第53話 10階
休憩後、10階へたどり着いた5人は女王蟻の居るべく場所へと突き進んだ。
10階は他の階とは少し内部が違うのか、いくつもの分かれていた道が纏まり大きな道筋になっていた。
「この奥が女王蟻の居る場所です。準備はいいですか?。」
レミィが注意を促す。
「ああ、いつでも行ける。レミィちゃんは女王じゃなくて兵士を惹きつけくれ。その間に女王2人で倒してみる。」
「わかりました。可能な限り兵士蟻をひきつけます。女王蟻は兵士より硬くはないですが、大きさもありますので気を付けてください。」
「ああ、わかってる。それと兵士蟻も生み出すんだろ?大丈夫だ、今度は時間をかけずに一気に畳みかけるさ。」
ディードとリリアは互いに頷き準備を整える。しかしレミィが首を傾げ問いかけてきた。
「あれ?ディードさんとリリアさんはここのダンジョン初めてですよね?他のダンジョンで女王蟻と戦った事あるんですか?。」
「いや他のダンジョンじゃなく、ここのダンジョンで女王蟻を倒したんだ。」
「え?女王蟻は10階の固定ボスですけど?。」
レミィはさらに首を傾げ疑問を投げかけた。彼女の知る限り女王蟻は10階に潜むボスとして君臨している。しかしレミィを助け出したあの日、6階でディードとリリアは確かに女王蟻と対峙していた。だが彼等は分裂したダンジョンコアによって召喚された女王蟻がまさかダンジョンの固定ボスとは知る由も無かった。
「んーレミィちゃんを助ける時に居た、兵士蟻を延々と生む一回り大きい蟻なら6階で遭ったよ。あれには苦労したけど、今回は3人しかもジロエモンさん達もいるし、なんとかなるよ。」
「なんとかするって・・・あの技はダメよ?ディー。」
「分かってるって、アレは切り札。今回は無し危なくなったら逃げる。これでいいか?。」
「わかればよろしい。そんな訳でレミィちゃん頑張ろうね。」
「え?は・・はい・・?。」
2人の話について行けず疑問が残るレミィだったが、正面から来る蠢く気配に警戒を促す。
「来ました!多分偵察の兵士蟻だと思います。これを倒したら一気に進みましょう。」
レミィの声に釣られ面々が無言で頷く。 彼女の言う通り、兵士蟻が3匹気配を感じたのか歩み寄ってきた。
3人は一気に飛び出し、向かって来た兵士蟻を一気に片付け女王蟻の待つ大部屋へ駆け抜ける。
突き進むと待っていたのは大きな空洞の奥にひと際大きく待ち構える女王蟻だ。兵士蟻の軽く2倍以上ある大きさでゆっくりと3人を見据えていた。
女王蟻は3人を見つけると自分の配下に命令を下すべく、口の牙を交差させギシギシを音を送る。
兵士蟻はその音に反応しこちらに向かって来た。その数は7匹。
ディードとリリアは迷わず突き進み、襲い掛かる兵士蟻を1匹づつ一撃で葬る。レミィは2人の為に女王蟻の左右に階段の様に【兎の盾】を水平に4枚展開する。その為レミィに向かって来た兵士蟻の対応に少し遅れを取る。 レミィ自体その対応には問題なく始末出来るが、奥の2匹を引き付けるには間に合いそうになかった。 彼女は3匹の兵士蟻の攻撃を回避しながらも【兎の盾】を維持していた。
(思ったよりも数が多い、ここままだとジロエモンさん達に・・・・)
レミィは自分の心配よりも全ての兵士蟻を引き付ける事が出来なかったに焦りを感じていた。
3匹の兵士蟻はレミィを喰らうべく我先にへと仲間を押しのけ噛み付こうとする。それが彼女が攻撃に転じる事が出来ずにさらに焦りを生み出そうとしていた。
だがそれも杞憂に終わろうとしていた。 引きつけ損なった2匹の片側から小さな炎が立ちあがった。
立ち上がらせたのはジロエモンだ。彼は自作の魔道具を兵士蟻に投げつけ小さなダメージを与えていた。
「こっちの2匹は任せろ!お主等3人は女王蟻を頼む。」
「がんばるにゃー。」
「ララ!やるぞ。」
「分かってるにゃ!。」
ララは自分の背負っているリュックから縄を取り出した。その縄の先端には石が括りつけられている。
彼女は縄を兵士蟻の首に投げつけ行動を阻害していた。
「ご主人様1匹は止めたにゃ!早く。」
