第52話 10階への道のり
ディード達の素材集めは8階にて一旦休憩となる。
理由はジロエモンとララが3人の速度について行けず、息を切らしながら徐々に距離を離されそうになっているからだ。
「お主等はバケモンか?ほぼ8階まで止まらずに進み続けるとか、本当にランクFのパーティーか?。」
「それにアイテムボックス持ちなんて卑怯にゃ。アイテム積み放題だにゃ・・・ウチは次お留守番でいいにゃ。」
息を切らしながら文句を言う2人に対し、リリアは割と酷い事を口にする。
「ジロエモンさんはドワーフよりだから手足が短く動きが鈍いといえ、ララあんたは仮にも獣人なんだからもっと体力あるでしょうに。これまで鍛えた事無いの?。」
「ぐっ・・・悪かったな、手足が短くて動くが鈍くて。そんでもって疲れやすくて。」
「猫獣人だって疲れるものは疲れるにゃ・・・・。」
「だからって貴方はダンジョンを舐めてませんか?ジロエモンさんだって自分の身を護る為に武器を携帯しているのに、貴方はポーターのリュックより小さいリュック。それしか持ってないじゃないですか?。」
呆れて文句をいうのはレミィだ。ララは確かにポーターのリュックよりは小さい。
「それについてはご主人様に文句を言ってくれにゃ。」
「なんで俺に文句なんだよ。自分でやった結果だろう・・・。」
やっと息が整い始めたジロエモンが少し間を置いてから語り出した。
「こいつはな、普通の奴隷じゃなくて特殊奴隷なんだよ。犯罪奴隷の下の奴隷で、まぁ借金奴隷と同じ立場だな。犯罪奴隷になる所を俺の財産をほぼ全て差し出す代わりに特殊奴隷にして貰ったんだ。それで体力も能力も今は低下してる状態なんじゃ。唯一逃げ足だけは低下していないのが逆に腹立つんだけどな。」
この世界の奴隷制度は、犯罪奴隷、借金奴隷、隷属奴隷の他に一時的な処置として特殊奴隷などが存在する。
例えば、家族を人質に取られ犯罪を犯した場合、やむを得ない事情から犯罪奴隷ではなく特殊奴隷になる事がある。この場合は温情として一定期間の隷属奉仕または対価を支払えば解放される仕組みになっている。特殊奴隷は、罪を償う期間や同じ犯罪を犯さないように制限をかける事が出来る。
ララの場合は、ジロエモンが財産を差し出す代わりに犯罪奴隷から特殊奴隷に変更して貰えたようだが3人には疑問が一つ残る。それは・・・
「そこまでしてララさんを庇う理由がわかりませんね。」
レミィは独り言の様に呟いた。それもそのはず、全財産を差して出してまでもララを庇う理由は3人には理解できなかった。
「そりゃ~おめぇ・・・その、なんだ・・・嫁さんを見捨てるような薄情な奴にはなりたくなかったからよ。」
ジロエモンが恥3人の疑問を解き明かすべく真相をは恥ずかしそうに語り、頬を指で掻き照れ臭そうにしている。
「それはそうですね・・・ジロエモンさんもりっぱ・・・は?。」
「へ?」
「え?」
「にゃははは。」
「「「ええええええ!!。」」」
3人は一様に驚き動揺を隠せないでいた。それもそのはず、ララは見た目は猫獣人だが容姿は男性にしか見えない。今のララの容姿は、黒いショートカットに所々茶色の毛が混じっている髪、体格は大きくはないが、胸がほとんどないので男性と見間違えるのも無理は無い。2人の関係を見る限りだと夫婦というよりも主従関係にしか見えなかったからだ。
「そ、それじゃ男同士の結婚だったんですか?」
「違うわ!。今は見た目はこうだが、特殊奴隷になる前はちゃんと女性だったんじゃ。封印の都合で色々と制限がかかっておるんじゃ。」
ジロエモンがあわてて弁明する。ディード、レミィは驚きはしたが一応納得はしている。
その後も3人は騒がしく話をしていた。
だがリリアだけは「封印。」というその言葉だけに過剰に反応に身を強張らせていた。
