第55話 ランクアップと行方
「え?ランクアップですか?」
ディードはいまいち内容が理解できずにギルドの受付嬢に聞き返した。
「はい、正確にはディードさんじゃなくてレミィさんとジロエモンさんだけですけど。」
ディート達はダンジョンから地上へと出た後そのままの足でギルドに討伐魔物の引き取りをお願いしている。 受付嬢のライムは笑顔で受け応える。
「今回持ち込まれた素材なのですが、10階のボス女王蟻の魔石と素材持ち込みは当ギルドでは初心者のFとEの方はランクアップの査定としてして設定されております。よって今回ランクアップは妥当だと判断されましたのでお伝えします。」
「つまり10階のボスを倒して素材を持ち込むとランクがアップするって事ですか?」
「簡単に言えばそうなります。初心者が10階まで行ってボスを倒すなんて事は基本的にはあり得ませんし、それなりに経験を重ね強くなったと言う事が証明されます。」
5人は想定していなかったことに驚きつつも素直にランクアップを受け入れる。別に拒否する必要もなくFからEに上がったとて対応が変わる訳でもない。だが、この話はジロエモンとララにとっては棚ぼたの話だった。
「ジロエモンさんにつきましてはランクアップに伴い、特殊奴隷のララさんの解除が認められるようになりましたので報告させて頂きます。」
この言葉に対し、ジロエモンとララは即座に反応する。ララの特殊奴隷は対価か一定期間の奉仕活動だったのだが、こんな形で解除されると思ってもいなかったらしく。話を聞き前すべく受付嬢に迫り寄る。
「!?なんじゃと、それは本当か!。」
「きゃ、ち、近いですジロエモンさん。」
受付嬢は迫りくるジロエモンを避ける様に手を前に突き出し伝えた。 ジロエモンもつい勢いがつ、はっと我に返り受付嬢に謝罪する。
「す、すまん。つい興奮して。」
「い、いえ・・・。それでは解除の手続きを入らせていただきます。手続きが終わり次第神殿へ向かえば有料にて解除されますので少々お待ちください。」
そう言い残すと受付嬢は再びギルドの奥へと向かう。その姿を見送るや否やディードに対して深く頭をさげるジロエモン。
「ディード、今回は本当に世話になったありがとう。今は礼ぐらいしか言えないが俺に出来る事があったらなんでも言ってくれ。」
「いえ、偶然とは言えこれでララさんが鍛冶に参加できるようになったのでこちらとしても助かります。」
ディードが頭を下げて、中々上げないジロエモンも困惑する。周りの人達も興味本位で視線を注がれる。
「取りあえず、頭をあげてください。周りの目がありますので。」
「ああ、済まぬ・・・・。」
そうこうやり取りしている内に先程のギルド嬢が戻ってきた。
「それではギルドカードの更新です、お受け取り下さい。」
受付嬢がレミィとジロエモンに更新されたギルドカードにはランクEと書かれている。そしてその下の方には何やら見慣れない絵柄が刻み込まれていた。その絵柄はディードやリリアには刻み込まれていないものだった。
「この絵柄かな模様はなんだろう?。」
そうディードが独り言のように呟くと、ギルド嬢が答えてくれる。
「それは特定の討伐証明になる紋様です。これがあると討伐でランクが上がったことが証明されます。もしこの紋様を更新するのであれば次は20階のボスを撃破し、素材を持ち帰る事でランクアップが可能となります。」
システム的に低ランクのボス撃破だけでランクアップをさせないようにする為の措置なのだろうか。
確かに同じことを繰り返せばランクアップが可能だし、それに付け込んで色々を悪さをする奴が色々とでてくるだろうとディードは推測した。
「以上でギルドカード更新が終わります。現在持ち込みの素材の査定中ですのでしばらくお待ちください。」
そう言い残すと受付嬢は、他の冒険者の対応に当たった。
それから査定が終わり呼ばれて渡された金額が金貨3枚分だった。女王蟻の素材は常に不足らしい、理由は女王蟻の素材を撃破し時間が経つと独特の香りが出る。
その香りに兵士蟻や飛蟻が寄ってきてしま、。集団で襲われる事が多いらしい。
ディードはアイテムボックスを持っている為にそのようなことはなかったが、他の冒険者が持ち帰ろうとすると、どうしても乱戦になり被害が出る。その為装備の修理や治療費などに金額が割かれてしまい、総合的に見ると割に合わず魔石と討伐証明だけ持ち帰る冒険者が多いのだと、受付嬢は説明してくれた。
