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異世界転生幻想放浪記  作者: 灼熱の弱火 
形ある物
118/221

第110話 広場にて

 

「落ち着いたか・・・・。」

「はい、すみませんでした。」

「取り乱して申し訳ないです。」


 メイとリンはディードに対し深々と頭を下げる。

 現在、メイとリンを含む5人はギルドから少し離れた広場に連れていかれ、事情を聴いている。

 2人は、先程までの事を反省しており、しゅんとした表情で身を小さくしている。


 あの後、ディードは水獄(ウォータープリズン)を解除した直後、咽る2人に夢酒を強引に飲ませ落ち着かせそのまま広場へと引きずる様に連れて来た。

 途中、行き交う人々の好奇な目に晒されたディードは少々機嫌が悪い。


「はぁ・・・変な噂されているだろうな・・・・。」

「ええ、間違いなく、《鬼畜ディード》か《女たらしディード》の称号は得ているわね、あの場にいた女性陣には・・・。」

「そんな称号は要らねぇよ・・・・。」

「で、でも優しいディードはそんな事しません。私はそれを知っています、大丈夫です!?どんな事があってもリリアさんと2人でディードさんについて行きます。」

「「あ・・・あははははは・・・。」」


 今後何かと噂されそうなディードに対し、リリアは冷静に分析、レミィは励まし、メイとリンは愛想笑いする。

 その後なんとか持ち直したディードは、コホンと一つ咳払いをし、2人に問いかける。


「しかし、あれじゃ逆効果だろ?騎士団じゃ冷静に話し合う事を習わなかったのか?。」

「返す言葉もございません。私達はライーザ様の事を思い、冷静にギルドに話を持ち掛けるべきでしたのに、どういう訳かここ数日気持ちが焦る一方で・・・・兎に角ギルドマスターと話したくて、ああやって押しかけていました。」

「ただ、今思うと異常なまでに冷静になれなかった自分がいます。それどころかギルドから出た先の記憶が曖昧なのです・・・・。」

「記憶が曖昧?。」


 ディードの問いかけに、記憶が曖昧だと答える2人。

 少しの間、彼女達は自分たちの行動を思い出そうと必死に思考を巡らせていた。


「ええと、私達はギルドを出た後・・あれ?・・宿に戻りそこから・・・・。」

「多分・・・食事もとらずに眠っていたのか、眠らされていたのか、先程の時間になるとギルドに向いマスターと話をしないとダメだと思い、焦るようになったのです。」

「焦る?なんでまた?。」

「う~ん、何か思い出そうとすると頭の中で霧がかかったように思い出しずらくなるんですよねぇ・・・。」

「そうそう、大事な何かを忘れているはずなのに、思い出せないのが歯痒いのです。」


 頭を傾けながら、唸り声を上げるように悩む2人。


「そもそもなんで金貨100枚なんですか?。」

「ええ、それにライーザさんの姿を見ないけどどうしたの?。」

「ライーザ様・・・。」


 一呼吸を置きメイとリンは絶叫に近い音量で叫ぶ。


「あーーーーーーーーーーーーーーー!!!。」

「ライーザさまぁぁぁああああ!?。」


 その音量に周囲にいた人々から注目を浴びる。


「そうだ!?なんで肝心な人を忘れていたのかしら?。」

「あり得ない、ええ在り得ないわ。私達がライーザ様を忘れている事など絶対にあり得ない!?。」


 リリアにその名前を言われるまで完全に抜け落ち忘れていた2人。

 ライーザの名前を思い出し狼狽えていた。


「そ、そうよ。金貨100枚はライーザ様の為だったのに、なんで肝心なライーザ様の名前が出てこないのよメイ!?。」

「私が聞きたいわ!どういうことなのよリン!?。」

「落ち着け2人共、一体ライーザさんに何かがあった?。」


 狼狽える2人にディードが声をかける。だが逆にそれに火が付いたかのように2人はディードに詰め寄ってくる。


「ライーザ様は、金貨100枚の借金を背負う事になったのです。」

「しかも、その返済が後6日後に迫っています。それまでに金貨が集まらない場合・・・借金奴隷として落とされ、貴族の身分を剥奪されます。」

「なんだって!?。詳しく聞かせてくれ。」



 メイとリンの説明だと、ディード達が16階でイーリスと戦っている間、騎士団は15階へと帰還を果たした。ライーザは単身ディード達の応援に駆け付ける予定だったのだが、緊急支援の説明の為やむ得なくギルドへと説明にいく。

