閑話 お節介兎
2本目です
レミィ視点
「そうか、それは良かったねウサギちゃん。」
「ええ、色々教えてくれてありがとうございました。」
私は今ポーターの時に世話になった宿屋に来ている。話しているのは宿屋の主人ギダさん。
元冒険者が開いている宿屋なんだけど、素泊まりから大部屋まであり冒険者の懐事情も分かっている、初心者向けの宿。本当にお金が無い時に1度だけツケで泊まらせて貰った事があり、その後も色々をアドバイスを貰った恩のある宿だった。
私は今までのお礼を含めて少しだけ金額を上乗せしてギダさんに支払って雑談をしている。
そう、あの日私はディードさん達に助けられてからこの宿に泊まっていない。ここの宿は安いけど、狭いし3人部屋はなく、1人2人と大部屋と雑魚寝部屋だけなのだ。客を多く泊まらせて儲けを出しているので、ご飯も正直美味しくない。ディードさんとリリアさんに勧められない宿。 これは内緒・・・
「冒険者からポーターになる人は結構いたけど、逆に冒険者に戻るのは私の知っている限り君が初めてだ
。そのリーダーはいい人なのかい?。」
「はい、とても良い人です。私をとても大事にしてくれます。」
やや大げさな表現ではあるけど、私はディードさんを思い浮かべ頬を染めている。
この恋心は本物なんだと確信している。ギダさんは私の顔をマジマジと見つめ少しだけ考えていた。
「そうか君の身体を彼に捧げ、何度も求められて内に舞い上がっている・・・様には見えないし、きっといい人なんだね。」
「そんなんじゃないんです。でも求められたら断るつもりもありませんし、後悔はしません。それにまだそれは先になると思いますし・・・」
私はその時リリアさんを思い浮かべていた。多分ディードさんは私と先にそうなる事はないと思う。
先にそうなるのはリリアさんの後だと思っている。
あの2人の間には表現出来ない2人の空間がある。それは友情だったり信頼だったり愛情めいたものだったり、きっとそれは心地の良いもので、2人はそれを壊したくないような関係にも見える。
2人共恋愛には少し臆病なのかもしれない。私はそれでもいいと思うけど、それだと私が愛される順番がいつまで経っても回ってこない。別に私が先にってそうなってもいいけど、そうなってしまったらこのパーティーは崩壊すると思う。命を助けてくれた恩人に仇で返す・・・それは嫌なので少しづつお節介をしていこうと思う。
「そうなのかい?それはまた変わったリーダーだね。てっきり恋仲になって羽振りがよくなって、口止め料を支払らいに来たものだと思ってたよ。」
ギダさんはからかう様に笑っていた。
「ええ、変わってますね。私を助ける為にわざわざダンジョンに来てくれたり、耳を治してくれたり、将来私の旦那様になる人だと思ってます。」
ディードさんを思い、とびきりの笑顔でギダさんに言ってみた。するとギダさんかは意外な反応があった。
「ぷ、ふはははっはは。そうか旦那様か。旦那様か・・・。」
ギダさんは笑いながら何度も『旦那様』と呟いていた。
「あの隅っこで毎日俯き泣きながらパンをかじっていたウサギちゃんが、数日見なくなったと思ったら、こんなに綺麗なお嬢さんに変身してくるとは思ってもみなかったよ。冒険者からポーターになる時、悔しそうに泣いていたあの子がね。」
「もー、そんなに笑う事無いじゃないですか。確かにあの時の私は泣いてばかりでしたけど、今はこうしてちゃんとお礼も言えるようになったんですから。」
私は少し恥ずかしくなりギダさんの昔話を遮る様に声をあげて騒いでしまった。
「ああごめんごめん、つい・・・な。数日前の姿を思い出していると同じ子に思えなくなってな。その人を絶対に離すんじゃないぞ。頑張れよレミィちゃん。」
「もちろんです。」
私は笑顔でこの宿を去って行った。後で知った事だけど、この宿で私は『変な旦那に拾われ出世した幸運兎』として有名になっていた。 私の知らない所で・・・・・
次に向かった場所はギルドだった。私は受付に向いダンジョンの情報を買っていた。11階から20階までの出る魔物、素材になる部位とかを有料で教えてもらう為だ。 これは私の仕事だと思っている。
