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異世界転生幻想放浪記  作者: 灼熱の弱火 
石の涙
195/221

第183話 ゲートウォールの長い一日。その16

「私に成りすまし何をしていたか全て吐いて貰おう。」

「出来る物ならやってみるといい。 自分の剣技に勝てると思うのか?」


 不敵に笑う偽ライーザ。

 剣同士が激しくぶつかり合い、飛び散る火花と甲高い金属音が広場に響き渡る。

 右へ左へと剣戟(けんげき)が繰り広げられる最中、ライーザはふとある事に気づく。

 偽物のライーザはライーザの動き、剣をまるで鏡のように正確に放って来る。



「・・・これは?」

「ふふふ・・・どうだ?自分の剣技を味わう気分は・・・・。」

「私の剣をここまで・・・これが魔族の持つ固有能力という奴か・・・・。」

「正解、私の能力は『模写(コピー)』、貴女が何年も努力し磨き上げた剣技、技術をそっくり写し鏡のように映し出せる、私の能力よ。 どう?貴女の努力を模写される気分は?」


 笑みを浮かべ同じ剣戟を繰り広げる偽ライーザ、彼女の剣は徐々に速度をあげて行く。 

 徐々に速さに押され受け手にまわり始めるライーザ、しかし彼女は冷静に剣を合わせながら偽物の問いに応える。


「・・・そうね、以前の私なら驚き動揺して隙を付け込まれたでしょう。 でも貴方の剣技はひと月の私の剣・・・今の私とは全然別物よ。」

「フン・・・強がりを・・たったひと月で剣筋が変わる訳が無い!。」

「意外と変われるのだ。 人とは・・・死線を彷徨い、精神を蝕まれても、信じる仲間と確かな想いを心に宿せば、人は何度もでも変わる。 

 それは剣も同じだ。 人の技術、知識だけを奪い模写しただけのライーザ(過去の私)の剣なんて・・・このライーザ・スカーレットの敵では無い!?」


 気炎を吐きライーザの剣は徐々に受け手から攻め手へと変わっていく。

 先程まで笑みを見せていた偽のライーザがあっという間に押し返され形勢逆転される。 

 驚く偽ライーザ。


「・・・何故! 私の剣技は完璧に貴女を模写していたはず、ひと月でここまで成長したなんて信じられない。」

「それは模写だけで成長しない人にはわからだろう。 そこ!」

「くっ!?」


 繰り出されるライーザの剣技に偽ライーザは一瞬の隙を突かれ剣を弾かれる。

 その一瞬を逃さずライーザの剣は偽ライーザの右腕を斬りつけた。


「っつ!」

「その腕ではもう私の剣は防ぎきれることは無い。 早々に無力化して洗いざらい吐いて貰うぞ魔族よ。」


 大きく後退し体勢を整えようとする偽ライーザを追撃しようとライーザは更なる追撃をするべく距離を詰める。

 だが、そんな事はさせまいと偽ライーザは左手を自身の顔に被せる。


「ほざけ!? この程度の傷で私を捕まえようとなんて思い上がるな!? 人間如きが!!」

「なっ!?」


 怒号を上げたその顔はライーザの父であるハヴィの顔だった。

 瞬時に自分の顔から敬愛する父の顔へと変化したのを目の当たりにしたライーザ、本物じゃないと分かっていても彼女は自分の父に剣を向ける事を躊躇い動きを止めてしまう。


「くっ!?」

「甘いんだよ!?火よ、火の玉よ敵を穿て(うが) 火球(ファイヤーボール)」 ふぁいやーぼーる


 偽ハヴィの左手から放たれ火球を剣で斬り裂くその隙に偽ハヴィはさらに後ろへと後退する。


「・・・卑怯な・・・。」

「生死を掛けた戦いに卑怯も正攻法も無い! 相手を殺す・・・ただそれのみ突き止めれればいいのだ。 甘いんだよ、ライーザ・スカーレット。 

 フン、コイツ(ハヴィ)も愚かなだな。 

 民の為に働けど、その行動は裏目に出て報われない、民の為・・・民の為と言えば、自分の妻もないがしろにする、挙句の果てには妻に裏切られ今まさに死に体の状態だ。 哀れで無様な男だな・・・ふはははは。

 ライーザ、お前はこんな男に下らぬ愛情など求めているだ? 認められたい、抱きしめられたい? もっと親に甘えたい? ふ、下らない、下らない愛情という感情がこの状況を作り出しているのに、人間とは本当に愚かなのだな。」



 偽ハヴィは自分を貶しながら卑下た笑みを見せる。


「・・・まれ。」

「・・・ん?何か言ったか?」

「黙れと言ったのだ、下衆な偽物め!!」


 怒気に満ちた表情でライーザが吼える。

 無意識に彼女は言葉に魔力を込め放っている、その魔力が籠った言葉に偽ハヴィは言葉を詰まらせる。


「な・・・こ・・いつ。」


 彼女は剣にも魔力を込め飛翔剣を連発して偽ハヴィへと向かって行く。


「私の愛する人の顔で・・・・その顔で民を侮辱するな! 愛を侮辱するな!? 努力を、そして私を侮辱するなぁああああ!!!」


 無数の斬撃が飛び交う、偽ハヴィは思わずその怒気に当てられ思わず顔を怯ませる。

 反射的に懐から小さな四方形の魔道具を取り出し地面に叩きつける。

 すると目の前に半透明の壁が現れライーザの飛翔剣を防ぎ始める。


(奴の怒気に当てられ思わず結界石を使ってしまった・・・手が微かに震えている? まさか私は奴に恐怖しているというのか? 人間如きに・・・・!?)


