第106話 7日後
「「「7日間!?」」」
3人は声を揃えて驚く。
「そうですよ、一体何をしていたんですか?」
「何って・・・・。」
「ねぇ・・・。」
(まさか、鐘一つ分異世界を渡り歩いていただけで7日経ってましたなんて説明できるはずないよなぁ・・・。したとしても信じる訳ないだろうし・・・。)
ディードは巧く説明出来ずに困り、リリアとレミィに助けを求め視線を送るが、彼女達もどう説明したらいいのかわからず、視線を合わせずにそっぽ向かれていた。
「7日って・・・そう言えばなんで俺達が帰って来るのを知ってたの?。」
「ギルドマスターがもしかしたら帰って来るかもしれないから見に行って来いと言われました。・・・・あれ?そう言えばなんでマスターは戻って来るのを知ってたんでしょう?。」
ディードの切り返しに、ふとココルも疑問を抱き首を傾げる。
「取りあえず無事で戻られて良かったです。報告をお願いしたいのですがよろしいでしょうか?。」
「まぁ、一応俺達がいなくなった後の事も聞きたいし行くか・・・・。」
ココルの案内によってディード達3人はギルドまで連れていかれる。
通されたのは応接間、ココルは書類を纏めて来るので待ってて欲しいとお願いされ待っている。
「やっぱり異世界の話はしない方がいいかしら。」
「多分うまく説明出来たとしても信じて貰えないんじゃないか?。」
「そうですね、その話は私達の事を良く知っている方じゃないと信じて貰えないでしょうね。」
ディード達はソファーにもたれ掛かりながらそう話す。
しばらくするとココルが微妙な顔をしてやってくる。彼女はソファの前に立ち何か言いずらそうに話を切り出そうとしていた。
「えっと・・・その・・。」
「どうしました?。」
「非常に申し訳難いのですが、本日お越し頂いたのに報酬金をお支払い出来ないでみたいなんです。申し訳ないです。」
頭を下げるココルに3人は顔を見合わせ困惑する。
「一応理由を聞いてもいいかい?。」
「はい。ディードさん達は緊急の依頼を受けてから7日経ちました。これは一般的には依頼失敗とみなされ処理されてしまうのです。依頼にもよりますが今回は救援物資の運搬並びに騎士団の救援。依頼はこなされましたが、ディードさん達だけ戻らないという状態で5日過ぎてしまうと生存は難しいと判断され、その・・・死亡扱いとされてしまったんです。」
人間は飲まず食わずで動き回れる時間は限らている。通常の人間がそれに耐えられる時間は精々3日間。この3日間から徐々に生存率が下がってくる。
ましてやここはダンジョン、常に魔物が獲物を探し求めうろつき回っている場所で5日間の生存確認が取れなければ死亡とみなされてしまう。
さらにココルは申し訳なさそうに話を続ける。
「一応ディードさんはアイテムボックスというスキル持ちなので7日後でも生存の確率は高いと思って死亡扱いにするの早いと思ったのですが・・・・大きな変異種と共に地割れの中へ落ちて行ったと報告が上がってしまい・・・・。」
「ちょっと待ってくれ!?。」
ココルの一言にディードは驚き声を上げる。
「え?なんですか?。」
「俺達が変異種と共に地割れの中に?。」
「ええ、そう伺っていますが?。」
「どういうことだ?。」
ディード達は困惑する。騎士団の中でも何人の人達はイーリスの姿を確認してるはず。
見た目とは違い強大な力の前に恐怖し撤退を余儀なくされたとはいえ、魔物と見間違うはずがない。
(嘘の報告をしている?いやさせられている?・・・まさか・・・?)
