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異世界転生幻想放浪記  作者: 灼熱の弱火 
形ある物
112/221

第104話 兄と妹

 


「はぁ!?ルビア?何を馬鹿言ってるんだ?俺の妹は――。」

「まだ生まれたばかりだぞ!?でしょ?。」

「な!?・・・・。」


 ディードの言おうとしていた言葉を先に言われ言葉を詰まらせる。


「どうして知っている?あの村で生まれたなんて知っている奴がここに居るなんておかしいぞ。」

「だって本人だもん。それにホラ、()()に見覚えあるでしょ?どうせ信じないからコレをって持たせてくれたの。」


 そう言うとルビアと名乗る彼女は、腰に下げた刀を取り出しディードに見せつける。

 それを見た瞬間ディードは驚き思わず声を上げてしまう。


「な!?『時雨(しぐれ)』。」

「そそ、恰好良いよね~これ。私この仕事が終わったら同じタイプの刀作って貰うの~。もう名前を考えてあるんだよ。お兄ちゃんはそれに沿ったイメージの刀を作ってくれるんだ~。えへへへ」


 笑いながら鞘ごと引き抜き、2人に良く見える様に見せるルビア。

 ディードはそれを近くで見るがパッと見、おかしな箇所は見当たらない。

(どうなっている?どう見ても俺の造った時雨だ。リリアと2人で買った琥珀色の玉石も付いている・・・・アイテムボックスの中から盗まれた?・・・まさか!?。)


 アイテムボックスから時雨を慌てて取り出すディード。すると出てきたのは瓜二つの時雨、ディードは今起こっている事に困惑を隠せないでいた。


「・・・どういう事だ?。」

「どうもこうもお兄ちゃんが造った時雨でしょ?。同じ物が同じ時間帯に存在するのは混乱すると思うけど、そろそろ私の話聞いてくれるかな?。」

「話?。」

「そそ、ちょっとレミィお姉ちゃんと良い雰囲気だったから邪魔しない様にしてたけど、本来はコレを渡す為に来たんだよ。」


 そういってルビアは小さなバックから2本の黄金色に輝く小さな小瓶を目の前に差し出した。


「これは・・・?。」

「魂の秘薬、簡単に言えば完全回復薬(フルポーション)よ。これさえ飲めば、身体の傷、消費した魔力、それに精神体の消耗も回復するわ。」

「精神体の回復?・・・・まさか!?。」

「そそ、ファグおじさまとアイリスおばさまも回復するの。ってかその為に持って来たの。そうしないと()()()()()しないからね~。」


 朗らかにルビアは笑いながら小瓶を置きそのまま後ろに下がっていく。


「ファグやアイリスの存在を知っているという事は・・・・。」

「まぁ、信じろっていう方が難しい話よね。私は()()()1()6()()()()()()()()()()()、この異世界に来たの。この場所は異世界の中でも不安定な場所らしくてね。色々な時間が交差する場所らしいよ。私のお兄ちゃんも最初来た時に驚いてたんだって。んで、イーリスって奴に勝手にやられて、それからあの現場を見て凹んでたっていってたよ。」


 あの現場とは、ディードが異世界の渦に飲み込まれる前の光景の事だ。彼女のなりの配慮なのかレミィの前で少し濁した表現をあえてしてくれたのだ。


「でも、聞いてたよりずっと元気に見えたから良かったかな。まさかレミィお姉ちゃんとイチャイチャしてたなんて思っていなかったし。」

「・・・ぐっ!?。」


 ディードはルビアの言葉に気恥ずかしい気持ちに顔をそむける。だがその逆にレミィがルビアに食らいつくように問いかける。


「あの、お姉ちゃんお姉ちゃんっていいますけど、私は将来ディードさんのお嫁さんになっているですか!?。」

「その答えはYESでありNOなのよレミィお姉ちゃん。。」

「どういう意味ですか?。」

「ん-、私のいる時間軸ではレミィお姉ちゃんは存在する。だけどそれは努力して得た物だから、知ったりして怠けたりしていると未来が変わっちゃうって事かな。逆に知ってしまう事でそれを避けるって事も出来るからね。」