無意識に身体を強張らせるリリアにディードが近づく、彼女もまた封印によって魔法が魔法が一切使えない状態を知っているのは彼だけだった。
その封印は自分の兄弟によって施された物で、リリアにとっては苦すぎる過去である。
「リリア・・・大丈夫かい?。」
「ええ・・・少し過剰に反応しちゃっただけ。大丈夫、もっと強くなって封印ぐらい打ち破って見せるから。」
リリアは心配するディードに対し気丈に振舞い笑顔を見せていた。彼女も心配してくれたのが嬉しかったのか恥ずかしかったのか、照れ臭そうに騒いでいる3人の中に入っていく。
「そんなに元気があるならまだまだ次の階層いけるわね。水分取ったら行くわよ。」
「待ってぐれ~。そんな殺生な~。」
「酷いにゃ。横暴だにゃ。」
「それ以上騒ぐと魔物が集まって来ちゃうでしょ?・・・・・・ってほら来ちゃったじゃない?レミィちゃんも騒ぎすぎよ。」
「あぅぅ。つい・・・ごめんなさい。」
「ほら、謝るのは後でも出来る。今は魔物に集中して。ディー!行くわよー。」
空元気を振りかざし、近寄ってくる魔物に対峙するリリア。 それに釣られディードも魔物に向かって行った。
(封印・・・か。特殊奴隷とはいえ、それだけの事が出来るのであればその逆も出来るかもしれないな・・・ここで力を付けたら海洋都市に出向くのもいいかもしれないな。)
強い制限をかけられるのであれば、その逆の制限を解除できる方法もあるのでは?と心の中で思い、リリアの為に次なる目的を定めようとするのであった。
「酷い目に遭ったにゃ。」
「まったくだ。・・・無駄に体力は使うし、言わんでいい話をするし、戦闘は実りがないし散々だったのう。」
ディード達は現在9階層に辿り着いている。8階層ではスケルトンと兵士蟻の混成であまりいい実りが無かったのだった。スケルトンは胸部の中にコアがあるのだが、それが弱点と同時に破壊するとただの骨だけになってしまうので骨はもろく素材として使い道がない。それに魔核も大して売れないと、まさに骨折り損のくたびれ儲けだったのだ。
「!正面から来ます。気を付けてください。」
レミィが警戒し皆が戦闘態勢に入る。正面からでてきた魔物は、兵士蟻に羽が生えた【飛蟻】と、赤い角が特徴の【火牛】だ。
「この2匹は魔法を使ってきます。【飛蟻】は風魔法【火牛】は火魔法です。威力はそれ程でもないですが、気を付けてください。」
レミィの言葉に警戒し正面から来る数匹に対峙していた。彼女の警告通り【火牛】は挨拶替わりと言わんばかりに身体を光らせ【火球】を放った。 レミィは即座に【兎の盾】を繰り出し【火球】を防いだ。
彼女はお返しとばかりに【兎の盾】を数枚水平に展開しそれを足場にして跳躍、跳んでいた【飛蟻】の羽や身体を斬り地面に落とす。
すかさずディードとリリアが落ちた奴らを斬り刻み、次々に畳みかけて行った。
「ここいらの魔物も相手にならないとは・・・ワシ等じゃ素材集めにも高価で買い取りせんといかんのに・・。」
「でも、コレも試せたし色々と収穫はあったでしょ?」
「たしかに9階でも通用するのは確認できたしな・・・。」
ディードが手にしている物は、ジロエモンが迷宮都市グラドゥに来てから作った刀だ。先日の戦闘でディードが武器をダメにされた替わりにとシロエモンから取りあえずと渡された武器だ。鉄の刀にもかかわらず、9階の敵にも刃こぼれしない刀は見事な仕上がりだった。
「そろそろ10階の階段が見えてくる頃です。ここで休憩しましょう。」
「そうだね今度はちゃんと休憩しようね。ディー!私甘い物食べたいんだけど?。」
「それウチも頂くにゃー!。」
女性陣は緊張があるんだかないんだかわからない状況下だが、ディードは次の階層主の前に英気を養おうと思い、3人の中へ入っていく・・・・。




