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異世界転生幻想放浪記  作者: 灼熱の弱火 
その手を放す者、掴む者
17/221

第17話 西へ

17話です。よかったら見てやってください。


 ミリア村を出てから、西へ向かう2人。

 特に目印となる物が道が無かったので、苦労はしているが、急ぐ旅ではない。

 街道も途切れ途切れになっている。村の方角へはあまり人通りが無かったのだ。


 疲れたら休み、川を見つけたら川遊びをするなど、楽しみを見つけては、少しづつ西へ向かっていた。



 初日の夜にアイテムボックスからアイリスが作った腕輪を渡した。

 夜になるまですっかり忘れていたディード。


「そうそう、この赤い腕輪を渡しておくよ。解毒と微弱回復の効果があるんだ。」

「ありがとう。でもいいの?」

「うん、俺もあるんだ、用途は違うけど色違いで。」

「色違い・・・お揃い・・・・」朝、結界の外で顔を赤らめたリリアがまた再現された。

 母よ・・・・一体何を言ったのだ・・・?


「変な意味じゃないよ。装備してても邪魔にならいだろうし。ほ、ほら毒を喰らった時とかにも早めに解除されるようにと思ってさ。」

 

咄嗟の見苦しい言い訳だが、次第にリリアの硬い表情が取れていく。

 心の中でホッと撫でおろすディード。その後は雑談をしつつ夜の見張りを交互にする約束をし野営する。


 初日は何事なく朝を迎えられたが、2日目の夜、襲撃があった。ゴブリン数匹、オーク3匹だ。

 ゴブリン達は即ディードとリリアによって迎撃されたが、ありがたく食料にさせてもらった。


 まだ持ってきた食料もあるし、このオークを手を付けずに街で売ることも出来るだろう。と、ディードは思った。そしてこれが後に面倒な事になると思ってなかったのだ。



 3日目の夕方には街が見えた。のんびりしてた割には早く着いた。その街は周囲が3メートルを超える城壁が周囲にそびえ建っている。街へ入口は2か所、北と南にあるらしい。ディード達は南側に列を見つけ、そこに並んだ。そして順番が来た。鎧を纏った兵士がこちらに向かってきたのだ・


「身分証明と人頭税を頂く。一人20銅貨だ。」


 あ・・・と、茫然とするディード・・・そう忘れていたのだ。


 すっかり金の存在を忘れていたディード、村では金銭のやり取りが無かったのと、街に入るのに金が必要という事も忘れていたのだ。


 油の切れた玩具のようにリリアの方へ振り向くディード、リリアは苦笑いしながら視線を逸らしている。

 やばい・・・やっちまった。という不安な感覚が襲ってきた。

「すみません。お金の事をすっかり忘れてました。代わりに売れそうな物でも大丈夫ですか?」

「時間がかかる、別の隊員を呼ぶ、しばし待たれよ。」そう言われると、ディードとリリアは邪魔にならないように端に寄せられる。


 しばらくすると、兵士の中でもガラの悪そうな出てくる。

「お前らか?文無しで街に入ろうとした2人組ってのは?」


 まずい、完全に外れを引いた感じだ。ここで揉めてもしょうがないと思い堪えるディード。

「世間知らずで申し訳ない。俺はディード、こっちはリリアと言います。取りあえず売れる物をそちらで代理で売って頂いてお金に換えていただけると言われたのですがお願いできますか?」

 明らかに態度の悪い兵士。面倒臭そうに舌打ちされる。2人は門の外側に無言で案内される。



「ここの兵士の()()()だ。ちっ、ほら早く出せよ、こちらとは忙しいんだよ。」ぶっきらぼうに手を出す兵士。

 明らかに態度が悪い上に、兵士としての役割も感じられないコイツに、売り物を出すのも嫌気が挿す。

 だが、ここで問題を起こし街に入れないのも面倒な事になりかねない。


「売り物が無ければ、不法侵入で捕らえるぞ早くだせ!。」


 ・・・・・イラッ さすがに顔に出さないようにしていたが、態度の悪さに頭にくる。

 さっしたのかリリアが狼狽えながらこちらと兵士を交互に見はじめてる。冷静にならなければ。


「わかりました。こちらをお受け取りください。」

 ディードは腰に付けていた()()()を取り出し前に差し出す。その後ろではアイテムボックスを操作し、オーク1体を取り出し前に落とした。 

 突然、目の前にあわられたオークの死体。地面に衝撃音がなり周囲を驚かせる。


「うぉ!いきなりオークが出やがった。何しやがる。」

「すみません。この魔法の道具袋まだ使い慣れなくて、驚かせてしまって申し訳ありません。こちらを代わりに売って頂いてもよろしいですか?」 笑顔で受け応えるディード。勿論道具袋は偽物である。


 アイテムボックスは目を付けられると面倒な事になると、アイリスに言われた為にディードが取った対策だ。地面すれすれの所から出す事も可能だが、少し驚かせようとわざと落としたように見せかけたのだ。