「私はディードさんの傍を離れる気はありません!?。今よりも努力をしてずっと傍にいられるように努力します。」


 レミィはルビアに向って両手を握り締めガッツポーズをしながらそう言うと、ルビアは笑顔で応えた。


「うん。それでいいと思うよレミィお姉ちゃん。私が知っているお姉ちゃんも前向きで、いつも笑顔を絶やさない優しい2()()()()()()()()()だもん。」

「・・・2番目?。」

「・・・・あ!?。」


 つい余計な口を滑らせてしまったと口に手を当てるルビア。

 彼女はその場で慌てはじめる。


「いや、だからね私のいる時間軸ではそうなっていて、決して1番になれないとかじゃないから、ほら他にもいっぱいお嫁さんいる中での2番目なんで・・・・。」

()()()()()()()・・・・?。」

「ぎゃーー!?その笑顔は怖い。ってか私に稽古つけいる時のあの笑顔じゃない。怖いよぉぉ。」


 喋る事に自爆するルビアに呆気に取られるディード、それとは対象に笑顔だがどこかその顔に影が見えるレミィ。その姿に怯え初め頭を抱えるルビアの姿あった。だがその時、遠くの方から女性の声が聞こえてくる。


「いもうとさま~。妹様~。どちらですか~?。」

「あ!?呼ばれている行かなきゃ!?。」

「今の声は誰ですか?ルビアちゃん?。」

「今の声は・・・ってダメダメ喋らせないで!?あたしのせいで未来変わっちゃたらあたしの存在も危うくなるから勘弁して。」


 レミィの誘導尋問に引っ掛かりそうになり慌てふためくルビア。

 これ以上は喋るまいと、口の前に指をクロスだせ意思表示をする。


「と、とりあえず私は呼ばれたから戻るね。こっちのお兄ちゃん、それちゃんと飲んでね、あたしとお兄ちゃんが何日もかけて作った秘薬だから副作用はないよ。ってか早く飲まないとアイリスおば様の存在が危うくなるからね。」