「じゃーディードのアイテムボックスに毎回入れて持ち帰れば、その内大金持ちになるにゃ!。」
そう思いついたララは鼻息を荒くし興奮気味だが、ジロエモンが呆れたようにララに語りかける。
「そんな事したらドンドン値が下がるじゃろうが。それに他の冒険者からも嫌がれるだろうな。アイテムボックス持ちは貴重な存在故、仲間に引き入れれば大儲けだろうが、逆は商売敵になる。最悪使わせないようにする事もありえるじゃろ?」
ジロエモンの言葉に、アグランでの苦い思い出が横切るディード。不意打ちといえ背後から刺された上に、身体を麻痺させられた経験がある。 一歩間違えれば2度目の死を迎える事になりえたのだ。
ディードはその経験から、迷宮都市グラドゥに来てからはアイテムボックスの存在は、道具ではなく彼自身の魔法だと周囲に少しだけ打ち明けている。 道具でなければ奪われる事は少なくなるだろうと予測しての事だ。
「そうだね、あまり悪く目立った行動はしないように心掛けないとね、また狙われるのと面倒だし。」
苦笑いのディードをジト目で見るリリア。 何が言いたいのわかるディードは視線を逸らす事しか出来ないでいた。
ギルドから出て次に向かったのはジロエモンの工房だ。結構離れており門の近くまで来ている。見た目は古く街が初期の頃に建てられたものだろうか、所々チグハクな建物だったのが3人には印象に残った。 ジロエモンとララに案内され中に入るが店舗兼工房のせいか狭く感じた。
「まぁ狭いが適当に座ってくれ。それで早速本題に入るがまず作りたい装備を言ってくれ。」
「そうだな、まずは双剣・・・いや小太刀だな。それを2本それと靴。あとは俺は刀を1本。後は魔道具と防具を少しかな。」
「・・・まずは武器を作るか。それと素材は奥で解体するが見ていくか?。」
ディードは見たそうだが、レミィとリリアは少々引き気味だ。さすがにダンジョンで一晩過ごした後に解体作業は慣れない2人にはきつい作業だろう。 魔石や討伐証明ならまだしもグロテスクな作業は好まない。
(まぁ無理に手伝わせるのは必要はないしな。)
ディードはここに残り、2人は昼食を取る為に別行動になった。 まずジロエモンと素材の確認をしていく。とは言うものの、基本的には兵士蟻の硬い部分を繋ぎ合わせる初心者用の防具しか現在は作れない。
ディードのアイテムボックスの中身を確認するが入っているのは兵士蟻数匹と飛蟻それに火牛だった。
それぞれ数匹を工房の隅に置きディードとジロエモンは解体作業に入る。
「蟻は頭部と胸部が素材になる。尻の部分も使えなくないが防具と言うよりは服になるな。使うか?」
「絶対リリアが嫌がるから駄目だろうな・・・そっちの処分は任せるよ。」
「わかった。じゃが武器に関しては今貰っている素材ではちと厳しいのぅ。ワシが代理で鉄を購入する形でいいか?。」
「ああ、頼む。それと出来たらミスリル辺りを購入出来たらそれを刀にしてもらいたいな。」
「金が足りんわ・・・・刀1本分じゃと金貨数枚はするぞ?。」
「今日の報酬の金貨2枚分を渡して置くよ。これでまずは小太刀と刀の材料を買えたらお願いするよ。」
「わかったこの解体が終わったら仕入れてこよう。おーいララ少し手伝ってくれ。」
しかしララは既に居なく、ジロエモンが周囲を探すが見当たらなく何処かに出かけている様だった。
「あやつ解体が嫌で逃げ出した訳じゃあるまいな・・・。」
そう呟くジロエモンだったが、無理に手伝わせるのも気が引けるので2人で黙々と作業に入った。
作業に入り数時間気が付けば既に夕方になっており、レミィとリリアが工房に戻ってきてディードに声をかける。取りあえず今日の作業はこれで終わりとなった。
「そうかもう夕方なのか、作業に集中してから気が付かなかった。」
「残りはこっちでやっとく、素材を仕入れに行くから一旦ここを閉めるぞ。」
「ああ、よろしく頼む。そういえばララさん帰ってこなかったな・・・。」
「あれ?ララさん戻ってないんですか?私達とお昼食べた後どこに行ってたんだろ?」
「アイツは・・・・済まぬな2人。アイツの食った分は払うから金額教えてくれ。」
「いや別にその位はいいですよ。ただその後どこに行ったのかは心配ですけど。」
ジロエモンにも心当たりが無く、待っていると素材を買いに行けないので取りあえずララはジロエモンが後で探すと言い3人と別れた。
3人は宿を取り次の日の朝、再びジロエモンの工房を覗いてみる事になったのだが、工房の前で大きな変化を目のあたりにした。




