第51話 5人編成
「そりゃ信じろって言うのは無理がある。」
「ですよねー。」
都市の郊外で夕食を5人で囲みながらディードとジロエモンの話は続いている。それはディードの過去やジロエモンの父、モトエモンの話にも繋がった。 ちなみに漢字で書くと、ジロエモンは次郎衛門、モトエモンは元衛門になる。
夕食は前に狩った大猪を焼いた物とパンとスープだ。アイテムボックス持ちであるディードにとっては割と質素なのだがジロエモンとララの2人は飛びつくように食べていた。 話を聞くとここ数日まともに食べていなかったらしい。
ディードは簡単ではあるが、自分はこの世界では無く他の世界で生を終え、記憶を持ったままこちらに転生したジロエモン達に伝えた。当然だがファグとアイリスの事は秘密にしてある。全てを打ち明けるにはまだ早いと踏んでの事だった。 さらにディード(福々山 高樹)の記憶だと、元衛門は200年以上の前の人間で、原因は不明だがこちらに流れ着いたのではないか?説明したが、とても信じられるわけで訳ではなく、最初の会話となる。
「それは信じろって言う方が無理がるわよディー。」
リリア頬杖を突きながらジト目でディードの方を見ていた。 過去にもリリアには一応同じ事を伝えたが未だに信じ切っていないように見えたが・・・ただ
「まぁ、ディーが色々と物知りと力を持ってるのは知ってるけどね。じゃないとアグランの街で、あの桃缶を食べれなかったし・・・・またアレ食べたいなぁ~。」
リリアはアグランの街で、同じ世界からの転移者、優一の屋敷で桃缶を食べていた事を思い出していた。その甘さを思い出し顔が少し緩んでいる。
缶詰という技術はまだこの世界では見ていない。あの不思議な食べ物があったからこそリリアはディードの事を信じているようにも見えた。
「でも私はディードさんの言う事を信じます。だってこの力を得たのはディードさんとリリアさんのおかげですし、何よりディードさんはそんな盛大に嘘をつく理由がありません。私は信じます。だって・・・・私の旦那様なのですから。」
全てを信じるとを唱えたのはレミィだった。彼女はディードの転生の話を信じ切っている。その理由は彼女のスキルでる【兎の盾】と、その扱い方を教えたファグの存在を唯一この中で知っているからだ。
ディードのアイテムボックスを通じて精神世界に関与し、時々力や知識を与えている存在であり、精神的な親代わりであり、常に娯楽と食事に飢えているファグ。 時々食料をくすねたりするのが難点だが・・・
一応獣人、エルフ、ドワーフの間では有名(?)な神らしい。数百年前に邪龍を打倒し神へ昇華したと伝えられている。ただファグとアイリスはその事自体にはあまり話さないので本人が居るのにも関わらず、伝聞による話を聞いているだけという、ややこしい状態なのだが・・・・
「れ~みぃ~ちゃ~ん、それはやめときなさい。あんまり言いふらしているとディーがその気になっちゃうでしょ?。」
「え?私はそれを望んでおるんですけど、リリアさんはダメなんですか?。」
「ダメじゃないけど、その・・・なんて言うか・・・あの・・ぁぅ・・。」
何か口に挟まったようにモゴモゴと話すリリア。相変わらず恋愛ごとには口は挟むが大きなことは言えずレミィを諫めるのに困るリリアだったが、その話を遮ったのは意外にもララだった。
「お代わりくださいにゃ!。」
ララは遠慮することなく夕飯のお代わりを要求してきた。先程から4人の話は耳に入れず、モクモクと夕食を食べている。それに対し、レミィは呆れたように冷たい反応で答える。
「まだ食べるんですか?少しは遠慮ってものを知ってください。さっきから貴方は食べてばかりじゃないですか?こっちはまだ誰もお代わりなんてしてないんですよ?。」
「食べられる内に食べるのが基本にゃ、それにまだまだお腹は一杯じゃないにゃ。まだまだ入るにゃ。」
「そうですか・・・・それなら先程より強烈なのをお腹に食べさてあげましょうか?。」
「や、やっぱり、もうお腹一杯だにゃ。ご馳走様でしたにゃ・・・。」
ララはレミィの一言に震えあがり、要求したお代わりを取り下げた。そしてレミィから喰らった一撃を思い出したのだろうか。お腹を隠す仕草をしている。
結局あの騒動の終止符をを打ったのはレミィだった。
調子に乗ったララがレミィの太ももにしがみつき、もう1度しがみつき直そうとして偶然にもレミィの尻尾と下着の部分に手を伸ばしてしまった。 レミィの尻尾は彼女自身自慢の尻尾でありそこを含め下着に触れられるという行為は、強引に手籠めにされるという行為に等しく、彼女にとって許しがたい行為であった。
その為レミィはこれに激怒しその場でジャンプ、怒りの低空ドロップキックをララの腹部に打ち込んだ。避ける事が出来ず直撃を受けてしまったララは、身体をくの字になり数メートル蹴り飛ばされた。
ララはその場で失神してしまうがレミィの怒りは収まらず、主人であるジロエモンへと向かう。