「これを運ぶのに時間がかかる。取りあえず、その袋ごと入れて持って行くからそいつをよこせ。」

「申し訳ありませんが、これは渡せません。どこにでもある道具袋に見えますので、取り違われると、戻って来ない可能性がありますし、貴重な物なので渡せません。」


「勝手な事を言いやがって・・・いいからよこせ!」

「お断りします。このオークが売れないのであれば他の兵士に事情を話し、我々はここを去りますがよろしいですか?」 


毅然とした態度で出るディード。兵士は苦い顔をする。やがて・・・

「わかったこれを売ってくる。時間がかかるから門の外で待ってろ。」根負けしたのか、手で払われるディード。 



 確かに時間がかかるだろうから2人で門の外で待つことにした。

「ごめんリリア、街に入るのにお金がかかるのを知らなかった。」

「ううん、私も知らなかったし、ごめんね。」互いに謝る2人。門の外の壁を背に2時間が経とうとし時、突如門が閉まる音が聞こえた。


 慌てて門に向かうディード、走ってきたディードに対し複数の兵士が制止の意味で槍を向けられる。

「止まれ!止まらなければ侵入者としてみなす!。」 槍を向けられ慌てて止まるディード。


「すみません。先程代理で売り物を渡した兵士の方が戻られないのですが、いつ頂けるのですか?」

「兵士の名前は?」 「ワドブさんです。」  複数の兵士が首をかしげる。


「そんな奴はいないぞ?」  「え?」焦るディード

「とにかく時間切れだすまないが明日の朝1番の鐘が鳴る頃に門を開ける。その時にまた来てくれ。」

「まってください。」 「すまないがこちらも仕事だ。これ以上何かするようなら詰め所の牢に入ってもらうが?」 

 そう言われるとこちらも強引に入ることが出来ない。門の外では諦めて街道の脇で休む人達も見える。これ以上の交渉は不利にしかならないと悟ったディード。素直にリリアの所に戻る事にした。


「すまないリリア、今夜も野宿になると思う。ごめん。」

「どうしたの?ディード顔色悪いよ?」 

「一杯食わされた。」 苦い顔をするディードであった。


「そっか、騙されちゃったんだ。」

「うん、ごめん、今日はそこの街道で野宿になるや。明日また並んで兵士を見つけるか、他の方法を探すかだな。」

「ううん、いいの、ただディードはやり返したいって感じ?」

「わかる?」  「顔に書いてある。」 


 かなり顔に出ていたらしい。ポーカーフェイスも少し練習しないとなぁ、と思うディード。

「でもね、悪戯なら手伝えるよ。」 「本当?どうやって?。」

 リリアは悪戯っぽく笑い、それにディードは食いつく。

「あのね・・・・・・。」 




 夜、ディード達は周辺を探していた。同じ野宿をする人たちの中に商人がいるか探したのだ。

 ひと際炎が立あがり酒を飲んでいる数人の集団を見つけた。

「夜分失礼します。この街の商人さんでしょうか?」ディードはたき火をしていた中央の男に声をかける。


 ディードの声に周りが武器に手をかける。護衛だろう。まぁ警戒されて当然と言えば当然だ。

 商人らしき者が手を上げ、周囲は武器を下す。 やがて中央にいた男がこちらに話しかけてきてくれた。


「お~お若い方。私はここではなく、隣街の商人ですが何か物入りですかな?」

 少し酒に酔ってるが問題なさそうだ。身なりもそれなりに整えてあり、商人らしいと言えば商人らしい。


「初めまして、私はディード、こちらはリリアと申します。旅と途中で金が尽き、街に入れずじまいで困ってるのですが、私どもの売り物を買って頂けないでしょうか?」


 商人なら商談の話なら食いついてくれるはずだし、まして商人の方が儲かるなら買い叩かれても情報は入るだろうと予想できた。

 

男の目つきが変わった。多分商談する時の目つきなんだろう、値段の付け方で人生の左右を決める商人にとっては、商談は彼等の戦場なのだろうと思うディード。


「お若いエルフ族の方ですね。エルフの方々と商談できるとは、車輪が壊れ、足止めを喰らい、閉門の時間に間に合わなくて野宿する事になったのも神の思し召しかもしれませんな。」

 饒舌に乗せ、商人が煽てる。きっと初対面の人達をまずは褒めてから商談をしやすくするのだろう。


「ありがとうございます。先に相場をお聞きしてもよろしいでしょうか?オーク肉なのですが。」

「オーク肉ですか?そうですね、干し肉ならこの量で銅貨50枚といったところでしょうか?」

 商人の男は、サッカーボール位の大きさの干し肉の量を示した。


「なら生肉ではどうですか?」この一言に商人の目つきが一段と鋭くなったように感じた。

「生肉なら、同じ大きさでも銀貨1枚以上しますな。勿論鮮度も含まれていて、魔力の量で左右されますがお持ちで?」


「はい、それを売りたいのですがよろしいでしょうか?」

「わかりました。ではその肉を拝見しましょう。お見せ願いますか?」

 その商人はその肉を見ようと辺りを見る。他のエルフがその肉を見張っていると思ったのだろう。


「ここでお見せしますよ。」 「え?」

 ディードは袋を前に差し出し、呪文を唱える振りをする。やがて、袋を傾けるような仕草をしてから。オーク1体を丸ごと出す。 



 突然目の前に出現したオークの死体。周囲の者は驚きあわてて武器を取る。

「大丈夫です。これは商品であって魔核も取ってあります。」ディードはそう制止する。

 魔物の死体は魔核を取っていないとアンデット化するらしい。

 皆一様に武器に手をかけその場でとどまる。 やがて商人の方から大きな笑い声が聞こえた。


「ふっははははは、【魔法袋】(アイテムバック)持ちの方でしたか驚きましたぞ。」

 商人が笑い、手を上げる。周囲の者達は一斉に武器に手をかけるのやめた。かなり統制が取れている証拠だ。 

「今宵、あなた方に会えた事に感謝しますぞ。申し遅れました。私、この行商の長を務めております。

スレースと申します。」 そう言って彼は手を差し出した。





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