「分かってるわい。これでも喰らえ、『漣斬り』。」
ジロエモンは愛刀、霧雨を抜き出し一気に飛び掛かる。刀は左右に高速で振られ、その姿は小さな波を切り刻むかのような動きをしていた。
高速で斬られた兵士蟻は3つに分断される。すかさずジロエモンは、ララが縄で行動を阻害していた兵士蟻に突きをねじ込んだ。 正面からねじり込まれた兵士蟻は魔核を貫かれそのまま息絶える。
「さすがご主人様にゃ。」
「当然だわい、ララもうひと踏ん張りじゃ。アイツ等の邪魔にならんように援護に行くぞ。」
「はいにゃ!。」
ジロエモンとララはレミィの方へを加勢へと向かって行った。
一方ディードとリリアは意外にも苦戦を強いられていた。原因は女王蟻の蟻酸だ。女王蟻は2人を危険と判断し即座に兵士蟻を生み出していたのが、2人に即片付けられてしまう。逆にこれが仇となり女王蟻はディード達を近づけさせないために蟻酸を放っていた。そして蟻酸を放つ一方で牙を交差させ何やら合図を送っている。
「ああ、鬱陶しい迂闊に近づけないし折角レミィちゃんが作ってくれた【兎の盾】も壊されちゃってー!。」
「ああ、6階の時の様に次々と生み出してくるってだけじゃなかったな・・・。それに牙を交差させ何か合図のようなものを送っている所を見ると、救援だなアレ・・・。時間をかけると背後から蟻が出てくるな。」
「挟み撃ちは勘弁して欲しいわね。そうなると撤退かしら?。」
「いや、一気に行く。俺が壁を作るからそれを足場にして首を狙ってくれ。」
「わかったわ。」
リリアの了解と共にディードは女王蟻に【火球】を打ち込む。女王蟻はそれを避ける事無く蟻酸で応戦する。2つは打ち消し合い煙となる。そこへディードが一気に近寄ってきた。さらなる蟻酸をディードに放ち彼そのものを溶かそうと狙う女王蟻だったがその策略は叶わなかった。 放たれた蟻酸は彼に届くことなく目の前で止まったいた。
『【氷壁】。』ディードの正面に彼と同じぐらいの背丈の氷の壁が出現する。それを維持しつつディードは次なる魔法を唱えていた。
『大地よ、堅牢なる大地よ。我が盾となりて敵を阻み給え。【石壁】』
ディードの背後に突如斜めに生える石の壁が出現しディードの背丈を遥かに超え彼の約2倍の長さで止まる。
「リリア今だ!。」
リリアはディードの出した【石壁】に飛び乗り、そして駆け抜け女王蟻の身体目掛けて一気に斬り込もうとしていた。
しかし女王蟻は突如出現した石の壁に驚き後退をしてしまった。それを見て慌てたリリアが石壁の端で飛び込み距離を詰めて薙ぎ払おうろしていた。
「喰らいなさい!【チャージ】。」 彼女愛剣は魔力を一気に吸い込み2倍近い長さで女王蟻を捕えようとしていた。
だが、横払いに一閃されたリリアの【チャージ】は女王蟻の片腕を斬り胴を掠めた程度で終わってしまった。
(まずい!浅かった。これじゃ反撃がくる!。)
リリアはこのまま落下し、女王蟻の反撃を一番喰らいやすい状態になってしまう。そう彼女は危惧したのだが、彼女は落下する前にもう1つ足場が現れた。そう【兎の盾】だ。
「お待たせしました!。」
背後からレミィが【石壁】を駆け抜け応援に辿り着いたのだ。
「ナイスタイミングじゃない!レミィちゃん。」
彼女は突然現れた足場を巧く踏み込み、もう1度女王蟻の頭部目掛けて狙いを払った。
「はぁああああ!これで終わりなさい!。」
リリアはさらに奥深くに入り込み女王蟻の首を刎ねる事に成功したのだ。
「お疲れ様皆、無事で良かった。」
「そうね、女王蟻も片付いたことだし、次に進む?それとも戻る?。」
「そうですね。私としては1度戻る方がいいかもしれないですね。目的は装備の素材集めですし、一旦整理も含めて。」
「ワシも戻るに賛成だな。これ以上素材を渡されても加工する前に物が傷む可能性もあるしのぅ。」
「お腹減ったにゃ・・・。」
「そうだな・・・それじゃ今回はこれで一旦戻ろうか。蟻の素材も結構手に入ったし、色々と作れるからまずはこれで戻ろうか。」
ディードは討伐した女王蟻達をアイテムボックスに収納し、帰路へと向かうのであった。