「そうか・・・わかったよ。」

「ありがとう、それじゃ行くね。あ!言い忘れたけどお兄ちゃん達が探している人はそっちに要るから!」


 ルビアはそう言い指を差す。ディードとレミィがその指差された方向を見ると彼女のいた場所から強い光が溢れ出してきた。

 振り返りがその姿を直視することが出来ず思わず目を背ける2人、やがて光が収束し彼女の居た所に眼を向けると既に彼女は居なかった。


「なんか軽い子だったなぁ・・・・。」

「ふふふ、可愛いく純粋な子でしたね。」

「そうか?単純で引っ掛かりやすい子だったけどな。」

「それならディードさんが妹さん事を指導してあげればいいじゃないですか。私も手伝いますよ。」

「そうだね、まずは生きてここを出てないとだね。その為にはまずはコレを飲んで生き残る事を祈るよ。」


 ディードはルビアに渡された2つの小瓶の一つを開け飲み干す。

 その直後全身から力が漲り活力が溢れ出してくるような感覚に困惑する。


「すごい、力が漲ってくる。」

「どこか変な所はないですか?。」

「無い所か、受けた傷も魔力も回復しているよ。そうだレミィちゃん怪我してたよね。回復するよ。」


 レミィの肩に手をあてディードは神聖回復(リジェネヒール)を彼女にかける。

 すると、みるみる足の骨折箇所が逆再生するかの様に元通りに戻り綺麗な足になる。


「ありがとうございます。」

「いやごめんよ。俺がグダグダしてたから足の怪我治すを遅れて。」

「いいえ、こうして治して貰ったのですから気にしないでください。」


 笑顔でそう答えるレミィにディードも釣られ笑顔になる。

 ディードはレミィの手を取り先程ルビアが指差した方角へと歩き出した。







 その頃リリアは――――


「そろそろ、わかってくれると嬉しいんだけど。」

「黙りなさい、この偽物!。顔を似せても言動が若干違う!?私にはわかるのよ。」

「だからそれは成長したから、変わったんだってば。ホラこうやって3つの魔法を同時に使えるでしょ?。」


 偽物を呼ばれるディードは左手の指先からそれぞれの属性の違う魔法を生み出す。

 人差し指は炎、中指は風、親指からは水の魔法が出ている。


「私の知っているディードは、確かに3種の同時魔法を行使できるけど、そこまで器用じゃないわよ!。」

「ん-失敗だったか、でも本物なんだけどな。時雨はルビアに渡しちゃったし、弱ったなぁ~・・・って!?」


 彼の3本の指の魔法は一つ収束させリリアの後方にいたゴーレムへと放つ。

 直撃を喰らったゴーレムは魔核を貫かれその場に崩れ去って行く。

 その魔法を見切れなかったリリアは、後方で崩れ去るゴーレムをみて初めて魔法を放たれたと気づく。


「何、今の魔法・・・?見えなかった。」

「複合魔法、雷迅砲(サンダートロン)だ。火と風と水を巧く混ぜ合わせ同時に放つと、スピードを破壊力があがるんだ。まぁ元ネタはアイリスの光の矢、改(グローアローセカンド)から出来た魔法なんだけどね。」

「光の矢、改・・・さっきディードが使った魔法ね。」

「ああ、そう言えばこっちの俺は咄嗟に見様見真似で使ったんだっけ?これで信じてくれる?。」

「そうね、今の魔法を見切れない私は、アナタにいつ殺されてもおかしく無いものね。回りくどく偽物をやるより、手足でも撃って無力化した方が効率がいいし、もし私が悪役ならそうするわね。」

「・・・俺が悪役に聞こえてくるのは気のせい?。」

「ええ、気のせいでしょ?それで私に何の用なの?」


 リリアは若干諦め気味にディードの姿をした青年を見つめている。

 もし彼が本気になれば自分は一瞬で殺されるだろうと確信している。

 にも関わらずに、気配の読めなかった背後のゴーレムを倒し自身を救ったからには、先程から彼が言っている未来から来たディード本人なんだろうと推測する。

 だがリリアは警戒を怠っていなかった。


 彼は1本の小瓶を彼女の前に差し出す。それは黄金色に輝くポーションにも見えた。


「何よコレ。」

「魔力をかなり消費しているだろ?魂の秘薬だ。簡単に言えば体力と魔力を完全回復してくれる。今日初めて『翼』を使っただろ?。それに一気に情報が駆け巡って精神的にも疲れが出ているはずだ。」

「なんでそこまで知っているのよ?。」


「いやあの()()を作った本人だから。そうそう余計な情報も入れたおいただろ?トンネルを抜けるとそこは雪国・・・じゃないからとか、リリアは愛を囁かれるのが弱いとか。虫系の魔物が弱いとかいっぱいあったろ?」

「な!?アンタが造ったの!?」


 リリアは驚きながら顔を赤らめ、彼の顔を平手打ちしようとした。

 彼が入れた余計な情報それは、先程のトンネルなどから始まり、些細な日常を綴った物やリリアの弱点などの無駄な情報をあの魔石に封じ込めたのだ。

 おかげで無駄に混乱しかけた情報に対する報復として彼に平手打ちを放ったのだが、あっさりと躱された。


「っと危ないな。当たったら痛いだろ?。」

「痛くしてやろうとしてるのよ!?大人しく平手打ちさせなさい。」

「まぁまぁ、あれはあれで必要なものだったんだって。でもこれで君に害をなす存在じゃないのが分かったろ?。取りあえず時間が迫ってきているんだ。話をさせてくれ。」

「・・・時間?。」


 何度も平手打ちを放つがあっさりと躱されながらも彼はリリアに話かける。


「ああ、もうすぐ異世界への道が開く。あの方向に歩くとレミィと昔の俺と合流できるはずだ。そしてそこから飛び立ち、紅玉の杖に入るだけ魔力を詰め込むんだ。そうすれば帰り道が分かる。」

