第30話 過去の産物
第30話です。よかったら見てやってください。
「なんで事するのかな~?」 リリアはまだ恥ずかしさが抜けておらず彼女の耳がまだ赤かった。
「すまない、テンション上がり過ぎた。」ディードもまた自分のしでかした行動を恥いていた。
ここに転移もしくは転生したのは自分だけじゃないと思うと、嬉しくて話したくて会いたくて仕方がなかった。 異国の地で同郷の人と会ったり、同じ言語で話しをするというのはなんとも心強く感じる。
「さてギルドに教えてもらったのがここだ。既製品の服でいい物を探そう。」
ディードは先程ギルドの人に教えてもらった服屋の看板を指差しリリアに伝えた。
「そうね、さっきのお返しに金貨1枚位の服を2~3着買ってもらおかしら?。」
「御冗談を、お嬢様・・・我が財布の中に金貨さんはご不在なのですよ。」
「そうだったかしら?それなら銀貨さんに頑張ってもらうしかねいわね。金貨分。」
「やめやめ。明日の宿代まで無くなりそうだ、勘弁してくれ。余所行きの服と日常の服を常識の範囲で買ってくれ。」
「あら残念、それじゃぁ~その常識の範囲で買い物させていただきますわ。」
リリアは先程のふくれっ面ではなく、上機嫌に店の中に入って行った。
店に入ると綺麗に飾られた服が一面に飾られ、試着用の服だろうか、ハンガーにかけられ綺麗に並べられている。 2人の入店に気づき、女性の店員がこちらに歩み寄ってきた。
「いらっしゃいませ、ようこそ。本日はどのような物をお探しでしょうか?」
「肌着の予備と、普段着とかありますか?。」
「それでしたら、まずはお客様のサイズを測らせていただきますのでコチラへお願いします。」
奥へと案内されるリリア。女性用のスペースだろうそこに連れられカーテンを閉められていた。
「お連れのお客様は、本日はいかがなさいましょう?。」ディードにも他の店員が話しかけてきた。
「今の子と同じ、肌着、普段着、と1つづつお願いしたい。仕立て済みの服で構わない。」
「畏まりました。男性のお客様はここでサイズを測らせてもらっても?」
「ああ、構わないよ。」 「ありがとうございます、早速服の上からサイズを測らせていただきます。」
その場でサイズを測ってもらい。 仕立て済みのと合わせてもらった。丁度いいサイズがあって良かったと胸を撫でおろすディード。 しかしリリアの方はまだ時間がかかるようだった・・・。
(どうして女性の買い物は時間がかかるかねぇ・・・これはどの世界でも共通なのか?)
しかしここで口に出して言おう物なら、後が怖いので黙っておくことにする。
やがてリリアは少しめかし込んだ服を着て戻ってきた。
白のブラウスに若草色のスカート、肩には淡い青色のストールだ。ただし・・・
「剣外しなよ・・・・」 ジト目のディード。
「これがないと落ち着かないのよ・・・」 ため息のリリア。自分の相棒とは離れられないでいた。
支払いを済ませる頃には辺りがすっかり夕暮れになっていた。時間的に夕食の時間だが大丈夫なんだろうか?軽く夕食を済ませるべきか悩んでいた所、屋台から香ばしい匂いが漂ってきた。焼き串屋だ。
「少し食べてから行くか?」 「賛成~♪。」
リリアは服屋をでてから上機嫌だった。 着替えも、気に入った服も手に入り気分は上々のようだ。
ディードは貰った報奨金などほぼ消えてしまったのが割りとショックだった。
串焼きを数本購入し、近くのベンチに座りながら食べる2人。オーク肉の串焼きは程よい塩気を帯びており、ビールがあれば・・・などと思い浮かべてしまう。
(蜂蜜酒があるけど合わなそうだし、これから人に会いに行くのに酒の匂いをさせているのは、人として最低だろうな・・・) 自制するディード、対するリリアはもう数本購入しようとしている。
「リリアまだ食べるの?」 「だって美味しいんだもん。」 鼻歌混じりで他の屋台を吟味し始めるリリア。渡した銀貨は半分程無くなっていた。
やがて満足したのか満面の笑みを浮かべ戻ってきた。 お土産付きで・・・
「そろそろ行こうか。」 「うん、ディードこれ持っておいて。」
「お土産じゃないのか。」 「半分はお土産、残りはまた今度食べる。」
持っていたのは最初に買って食べた、オークの串焼きとフルーツ数個だ。ディードは色々と突っ込みたい気分を抑え、アイテムボックスにしまっていった。
軽い(?)食事を終え、2人はユウイチ氏の元へ向かった。ギルドの人からの話だと、街の広場のゴーレム(トラック)の左の道を行った先にあるらしい。 2人は教えられた通りに歩み進める。
すると大きな門構えの屋敷にたどり着いた。門の前には手紙通り門番が常在していた。
「止まれ。ここはユウイチ様のお屋敷だ。要件が無ければ即刻立ち去られよ。」
一人は声を上げて警告を、もう一人はいつでも戦闘に入れるような動作を見せてる。
「お勤めご苦労様です。私達はユウイチ様より手紙を受けてここに参った者です。門番様に見せろと書いてあるのですがよろしいでしょうか?」 敵意が無い事を見せる為に、下手に出るディード。両手は上に掲げ、片手には手紙を持っている。 敵意が無い事が伝わったのか門番同士アイコンタクトで確認しあい武器を収めた。
「手紙を持った者が来るという話は聞いている。確認の為見せて貰ってもいいか?」
「ええ、勿論です。こちらはギルドから受け取った物です。」手紙を門番に差し出した。
読みはじめる、門番がもう一人の門番にも見せる。手紙とディードとリリアを交互に見ている。
(?、なんで交互に俺とリリアを見ているんだ?)