「それなら、ライーザさんは何て言ってたのですか?あの時近くで俺たちの事を近くで見てはずあんんだけど?。」
「えっと・・・確か、ライーザさんと数名は人って言ってましたけど、ビクトール様が変異種の魔物とおっしゃってましたので・・・。」
「またアイツか・・・・。」
ビクトールの名前を聞いてディードはガックリと肩を落とす。
確かに一人の女性の力によって撤退を余儀なくされたなどというより、変異種の魔物によって撤退したと言えばまだ外聞はマシだろう。
「それで死亡扱いは撤回はできたのですが、ちょっと依頼先の方で揉め事が起きてしまって・・・・数日待って頂く形になります。ごめんなさい。」
「揉め事って・・・・?。」
「申し訳ないです。それは言えない事になっています。」
再度頭を下げるココルに3人は少し困惑しつつもそれを了承する。
「わかった少し待つとするよ。とりあえず今日は疲れたから宿に戻るとする。数日後にギルドに来ればいいかな?。」
「それでしたら、こちらの方で宿を手配します。支払いが終わるまで料金はギルド持ちにいたします。」
ココルの提案にディード達は特に異論は無く、その案を受け入れる事に。
案内された場所は、東側にある星とベットが書いてある看板が掲げてある。『星の宿』という宿屋だった。
「いらっしゃい、星の宿へようこそ。ってココルちゃんか。」
「こんにちは、フレンさん。今日はお客さんを連れてきました。こちらの方々なんですが、支払いはギルドに請求してください。」
星の宿の女将さんにココルはディード達の事を紹介する。女将はフレンという名の女性で、恰幅がいい女性だ。
「へー珍しいね、要人って訳じゃなさそうだね。中級位の冒険者さんかい?。」
「さすがフレンさんですね、見る目が違います。」
「煽てても値引きはしないよ。・・・それで部屋はどうするんだい?今なら4人部屋案内できるし、そこは防音の魔道具があるから少し位激しくしても大丈夫さ。宿代はギルド持ちなんだしもっといい部屋にしておくかい?。」
フレンはリリアとレミィを交互に見つめた後、ディードに話を持ち掛けて来た。
「あ、あははは・・・普通の部屋をお願いします。」
「おや、私の見当違いだったかねぇ・・まぁ部屋は用意するんで待っててな。」
苦笑いするしかなかった3人に対し、フレンは笑いながらも部屋を準備をする為にこの場を後にする。
「ココルさん?。」
「・・・・・普段からあんな感じの人で大目に見てください。」
フレンが用意してくれた部屋はディードの1人部屋、リリア、レミィの2人部屋で前に泊まっていた宿よりもしっかりとした作りの部屋であった。
ディード達はさすがに疲れが出ていた事もあり、夕食を取り早めに部屋に戻る事になった。
「今日は色々ありすぎて疲れたよ、これから住処に行ってあいつ等の話を聞いてくるから先に寝るね。お休み。」
「ええ、私も受け継いだ情報を整理したいから今日はこれで寝るわ。」
「私もゆっくりと休ませてもらいますね。・・・・でもその前に。」
レミィはディードに抱き着きゆっくりと深呼吸をする。
その後、背伸びをしたレミィの潤んだ瞳がディードに迫りキスをする。
それに応える様にレミィを優しく抱きしめ、一時の幸せを嚙みしめている。
レミィはゆっくりと身体を離すと一言『お休みなさい。』と言いその場を去っていく。
「やるわねレミィちゃん。あれをやられたんじゃ普通の男ならそこで捕まえて夜を過ごすわよ。」
「いや、リリアがいなかったらそうしてかも知れないな・・・。今日はレミちゃんに助けて貰ったし・・・・。」
「へぇ、ディーが助けて貰ったってレミィちゃんは何をしたの?。」
「色々さ。『生きているからこそ次に繋げられる』って言葉をレミィちゃんから貰って少し救われた気がしたよ。あの時、彼女のその言葉はそれだけ重みのある言葉だったんだ。」
ディードは視線を少し上にあげ思い出しながら語っていた。
「そう・・・。その色々はその内教えて貰えるのかしら?。」
「ああ、住処に行った後話すかどうか決めるさ。」
「そう、わかったわ。でも無理してまで話す必要は無いからね。」
「ああ、ありがとう。・・・それじゃお休み。」
「ええ・・・。」
リリアもレミィ同じく、ディードに抱き着きながら唇を重ねる。
束の間の幸せを分かち合い2人は共にお休みと言い合い部屋へと入って行く。
――――
――
ベットに潜り込んだディードは、さっそく住処へと向かう。
彼が住処に入るとイーリスと対峙した時と同じように真っ白な世界がそこにあり、ファグとアイリスはディードが来るのをずっと待っていた。
PCの不調により投稿が少し遅れました。