閑話 リリアの憂鬱
本日はもう1本投稿させて頂きます。13時を予定です。
本日ディードが武具製作にあたり、リリアとレミィは休日となった。本来ならば製作を手伝うはずなのだがディードが今日は休んでくれと言われてしまっている。 理由はジロエモンとララの3人で作るにあたり、場所と製作の問題でまずは3人でやって見ようと言う事になっている。その為にリリアは街をふらつき、オープンテラスのカフェで、飲み物を飲みながら頬杖をついている。
金髪で蒼い瞳の麗しき女性が一人物思いに耽っている姿は、絵画をの一部分を切り抜いたかのように綺麗で美しい。 彼女の特徴である耳の辺りから色が変わる白い髪もまた彼女を引き立てていて、時折流れる風の悪戯で揺れる髪は見る物を魅了しようとしていた。
おかげで運悪くすれ違った数名のカップルが男性がリリアに見惚れて喧嘩に発展したのだが彼女の知る由ではなかった。
リリア視点
私は今複雑な心境にある。理由はレミィちゃんだ。ディーにやたらくっついている。
それをみて最初は微笑ましいと思っていたが、今は違う。私は嫉妬をしているかもしれない。
この感情は言葉では表現出来ない・・・。
ダンジョンコアを破壊した後から彼女の性格が変わった・・・いや・・元に戻ったのかもしなれない。
初めて彼女に会った時は、いつも何かに怯えているようだったけど、今は私達と行動を共にするようになってからは活発な少女になってきている。
別に彼女は嫌いとかでは無い、むしろ好き。明るくて歩く度にピョンピョン揺れる彼女の耳は、いつも触りたくなる。彼女は可愛い、白い綿毛のようなサラサラな髪も、緑色の瞳もあどけない笑顔も、どれもどれも魅力的で好きだ。
だけどディーが絡んでしまうと私は、口を出さずにいられなくなる。2人が仲良く話していると、私は我儘になってしまうんだろうか。邪魔をしたくなる。
そこは私の場所!と心の中で叫ぶ感情が生まれる。 なんで?私はディーの彼女でもないのに、そんな事言える立場ではないのに、でも感情が抑えきれないでいる。 前の場所ではこんな事無かったのに。
「前はこんなんじゃ無かったのになぁ・・・。」
一人呟く声が寂しく心の中で木霊する。 そう前の私は、こんな感情を持っていなかった気がする。
私は早くに母を病気で亡くしてからずっと一人だった。上と中の兄は名前を呼ぶ事すら許されず、姉に至っては存在すら忘れ去られていた様に思えた。私の家族の中では出来損ないと言われた。
私は魔族だが角が無い。正確には角は身体の内部にある。その一部が私の鎖骨に浮き出ている。
理由はわからないけど、私の身体の骨と角は一体化しているらしい。魔族は頭部に角があるのが特徴でその角の長さや太さで強弱が決まってしまうと言われている。 そして角が見えない私は、魔族そのものを否定されている。魔族でもなく人間でもない中途半端な出来損ないっていう奴だ。
ただ私には普通の魔族ともう一つ違う所があった。それは魔力の量だ。魔法は使う者は魔力の量で決まるといっても過言ではない。どんなに詠唱が正確でも魔力の量が少なければ効果は発揮されない。
私は普通の魔族が使える魔力の量の10倍は扱える量を持っている。
本来ならそんな莫大な量を持ってると精神が崩壊し肉体が滅んでもおかしくない状態だそうだ。
魔術を主に研究している者たちの話だと、体中に角がその莫大な魔力を貯めていても精神などを崩壊しないようにしているらしい。 しかしこのような事は前例がなく対処も出来ない状態だった。
魔族にとって角はとても大切な場所なのだ。角は魔族の象徴であり力の象徴でもあり誇りでもある。
それがわかったのは10歳を過ぎての事だった。
王家の者が角が無いなん恥もいい所。内政にも影響が出かねないと言う理由で私は居ない者とされていた。
私は常に一人だった。一人で起き、一人で食事を取り、一人で勉強をする。食事などの最低限はメイドたちが持って来てくれるがほとんど会話など無かった。
孤独のあまりいっその事殺してくれと願った事もあった。ベットの中で何度も泣いた事もあった。
自分の身体を何度恨んだか、数を数えるのも馬鹿らしいぐらい恨んだ。
一人で居る内に感情なんて物が無くなっていたような気がする。
私が10歳の時に変化が起きた。私の魔力の量が他の魔族より遥かに多いと分かったのだ。
父は政略結婚の駒のしようと考え、私に知識と教養を与えようとメイドや教師を配置づけた。私はそれを利用し、力をつけ王家を捨てて市井に下る決心をした。 一人でも行けていけるように・・・と。
だけど父はそれを実行しなかった。いや出来なかったと言うべきだったのだろうか、病に倒れたのだ。
そして父が本格的に病で動けなくなったのは私が18歳になったある日、それはある日の事だった。
突如兄弟が集められ、王位継承をかけてダンジョンの深部へ行くというものだ。
深部へ行ってそこのとある魔物を討伐し戻ってくるという、力を誇示するには単純で明快なものだった。
私は王位に興味がないので最初参加する気は無かったのだが、参加しなかった場合は国家反逆罪として投獄されると言われ渋々参加した。
そしてあの日、私は兄弟の罠に掛かり魔法をかけられた。 そう封印の魔法だ。
私は彼等に問いかけた。何故私にこんな事をするの?・・・・と。
