言い難い光景だ。魅了の効果で劣情し近寄れば、グレイヴの闘気に充てられ後ずさむ。 一進一退(??)の光景だ。
一方、家の中では、
「取りあえずなんとかなったかな、焦ったぁ。」 「ご、ごめんねディードさん。」
「あーディードでいいよ。」 「あ、う、その・・・」顔を赤らめるリリア。
「ねえ、一体なんの騒ぎなのこれ?」 エリンは状況が掴めず頭上に?がいくつか飛んでいる。
「ふふふ、いらっしゃい。ようこそ我が家へ、可愛いお嬢さん。」
声の主はテーブルの奥に座っている、美しき母ファルナの姿がそこにあった。
最後まで見てくれてありがとうございます。
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