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異世界転生幻想放浪記  作者: 灼熱の弱火 
その手を放す者、掴む者
19/221

第19話 悪戯

19話ですよかったら見てやってください。


「ディードさんよい取引ありがとうございました。」

「こちらこそ、色々ありがとうございます。またの機会があればよろしくお願いします。」

「ええ勿論。私は2日ほど滞在し、また他の町に移動の予定ですので、御用があれば何なりと。」

「ありがとうございます。その時はお願いします。」


 笑顔で握手をし分かれる2人。やがて夜が完全に開ける頃、街の鐘が鳴り響く

 この町の鐘は3時間ごとに鳴るらしい。朝の鐘から夕方の鐘まで約3時間間隔で鳴ると教えてもらったのだ。



 スーレイ達と別れを告げ、再び門の前に並ぶ2人。門が開き順に並んで自分達の番となる。

「む、昨日エルフ族の2人か、昨日も言ったが()()()という兵士は居ないぞ。」

「ええ、どうやら勘違いのようでした。同じ兵士の装いの方に騙されたのかしれません。その方を探してみますが、お聞きします。同じ兵装の方は街にいらっしゃいますか?」


「それはあり得ないな。この格好は、街の兵士である象徴だ、同じ装備は基本的にさせない。」

「そうですか、ありがとうございます。取りあえず、20銅貨用意しましたので許可証をお願いします。」

「了解した。しばしまたれよ。」 料金を支払って待っている間、遠くから妙な視線があった。

 昨日の奴だ。取り巻きが3人位でこちらを見てニヤニヤしている。

わざとやっている所を見ると確信犯らしい。証拠がなければバレずに押し切れると思っているらしい。

(ムカツク奴だ・・・。)

ディードは顔には出さない様にしていたが内心穏やかでは無かった。なので昨夜のリリアの提案をそのまま実行に踏み切る事にした。


 取りあえず、人頭税を払い許可証が無いと動くに動けない。ここは我慢しておこう。

「これが許可証だ、一月10銅貨で、ギルド関連とかに加入していないと一月後にまた徴収、支払いが出来なくなると牢に収監されるから気をつけよ。」  「ありがとうございます。」


 その許可証は木の板に数字が書かれていて、小さな魔石を埋め込められていた。偽造防止だろうか・・・

 2人は許可証を受け取る。これが無いと街も歩くのに面倒な事になる。

 さて、と・・・

 門をくぐり抜け、城壁の内側の詰め所に近寄る2人、何かを探す振りをし、例の連中へと向かう。


()()()さん、()()()さんじゃありませんか!探しました。昨日のエルフです。」

 わざと大声でワドブに近寄るディード、リリアもそれに続いて来る。

「ワドブさん探しましたよ。昨日待っていたのに門が閉まるまで待ってたのに、換金に時間がかったのですか?それとも・・・「やかましい!」 ディードの声をかき消すようにワドブと思わしき兵士が怒鳴る。


「俺はワドブじゃねー!人違いだ、あっちに行きな、」手で払うワドブ、だがディードが食い下がる。

「ワドブさんじゃないんですか?姿はソックリですが違うんですか?私の()()()はどこにやったのですか?」


「うるせーよ!知るかよ。預かり証もないだろう?第一俺はワドブじゃねーって言ってんだろ!これ以上騒ぐと牢にぶち込むぞ!。」

 ワドブは大声でディード達を蹴散らそうとする。周囲の目が次第にこちらに集まってきてるのもわかる。

 やがて詰め所の奥から数人の兵士が現れた。


「その声は()()か?何詰め所の前で騒いでおる!何事だ。」声の主からすると上司なのか、堂々とした恰好で、白髪の兵士だ。

「いえ、兵長このエルフ達が()()()なのに、いきなりわけのわからない事を言ってますので、怒鳴りつけたのです。」 「ほぅ」

 兵長と呼ばれた男は鋭い眼光でディード達を見つめた。ディード達は兵長を見ると軽い会釈をする。


「私はここの詰め所、門を管理するアーガだ。君達は何を騒いでいる?」

「初めまして。私達はディード、こちらはリリアと申します。先日夕方、人頭税を払えず売り物を換金する為に兵士のお方にお願いしたのですが、その日は戻って来られず、今商人さんにお金を借りて街に入ってきました。するとワドブさんがいらっしゃったので声をかけたのですが、人違いだと言われ困っていました。」   