どんな魔物いるのかわかれば対処もしやすくなるし、何よりも素材を取りこぼしたくないから。その素材で私達は強くなれるのであれば知っておいて損はないと思う。私の武器はまだ心許ない、スキルである【兎の盾】がもし使えなくなったら、私は一番に狙われると思う。
もしそうなっても戦える武器と知識が欲しい。ただ痛い思いをするだけのあの時の私と違うと思いたい。
あの魔剣の痛みは今でも忘れられない。全身に駆け巡る激痛は今も鮮明に思い出させる。
あの時、薄れゆく意識の中で死にたくないと思った。その願いが叶って目を覚ましたら衝撃的な光景が入ってきた。
それはディードさんは倒れていて、リリアさんはディードさんにキスをしていた所だった。
多分ディードさんが毒か何かに犯されて、口移しで何度も薬を飲ませている光景が目に入っていた。
私はその光景をドキドキしながらずっと見ていた。そして私の視線に気づく前に言っていたあの言葉、
『でもね、そんなに頑張る貴方がね私は・・・。』それに続く言葉は一つしかないと思う。
最後は薬も口に含んでいなかった。『好き』という言葉を伝える為に行動に移したかったんだと思う。
リリアさんは恋に臆病な兎なのかもしれない。 それなら恋に積極的な兎が応援しようと思う。
時間も4の鐘が鳴る少し前、私は食べ損なった昼食を2人分買ってジロエモンさんの工房に行く事にした。多分ディードさんも食べていないと思って2人で食べようとサンドイッチを購入していた。
だけど帰りの途中でリリアさんが時間を持て余すように頬杖をついてため息をついていた。
どうやら何をやっていいかわからずに時間だけ過ぎているように見えた。
あれじゃ声をかけてくれって言ってるようにしか見えないけどなぁ。
だけど本人はそうじゃなくて時間が過ぎるのを待っているだけに思えた。美人なんだから綺麗な服とか見に行って着飾ってディードさんを喜ばせればいいのに・・・・
でもそうじゃない、リリアさんは来ないと分かっている人を待っているんだ。
その相手は私の好きな人。これから一緒に遅めの昼食を食べようとする人なのだ。
でも今日はリリアさんに譲ろうと思う。だってその方が私の順番早く回ってくるかもしれないし。
私は悪戯心もあり、ジロエモンさんの工房へと向かった。
ディードさんはやっぱり昼食を取る事を忘れて作業に熱中していた。ララさんは私が持ってきた袋の中身を食べ物と当てて縋りついてきた。でも私は嘘をついた。中に入っているのは下着と・・・
ディードさんは作業がひと段落したと言ってたので、そこのカフェを勧めた。
そうリリアさんがいるカフェにだ。
ついでにここで夕食を作ろうと思うので材料を買ってきてくださいと頼んだ。
ディードさんは素直にカフェに向かって行った。あー、2人っきりでサンドイッチ食べれるのは次はいつになるんだろうな・・・ 心の中でそう呟いていたらララさんが近寄ってきた。
「そろそろその下着も食べごろの時間を過ぎるにゃ。出来れば分けて欲しいにゃ。」
「やっぱりわかってましたか・・・まぁ黙っててくれたのでこれは差し上げますよ。」
「ありがとうにゃ!。」そういってララさんは袋ごと持って行ってしまった。
「こっちも2人っきりにしてあげましょうかね。少し出てきますね。」
私は独り言を呟き、ディードさんから少し遅れて工房を出た。
見つからない様に距離を保ちディードさんの後ろをついていると、2人の男の人達が逃げる様に走ってきた。きっとリリアさんを口説こうとして返り討ちにあったのだろう。去り際に『あの女』と言っていた。
私はこっそりディードさんとリリアさんの様子を伺った。 結果は言うまでもないかな。
あの笑顔を見たら、私のお節介もいい結果だと言うのがわかる。
「ふふ、恋に臆病な先輩兎さんにはもっと頑張ってもらわないとですね。」
さてと、私は一人で何を食べようかなぁ~
先輩兎の恋の成就を密かに願う、恋する後輩兎なのでした。
最後まで見てくださってありがとうございます。
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