 これまで恐怖に面した事はこの者が使える主のみ。

 それを馬鹿にして格下だと思っている人間に恐怖した事に自分自身が許せなかった。


「お・・おのれ!? 調子に乗るな人間如きが!?」

「人間を、人間の努力を!感情を!舐めるな!?」


 偽ハヴィは右手だけ違う人物のものへと形を変え魔法を繰り出そうと魔力を込めている。

 片手から膨れ上がる魔力に臆することなくライーザは結界の壁ごと斬りべく渾身の力をいれ斬り込む。


「無駄だ、この結界は人間如きの斬撃では切れん!?」

「これがお前が侮った人間の力だ! 大切断(ハイスラッシュ)!!」 


 ライーザの渾身の込めた斬撃は偽ハヴィが出した結界を斬る。

 そのまま斬り下ろした斬撃は偽ハヴィの右腕までも深く傷つけた。


「ぐぅ!?」

「浅い! もう1度!!」


 腕に深手を負わせたとはいえ、無力化させるべく追撃を入れようと剣を返し斬り上げようとする。

 だが、それと同時に北の方角から1つの魔法が撃ちあがり轟音が鳴り響いた。

 奇しくもライーザの視界に強烈な光が差し込み目を怯ませる。


「な、なんだ!?」

「ちっ! 時間切れか!?」


 ライーザの一瞬の隙を活かし偽ハヴィはその場を大きく後退する。


「時間切れだ、ライーザ。 この腕の傷は忘れんぞ。」

「くっ! 待て!」


 偽ハヴィは懐から丸い球を取り出しそれを叩きつける。

 すると彼の周りには大きな魔法陣が現れ、その陣から光りが溢れ始め魔法が発動しようとしていた。

 その魔法陣の中に拘束され身動きの取れない魔族達の姿もあった。


「させるか!?」

「おっと、コイツがどうなってもいいなら斬りかかって来い。」

「ぬぁ!?」

「ギャロップ!」


 偽ハヴィはいつの間にかギャロップの背後に立ち、彼から奪った剣を首元に剣を突き立てていた。


「ライーザ様! 私の事は構わず斬り捨ててください!」

「そんな事出来る訳が無いだろう!?」

「ですが、魔法陣が今にも発動しようとしています! やるなら今しか。」

「少し黙れ!」


 突きつけていた剣を逆さにし、柄でギャロップの顎を打ち上げる。


「主の命でこいつらを運ばないと行けないからな、これは人質(保険)だ。」 

「くっ!?」


 剣に魔力を込め飛翔剣を放とうにも、偽ハヴィはギャロップを盾として彼を突き出ししライーザを牽制する。



「・・・早く!」


 ギャロップの絞り出す声にライーザは迷う。

 だがその迷いは無情にも魔法陣の発動を許してしまった。

 赤と黒のコントラストを描いた魔法陣は周囲を大きく包み込み光を放つ。


水球(ウォーターボール)!」

音速の炎(フレイムレイ)!」


 発動した瞬間、ディードとリリアの魔法が魔法陣に当たる。

 だが時既に遅く、魔法陣の中には人がおらずもぬけの殻だった。


「遅かった・・・か。 すまない・・・。」

「いや、こちらこそすまない。 取り乱した上に、取り逃がす失態などと・・・。」

「あれは仕方が無いさ。 それに打ち上げられた魔法の元に行けばきっとさっきの魔族達もいるだろう。 ここが正念場だとう思う。行けるか?」


 ディードの言葉にリリア、レミィ、ライーザが頷く。

 気持ちを切り替え打ち上げられた魔法の元に掛けようとした時、ライーザは母ビクトリアを抱えた兄ビクトールの姿を視界に入れる。


「ビクトール様・・・行ってまいります。」

「・・・・必ず生きて帰って来い。 城で待っている。」

「はい・・・必ず。」


 軽く頭を下げライーザが駆け出す。


「それじゃ俺達も行こうか。」

「ええ。 行きましょう。」

「何処までも御一緒します。」

「待って~ぼくも行く~。」


 ライーザの背中を追う様ににディード達も広場を抜け北へと駆け出した。

仕事が繁忙期に入り更新が鈍くなりそうですが、なるべく週1で更新出来るように心掛けたいと思います。 


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