「ほう。なるほど、うちの兵士にワドブという名の兵士は居ない、そこにいるのはムレという男だ。」

 食い下がるように交互を見るディード、ムレという男は顔は怒ってるように見えるが口元はわずかに笑っているように見えた。

「ディード、もう止そうよ。()()()()()は人間の顔を認識しずらいのかも、同じに見えるようでも、違う人かも知れない。それに今日中に仕事と宿を見つけないと、お金返せなくなっちゃう。そしたら・・・。」


 リリアの言葉にうなだれるディード、

「確かにそうらしいですね。そちらの方に、今、()()()と言われましたので、どうやら兵士を語って騙されたのかもしれません。申し訳ありませんでした。ですが、兵長様一つお願いしてもよろしいでしょうか?」      「話を聞こうか。」 


「ありがとうございます。私達今こうして()()()()()()()()不安なのです。それで代理でこの袋ごと代わりに売って頂けるように頼めないでしょうか?()()()()()()が入ってる大事な物なのです。これが無くなると私達はもう、街には留まれなくなります。どうか兵士様、お願いできないでしょうか?兵士様なら安心して預けられるので、どうかお願いします。」 頭を下げるディード。


「わかった。願いを聞こう。」


「ありがとうございます。つきましては、ご迷惑をかけた方に謝罪と手数料も込めてお願いしてもよろしいでしょうか?」

「そうゆう事なら私は依存はない。ムレ、代わりに行ってやれ。あと誰か詰め所から預かり証をもってこい。」 「ハッ!」 「ありがとうございます。若く無知なエルフの願いを聞いていただいた兵長に感謝を。」そう言って一礼するディード。連られて頭を下げるリリア。だが頭を下げつつもディードとリリアはお互いを見つめ口元を緩ませていた。


 詰め所の方から、預かり証を受け取り、兵長の前で道具袋をムレに渡す。


「お預かり感謝します。何分若く無知なゆえご迷惑をおかけします。」

「わかった、今までのは不問にする。さぁその袋を渡してもらおうか。」

「はい、入っている物は()()()()()()です。傾けると急に道具袋から飛び出してきてしまいます。お気を付けください。それと()()ので押し車などご利用されてはどうでしょうか?」  


アーガがディードの言葉に対し疑問を持つ。見た目は小さな道具袋なのに何故押し車が必要なのだと・・・・しかしムレはそれに気づかず気だるそうにディードの問いかけに対し答えた。



「ああわかってる、わかってる。()()()だろすぐに・・「何故その小さな道具袋にオーク入ってると分かってるんですか?()()()()()()()()を言いましたよ?ムレさん?」 ムレの言葉途中を遮り、やや大きめな声でディードが問いかける。




「え?あ・・・・ほら昨日お前がみせた・・・いや遠くから見てた。」

「先程、初対面とおっしゃりましたが、見ていたのならどこで見ていたのですか?声が通る所ならばワドブという人物も見てるはずですがご存じですよね?」

ディードの引っ掛けに対しムレはしまった!と言うような顔をしてしまい慌てて弁明する。


「え・・いや・・・そ・・今のは嘘だ、なにも知らない。そんな袋にオークなど入ってるわけないでろう。冗談だったのだろ?それを真に受けたまでだ。」

「へぇ・・・兵長さま。御覧の通りですが何かおっしゃりたいことはありますか?」


 アーガが鬼のような表情でムレを見つめる。その表情は全てを悟っているかのような面持ちだった。

「ムレ、貴様!門を預かる兵士のくせに旅人を騙し、金品を奪っていたのか?」

「そんな訳ないじゃないですか!そいつの嘘に決まってます、信じてください。こいつは俺を騙そうとしています。」


「それなら昨日どこかに運ばれたオークがあるはずです、丸々1体。夕方から運び込まれたので、夜を徹して解体してればありませんが、もしかしたら残ってるかもしれません。首を刎ね、魔核を抜いている切り口の綺麗な奴です。」