「サインは本物のユウイチ様の物だし、ギルド経由だから偽物ではなさそうだが・・・とりあえず案内はさせてもらう。付いてきて欲しい。」
門番の一人は、屋敷に案内してくれた。だが何故か警戒されているのもわかった。
警戒されつつも屋敷に案内され、着いた場所が応接間だった。至る所に品のより調度品があつらえられている。
座るソファーは深く腰掛けられ、適度な弾力と柔らかさを持つ高級品のようだ。
一方リリアは、落ち着かない様子だ。
「リリア子供じゃないんだから、落ち着いて。別に断罪される訳じゃないんだから。」
「ディードは落ち着過ぎなのよ、こんな部屋に案内されて落ち着かない方が逆にわからないわ。」
やや呆れ顔でディードの事を見るリリア。 そこは頑張って慣れてくれと心の中で呟くディードだった。
しばらくすると応接間のドアが開く音が聞こえた。 中に入って来るのは身なりのいい中年~初老にかけての男性とメイドさんのようだ。 やがて目の前に座りやや不機嫌そうに話しかけてきた。
「君があの手紙を寄越したディードか?」 何故か威圧されているディード
(なんでだろう?もしかしてタイミング悪かったのか?)
「初めまして、私はディードと申します。あの手紙を書いた本人です。」
「私の名前はユウイチ、ファーストネームは貴族ではないので捨ててある。だがウチクサだ。こういえばわかるだろう?」
「はい、わかりますそれd「目的はなんだ?金か?それともゴーレムか?」 ユウイチがさらに威圧的な発言をしてきた。 ただディードは一方的な態度に困惑するが、相手はお構いなしだ。
「まさかエルフの詐欺師が出てくると思ってもいなかったがな。」さらに威圧的な態度をとるユウイチ。
ただ、ディードは何故ユウイチが威圧的な態度をしてきたのかは理解出来た。
(あー、そっか。そりゃそうだ。忘れていたわ、日本人なんだもんな。)
そう日本にはエルフや獣人などの、画像や動画などはあったりするが、実物は存在しないのだ。
自分の失態とも取れる行動に少し後悔するディードだったが、気持ちを切り替える事に専念した。
「どうした?先に目的を言われて言葉にも出ないか?。」
「いえそんな事はありません。ただ自分の言動を少し訂正しようと思っただけです。」
「訂正?」 ユウイチは怪訝な顔でディードに問いただす。
「ええ、元を付けるのを忘れてました。元日本人です。ユウイチさん。」 その言葉にユウイチの額に青筋が立ったのが見えた。
「ほう、そこまで言うならばこれから出す問題に答えてもらおうか?おい、アレをここに。」
「畏まりました。」 ユウイチがメイドに声をかけると、メイドはすぐある物を持ってきた。それを受け取りテーブルの上に並べる。並べられたのは3つ。どこかの鍵、長方形で小さな突起がいくつもある片手で持
つ筒、そして円柱の金属製の小さな筒で紙に日本語が書かれている物だった。
「この3つはこの世界に無い物だ。元日本人ならわかっているだろう?私の前で使いこなしてみよ。」
ユウイチは自身満々に問題を出してきた。 これを解けるのは同じ世界に居た者にしかわからないからだ。
だからあえてユウイチは意地悪な問題を出してきたのだ。逆に言えば、それだけ苦労してきたのだろうと推測出来た。
「そうですね。取りあえず、クルマのキーは置いておいて、充電器と缶切りを用意してもらえますか?ユウイチさん。」
この言葉にリリアとメイドは疑問に思い、ユウイチはただただ言葉を失っていた。
使いこなせと言われたのに、他の物を要求してきたディードに2人は理解出来ていない。
問題を出した本人は、この意図がわかっていたのだ。
ユウイチはディードに「本物か?」と声を絞り出して聞いてきた。
「後は何が聞きたいですか?多分世代も同じぐらいかな?あーそうそう、怒ると髪の毛が逆立つ漫画とか、3代目の泥棒の漫画やアニメの話もしておきます?」 そうディードが問いかけると、ユウイチはソファーに深く腰を掛け、上を仰いだ。やがて彼の頬からは一筋の涙が流れてきた。
「訪ねてきてくれてありがとう。」 彼は涙ながらこう言った。
ちょっと小話( ・ω・ )
運動不足を自覚するこの頃、何となく逆立ちをしようとして一人DDTをかましたあの日。
仕事仲間の皆さま、わたくしは生きております。(そしてごめんなさい)
最後まで見てくれてありがとうございます。