『お前は魔族の象徴である角が無い、これは王家の恥なのだ。だからここで死んで貰う。だがその前に私達の役に立ってから死んでいけ。これは命令だ。』
彼等の理由は私を使って何かをしようとする予定だったらしい。
そして呪いは第2王子によってかけられた魔法だった。
彼等の嘲笑う顔が今でも忘れられない。あの時の言葉も・・・・
そう・・・私は 「ヘイ!そこの可愛いエルフのお嬢さん。一人で暇してるなら俺等と遊ばない?」
私が目を閉じ、苦い思い出を思い出している所に、ぶち壊してくれる存在が現れた。
一人は狼の獣人だろうか。立ち耳で茶色の髪、見るからに軽そうな獣人。もう一人は人間だと思うが、見た目からして冒険者のようだ。 これでナンパをされるのは3人目だ。また私は適当にあしらう事にした。
「悪いけど人を待ってるの、他を当たって頂戴。」
「つれない顔も可愛いね~。剣を見る限り冒険者だろ?見ない顔だけど俺等のパーティーに入るかい?君なら大歓迎しちゃうよ~。」
「そそ俺等パーティーランクDだからそこそこ強いよ~。うちのリーダーにも掛け合ってあげるよ。」
その軽いノリと声が、私を苛立たせる。今日はディーが私達の武具を製作するから休みになってる。
暇を弄ばしていたとはいえ、こんな軽い扱いを受けるつもりは無かった。
何よりその下心満載の卑下た笑みは不快な事極まりなかった。
「私は今のパーティーから抜ける気はないの。お願いだから邪魔をしないで頂戴。」
邪険に扱っているのにこの2人組は中々諦めてくれない。2人掛かりだからだろうか、強気で攻めてくる。
「そんな事言わないでさ~俺等と一緒に遊ぼうよ~。そんな剣を置いてさ。」
その言葉と同時に、2人組の1人は私の剣を触ろうとしていた。
「その剣に触れるな!!」私は激怒し咄嗟に伸ばした手を打ち払った。
「そんな剣だと!これは私の為に作られた唯一の剣だ。気安く触るな!」
この剣は彼と彼の師匠が私の為だけに作ってくれた宝物だ。この剣のおかげで私は彼の隣に立てる。それを見ず知らずの変な輩に触らせるなんて、絶対にあり得ない!。
「この女、こっちが下手に出れば調子に乗りやがって!。」
相手は私に手を打ち払われたのがよっぽど面白くなかったのか、本性を現してきた。
「黙って俺等の言う事を聞いていれば、痛い目に合わなくて済んだのに、お仕置きが必要だな。」
「だな、俺等に歯向かうとどうなるか身をもって知ってもらおうか。その身体で。」
2人は自分の武器であろうか、剣を抜き私に向けてきた。有利だと思っているのか、それか私が素直に従い彼等の玩具になる事でも想像しているのだろうか、再度卑下だ笑みを浮かべてきた。
もう私は我慢する気にはなれなかった。私は彼等に向かって愛剣を即座に抜き払った。
「なんだ今の?剣を抜いたのか? おい女、謝るならいまの・・・・。」
言葉の途中で甲高い何かが落ちる音が聞こえた。それは相手の剣の一部。
相手は声を出す事が出来ず、現実を受け止めきれないでいた様に見えた。
「次は武器よりもその手を切り離してあげましょうか?。」
「ひ、・・・お、覚えてろ!。」
先程までの勢いも吹っ飛び、ありきたりなセリフを吐いて逃げ出す2人をため息一つついて見送った。
そしてまた私は物思いに耽ってる。
私はどうすればいいか答えが出ない。レミィちゃんみたく正直に好きと言えばいいのだろうか?
でも、私はそんな事が言えない。私は素直になれないでいる。
もしこの気持ちを彼に受け止めて貰えなかったらと思うだけで、不安に駆られる。
そう、私は恋には臆病な兎なのかもしれない。後輩兎は積極的なのに・・・・
そっと私は呟く
「ディー・・・・私はどうしたらいい?。」
「そうだな・・・取りあえずここで一緒に軽く食べたら、夕食の材料を買いに行こうか。肉だけじゃ飽きるし。それに野菜も買って来てと頼まれたし。」
「!!!ディー!いつからそこに?」
「え?今さっき。近くに寄ったらどうしたらいいって言うからてっきり気づいているものだと?。」
突然現れた思い人に私は慌てふためく
「ってかどうしてここにいるの?。」
「え?ああ装備造りも一段落してお腹が空いたからね、そしたら工房でレミィちゃんに、ここのカフェを勧められたんだ。そしたらリリアが居たから声をかけたんだ。」
ディーはレミィちゃんに言われるがままにこっちに来たのか。うちの兎さんは気遣いも上手らしい。
少し憂鬱になりそうだ。
だけど今はこの2人の時間を楽しんでもいいのかもしれない。
「そう、じゃぁ私も少し食べたら一緒に買い物付き合うわよ。どうせ暇だし。」
「そうかありがとう。夕食は何か食べたいものあるかい?。」
「断然クレープよ!。」
「それは夕食にならないよ。デザートで作るから手伝ってくれ。」
「そうね、夕食後に作りましょうか。みんなで。」
私は今、この時間を楽しもうと思った。 彼と2人でいる時間を・・・この時間だけは憂鬱にならなくて済みそうだ。
願わくば・・・何時までも・・・
――――――
「ふふ、恋に臆病な先輩兎さんにはもっと頑張ってもらわないとですね。」
遠くから見つめる兎の獣人は、上機嫌で耳を弾ませながらその場を後にした。
54話を投稿予定だったのですが、大きく編集の為、先にこちらを投稿させて頂きます。