 ライーザはギルドにありのまま説明したのだが、他の騎士たちがビクトールを恐れ、彼の言うままに16階では変異種と戦闘になり撤退したと報告されてしまう。

 さらに悪い事は続き、ビクトールは緊急支援の支払いを拒否。

 それどころかライーザの勝手な判断と見なし、支払いは騎士団では無く彼女個人の支払いと決めつけられる。

 彼女のはギルドに借入を申し出一時的に事無きを得たと思ったのだが、今度はインディス子爵の騎士団が討伐を終え戻って来た。

 彼はスカーレット、インディス両騎士団による連盟での討伐を拒否したとみなし、罰則金50金貨を命じた。

 スカーレット騎士団はこれを拒否することが出来ずに受け入る事しか出来ない。

 何故ならば、拒否をした場合もう1度ダンジョンの20階のボスを討伐しなくてはいけない。

 当然費用も掛かる上に、スカーレット騎士団は既に半壊状態。

 騎士団だけの力では到底辿り着けるものでは無かった。

 討伐が失敗に終われば、スカーレット家の鉱山採掘権は剥奪されてしまう。

 そうなれば多くの民の仕事を奪ってしまう。

 だから受けざるを得なかった。


 また借金をギルドから申し入れている状態では、ギルドからの冒険者の派遣は出来ない。冒険者を雇うにも資金も無く、また魔剣の騒動や同時期に各地へ高ランク冒険者は要らに出ており人材も確保出来なかった。



「そしてインディス子爵の金貨50枚の期限は6日後。これを支払わないとライーザ様は借金奴隷となり、貴族の身分は剥奪されます。」

「せめて領に戻ってからの支払いと願ったのですが、何故かライーザ様はこれを受け入れました。」

「何故彼女は受け入れたの?。ギルドから借り入れをお願いすれば、その子爵のほうへと回せたはずなのに。」


 メイとリンの説明にリリアは疑問を彼女達にぶつける。

 だが、彼女達は悔しそうに拳を握り絞め話し出す。


「そこから私達の記憶が曖昧なのです。」

「何があったかわかりません。私達3人はインディス子爵家へ支払いを少し待ってもらえるように願いに行ったはずなのですが、ここ数日の記憶が曖昧なのです。」

「そして微かに覚えている事は、ライーザ様は全てを背負う代わりに借金奴隷へと身を落とし、その後インディス子爵家へ奴隷として扱われるようになる事です。」

「何故そうなる!?。彼女は一体何をした!?。」


 2人の説明に対しディードは驚き、メイの方を掴み詰め寄る。

 メイは堪えていたものが抑えきれなくなったのか、その場で涙を流し始めた。


「わかりません!?。わかりませんよ!なんでライーザ様だけこんな目に遭うかなんて私にはわかりません!。」

「逆に教えてください!?なんでライーザ様はこんな目に遭うんですか!スカーレット家の為に、兵士の為に、領民の為に頑張っているのになんでこんな仕打ちを!?」


 メイはその場で肩を掴まれながら泣き、リンはその場で泣き崩れる。

 レミィは泣き崩れるリンの傍により背中をさすっている。




「体のいい身代わり・・・いや生贄かしら。」

「生贄?。」


 重い雰囲気の中リリアが口開く。


「ええ、彼女一人奴隷に身を落とせば全てが丸く収まる様に仕向けられている様な感じがするわね。偶然かしら?それとも作為的なものかしら?。どちらにしても気に入らないわね。」

「でも、彼女自身がそれを受け入れてしまったから今更覆す事は出来ないな。誰かが金貨100枚でも用意しない限り。」

「ええ、そうね・・・最低でも金貨50枚は6日後に用意しないといけないわ。誰かいないかしら?金貨50枚を稼げる冒険者は・・・。」


 リリアが少しは微笑みながらディードを見つめる。それは彼女からのサイン。


「やれと?。」

「ええ、気に入らないもの・・・。助けてあげましょう。」

「そうですね、助けましょう!?ライーザさんを。」


 リリアの言葉にレミィが続く、その言葉を聞きメイとリンは涙を拭い感謝の言葉を述べる。


「ありがとうございます。」

「この御恩は一生忘れませんから。」

「いや、待ってくれ。金貨はすぐには用意できない。それにライーザさんの所在も確認しないと。」

「それなら、彼女は奴隷商の所で幽閉されているよ。」


 広場から一人の男の声が聞こえ近づいてくる。


「ギルドマスター。何故あなたが?。」



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