「おい!他の者!急いで確認してこい!至急だ!。」アーガに怒気にあてられ急ぐ数名の兵士。


「ムレ話がある、詰め所に来い。」 「ひっ・・・はい。」 「そこのエルフの方、詰め所まで同行願えるか?」 「わかりました。」 アーガを先頭に詰め所に入って行く面々。




 アーガとディード達が詰め所の個室に入る。 そして席に着くなり頭を下げるアーガ

「旅の方よ、どうやら私の部下がとんでもないことをした。部下を預かる者として謝罪するこの通りだ。」

「顔をお上げください。私共はアーガ兵長直々に謝罪させる為にこの場にいるのではありません。罪を認めさせ、厳罰に処するまでアーガ兵長様が指示していただければそれで結構です。」


「わかった、貴公の為にあの者の罪をちゃんと明白し罪を償わせる。その後、私が責任を取り兵長の座を降りる事を約束しよう。」 頭をさげたままディードに話すアーガ。責任感が重く部下の罪ごとその重責を取るつもりだ。


「そこまでしなくて結構です。見たところアーガ兵長は噂通りの方だ。そのまま職務を続けてください。

 ムレも縁故関係で入団した兵隊なのでしょう。その膿を出し。風通りもよくすれば、この街ももっとよくなりますよ。」


「なぜそのような事を知っているのだ?」顔を上げ驚くアーガ。

「私は無知です、ですから無知故に情報を仕入れてから再びこの街の門をくぐってきた。それだけです。」笑顔で返すディード。 


「しかし、それでは貴公に対しての謝罪が・・・「いつも硬すぎるんだよ、だから奥さんも疲れるって言われてるだろ?」   「な!」 ディードの突然の言葉に、言葉を失うアーガ。


「それをどこで・・?」 「私は、とある男とエルフの間に生まれたハーフエルフです。それだけは言っておきます。私達はギルド登録したり街を見回ったりこの街を色々と知りたいのですが、そろそろよろしいでしょうか?なにかあったら、《緑の宿》という所に泊まる予定です。その時に色々お聞かせください。」笑顔で答えるディード、その顔にはわずかだが面影があるように思えるアーガ。




「わかった。出来る限りの事はする。引き留めてすまなかった。後で《緑の宿》に向かわせる。」

「ありがとうございます。それではよろしくお願いします。」

 2人揃って礼をし、外にでる。一人残されたアーガ。


「あいつ等ちゃんとやってるようだな・・・。」




「とりあえず、悪戯は成功したなリリア、ありがとう。」

「いえいえどういたしまして。」

 リリアの発案した作戦はこうだ。まずは街の人間もしくは、信用できる人を作り資金を調達、そして先程のように引っ掛けるように仕向けるという子供っぽい作戦なのだが、あっさり成功すると思わなかった。

 嘘も色々入れてあるが、付け足すなら情報をスーレスから仕入れ少し肉付けをしたのだ。

前からムレの行動は、街の人から嫌がられ、噂の絶えない人物だったらしい。多分取り巻きも捕まるだろう。 勿論こちらも色々と嘘を入れ混じれている。


 もし失敗したら失敗したで、さっさと準備を済ませ次の街へ行こうと思ってた2人には、例えオークの代金が戻って来なくてもよかったのだ。


「さて、冒険者ギルドだと名前と年齢を書くだけで誰でも入れるらしいからまずは登録してみようか?」

「その後に、食事かな。あとご褒美に甘い物も。」

「畏まりましたお嬢様。お付き合いいたします。」

「なによそれー。」

 「なんとなく?」

 

笑いあう2人、そして冒険者ギルドへ向かうのだった。


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