ディードから引き離そうと反対側からジロエモンも引っ張るリリアだったのだが、さすがドワーフの血を引くべきといった所か、彼女の力だけじゃ引き剥がせない。レミィから見れば、ディード、ジロエモン、リリアの順で3人が立っている位置が見える。そしてジロエモンに八つ当たりと言うべきか、奴隷の所業を主人に払わせるべきかの様にドロップキックをお見舞いするのであった。
そして涙目になりつつも真っ赤な顔で怒りレミィを落ち着かせるのに、リリアとディードは苦労していた。
2人はレミィによって気を失ってしまい、夕方まで目を覚まさないでいた。3人は放置する訳にもいかず、2人が目を覚ますのを待ちつつ夕食を作っていた。やがて2人は目を覚まし自分たちが行き過ぎた行動を認め素直に謝罪した。
この時既に都市グラドゥの門は閉まっている時刻であり5人で野営する事になった。
夕食も中ごろディードはジロエモンの父、元衛門の話を聞いて一人考え事していた。
(しかし1800年代の大地震あたりからこっちに来た元衛門さんも凄い災難だったろう・・・確か歴史には政安?だっけか安斉?の大地震だったような・・・それのどこかで時空震が起きてこっちに来たんだろうな。幕府のお抱え鍛冶師(刀匠)だったと言うからには技術もあった人だったんだな。出来れば話を聞きたかったけどもうこの世に居ないんじゃ無理だなぁ・・。)
「・・・ぉぃ、聞こえとるかい?ディードや?。」
「ああ、済まない考え事をしていた。」
ジロエモンの声に、我に返り応答するディード。途中からジロエモンの話が耳に入っておらず
「大丈夫か?話をもう1度言うぞ。頼みというか相談があってな。俺等はまだここに来て日も浅い。勿論金もない、ただ受けた恩を返したいんだが装備を作るって事で手を打たないか?ただ材料が無くて一緒にダンジョンに入って欲しいっていう更に無理を押し付けるようだけど、勿論加工の代金も取らないし気に入らなければ売っても構わん。それでどうじゃ?。」
「ああ、ウチ等もそれで構わないよ。それに一つ付け加えて欲しいんだけど、俺も鍛冶に参加させてもらえないだろうか?一応武器は作れるけど、防具や装飾とかも教わりたいしうちのメンバーの装備も充実させたいんだ。」
「そりゃこっちも大歓迎だ。こっちは刀以外の武器の技術は少し疎くてな、親父が刀ばっかりだったら他の武器には魔道具も少し扱える。朝、街に帰ったら早速素材集めをしたいんじゃがいいか?ダンジョンなら昨日から再開されとるぞ。」
「本当か!それはよかった。それじゃお互いの発展の為に。」
「ああ、契約成立じゃな。」
2人は拳を突き合わせた後、握手をする。 ジロエモン達は武具の素材を集め武具作成。ディード達はそれを補助し武具を作ってもらう事で契約が成立した。
実はディード、他の武具屋でも同じような事を頼んでは断られていた。理由は様々だが、基本的には部外者に自分の技術を盗まれたくないというのが本音だ。なのでディードはせめて鉄のインゴットや材料も分けて貰えないかと頼んでいたら、『仕事を盗る気か!』と怒られてしまっている。なのでジロエモンのとの提案はディード達にとっても願っても無い条件だった。素材が心許なかったレミィの双剣は、作ることが叶わず、武器屋で売っていた鉄の双剣を購入し彼女に渡すのであった。
「ディード達が欲しい武具は何かあるか?まずはそれを優先的に作らせてもらうぞ。」
「んー防具かな。俺は刀も欲しいけど、どうせなら作ってみたい。リリアはなにかあるかい?。」
「私は軽い防具が欲しいかな。レミィちゃんは?」
「そうですね・・・靴が欲しいですね。鉄の靴が。」
そう言うとレミィはララの方を見てさらに追い打ちをかけるように話す。
「悪い事する子猫にお仕置きする為に双剣だけじゃなくて、兎の蹴りも強化しておきたいので・・・。」
「悪かったにゃ・・・反省してるにゃ・・もうしないから許してにゃ・・。」
ララはレミィの言葉に恐怖を覚えたのか震えながらジロエモンの後ろに逃げ込んだ。レミィはそれを見て満足したのか飽きたのか、ため息一つついてからこう話す。
「冗談ですよ、これ以上はしませんよ。そっちがなにもしてこなければ。ただ、鉄の靴ではなく衝撃に強くて軽い靴があれば私ももっと動けると思うのでそれが欲しいです。」
レミィは自分の機動力をさらに生かす為に、靴が欲しいようだ。彼女自身も自分の能力を理解している。リリアは無難に今よりも丈夫で軽い防具を求めている、ディードに至っては完全に趣味の領域だ。
「わかった。まずは素材をダンジョンで集め、俺とディードとララで作成。気に入ればそっちの装備にダメならこの店で売って資金にする。これでいいか?」
「ああ、問題ない。臨時のパーティーだがお互い頑張ろう。」
「ああ、よろしく頼む。」
こうしてディード達は、鍛冶師ジロエモンとその奴隷ララを臨時パーティーに迎い入れ。互いの発展の為に共に行動するのだった。
翌日・・・・
「なんじゃこの3人は・・・・。」
「凄すぎてもう・・・ウチ等要らない子だにゃ・・・。」
ディード達のダンジョン探索は、その日のうちに7階まで到達、襲ってくる魔物を全て撃破しディードのアイテムボックスに片っ端から収納する。
その姿を見た2人は、ただただ茫然とするばかりであった・・・・。