「紅玉の杖に?どうして。」

「あの食えないエルフのギルドマスターが、俺達の行動を知ろうと逆探知魔法を仕込んでいたんだ。それを逆に利用する、魔力を込め続けるとキーンと高い音が鳴ったろ?アレは居場所をエルフのマスターに知らせる為なんだ。だから・・・。」

「その音を伝って元に戻る?。」

「そう、さすがリリア。でも少しだけ日時がズレるから気を付けてくれ。」


 平手打ちを躱しながらそう彼は伝えて来る。リリアは何度も平手打ちを放つがあっさり回避させられる彼に流石に無駄だと諦めて話を聞き入れる。


「ふぅ・・・ふぅ・・・当たらないわね。」

「もういいだろ?要件はそれだけだ。」


 彼はそういうと、息を切らし気味のリリアに小瓶を差し出す。

 リリアはそれを受け取り飲みはじめると身体か力が湧きあがるの感じた。


「・・・・凄い私の魔力がほとんど回復してる。」

「それ1本作るのに3日以上かかるからな、自信作だ。」

「3日でこれが1本作れるなんて・・・逆に凄いわよ。」

「まぁ材料が限られているから、量産は出来ないけどな。」

「そう・・・一応礼を言っておくわ。ありがとう。」

「それとこれはサービス。」

「・・・え?」


 彼はリリアに近寄りいきなり抱きしめる。正面から抱きしめられたリリアは、最初何が起こったか理解できずに固まってしまう。やがて振り解こうとしたのだが、彼は囁く。


「これからどんな困難が待ち受けていようとも、忘れないで欲しい。ずっと君の事を愛している不器用で馬鹿な男が隣にいると言う事を。」

「・・・ずるいわ。その顔で言うのはやめて頂戴。」

「それもそうだな。それはあっちの俺に言わせるべきだろうな。でも今のアイツはルビアが顔を出すまで相当凹んでいるだろうからなぁ。」


 そう言いながら彼は抱きしめていたリリアを離すと2歩3歩と後ろに下がる。


「さぁこれでお別れだ、あの時のリリア。ずっとずっと愛しているよ。」

「それを私に言うのね。そっちのリリアに言いなさいよ!?。」

「勿論毎日言っているさ。そうしないと得意の魔法でお仕置きされちゃうからね。」

「・・・未来の私はそんな事しているの?。」

「別にそんな未来が要らないのであれば、ここで昔の俺達と合流しなければいい。一人で他の異次元への道を探せば君だけなら脱出できるよ?。」

「する訳ないでしょ?わかっているくせに。」

「どうだろうね。未来は君の努力次第だ。って言っておくよ。それじゃあっちのヘタレた俺をヨロシクね。」


 そう言い残すと、彼はリリアを見送る事無く一人何処かに歩き出す。

 その背中を少し見た後、彼女は先程示された方角へと歩き出すのであった。





 ――――


「ルビア、いるんだろ?」


 彼は向きを少し変えて一人その場で声をかける。

 その声に反応するように、何もない所から顔を覗かせバツが悪そうにルビアは飛び出してきた。


「やっぱりお兄ちゃんにバレちゃうのか。」

「覗きは良くないぞ。」

「そんなつもりは無かったんだけどなぁ。」

「それよりちゃんと渡したのか?。」

「うん、あっちのお兄ちゃんレミィ姉さんとイチャイチャしてたけど、間入って渡して来たよ。」

「え?そんな事してたの?昔の俺?」

「うん、どうかしたの?。」

「俺の時はずっと不貞腐れてたのにな、まぁいいか。それより早く戻るぞ。さっきから念話でずっと呼ばれているんだ。」

「あ・・・そう言えば声が聞こえたら、私お兄ちゃんの方を見に行ったんだっけ。」

「だからか・・・後でちゃんと謝っておくように。」

「うぅぅ。素直に謝って済むと思う?。」

「・・・・無理だな。」

「ぐへぇ・・・稽古の時が怖いよぉ。」


 ガックリと頭を下げながらルビアは声の聞えて来る方へと歩くのであった。


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