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異世界転生幻想放浪記  作者: 灼熱の弱火 
形ある物
103/221

第97話 テントの中で

 


「なんで温かいスープや、串焼き、パンなどがある?。それにあの数の魔物はどこにへやった?それにこの四方の壁はなんだ?私達はどこかに移動したのか?。」


 テントから顔を出し外の景色に動揺するライーザ。彼女達兵士の食事は基本的に乾燥させ軽量化した保存食が多い。兵士達は各自極少量の軽食は持っているが、その多くは干し肉などが主流だ。パンやスープの材料などは日持ちが悪く、場所によってはその日で腐ってしまう事もある。それを防ぐ為、水分を飛ばした保存食を携帯せざるを得ない。

 

 だが目の前にある光景は、器を持ちスープを美味しそうに飲む姿、アツアツの串焼きを頬張る姿、柔らかそうなパンを幸せそうに噛みしめる姿などがあった。それが4か所だ。

 目の前の光景に動揺しているライーザは声が大きくなっていた。


「ふふふ、ライーザさん。驚く事は構わないのですが、ディードさんを起こさない程度にお願いします。かなりお疲れのようなので少し眠らせてあげたいので。」


 レミィは唇に人差し指を添え、静かにするように促す。それを見たライーザは動揺のあまりに声が大きくなっている事に気づき口を手で抑えた。


「す、すまない。」

「いえいえ、それじゃ少しだけお話しましょうか。あなた方を助けた後の事を。」

「ああ、頼む。」


 レミィは疲れて眠っているディードの髪を優しくなでながら話始めた。


「まずは、あなた方3人を助けた後、ディードさんが治療を施しました。そしてライーザさん貴女の怪我はかなり重傷だったらしく、大回復(ハイヒール)だけじゃ回復しきれないものだったそうです。」

「そうか・・・。って大回復じゃ回復しきれなかったって事はその上の魔法を?。」

「ええ、神聖回復(リジェネヒール)を使ったって聞いてます。」

「神聖回復だと!彼は神官なのか?。」

「お静かに。1回1回驚いていると、話が進みませんよ?。」


 ライーザは驚き再び声を荒らげる、だがレミィは再び自分の唇に人差し指を当て、ライーザに静かにするように促す。

 声を荒らげた事を素直に反省するライーザはレミィに頭を下げる。


「す、すまない・・・。」

「驚いてもいいですけど、声は大きくならない様に。もしディードさんが起きちゃったら夕食は抜きにしますよ?。ふふふ。」


「それは困るが、・・・色々と聞きたい、話を続けてくれ。」

「ええ、それであなたの右腕なんですけど、再生までは出来たそうなんですが、その黒い右手が治らず1度治療をやめたそうです。出来ればライーザさんから話を聞いて治療をどうするか考えるって言ってましたし。」

「そうか・・・これは多分呪いだと思う。」


 ライーザは自分の右手を恨めしそうに見つめながら呟く。


「呪い・・・ですか?。」

「ああ、ここの変異種から出たアイテムに触れてしまってな・・・。そしたら右手がこうなった。これは後で神殿へ行って治してもらうさ。今は、少しでも動くようになった事と生やしてくれた彼に感謝しかない。」

「それは後でディードさんに言ってあげてください。」

「ああ、そうさせてもうよ。」


 レミィの笑顔にライーザは少し微笑み頷く。


「えっと・・・どこまで話ましたっけ?。」

「右手の事だな、すまないな何度も話を逸らしてしまって。」


「いえいえ、それでですね。取りあえずあなた方を休ませようと、すぐ目の前にテントを出し、リリアさんと私でテントに運んだんですよ。そしてですね、ディードさんは合流した兵士さん達の怪我を回復魔法で治療して・・・それから壁を魔法で作って、それで食事を出して食べたら交代で休むように言って・・・。」

「まてまてまて・・・・レミィ殿、色々端折っているような、そうでないような、兎に角待ってくれもう少し解りやすく教えてくれないか?」


 ライーザはレミィから次々と出されるディードの行動が理解できずに思考が停滞しレミィを止める。


「ん-そうですね。ディードさんが回復魔法で全員を治療して、アイテムボックスという能力を使って倒した魔物を収納して、皆に食事を出して、魔物に食事や休憩を邪魔されたくないから土魔法で壁を作ったって言えばいいですか?。」

「・・・・すまない。ディード殿が何人もいる様に聞こえるのは気のせいだろうか・・・それとも彼一人なのか?。」


 ライーザは顔に手を置き眉間をもみほぐす様な仕草をしている、だがレミィはライーザの言った事が分からず首を傾げなながら彼女の問いに応える。


「・・・・?何言ってるんですか?ディードさんは一人ですよ?何人もいませんし。あ、でも2人いたら私とリリアさんで仲良く分けられるから良いかもしれないですね。あ、でもでも一緒に分かち合える楽しみが無くなってしまうのは、少し残念な気がしますけど・・・。」

「すまない惚気話は後にして欲しい。要するに食事、壁、後片付けを、ほぼ彼一人による力だったという事か?。」

「ええ、そうです。凄いですよね?ディードさん。強いし、優しいし、色々出来て素敵な方です。」


 レミィはディードを褒め称え自慢する。その姿に少し引き気味なライーザだったが、気を取り直しレミィの膝の上で眠っているディードを見つめている。


「凄いと言うか・・・多分王都でもそんな能力を持っている人間はいないと思うぞ。王都お抱えの宮廷魔導士と同等・・・いやそれ以上か・・・。エルフのなせる能力なのか、彼自身の努力の賜物なのか、正直に言えばウチの騎士団の魔法使いになって欲しいぐらいだ。」


「あげませんよ?。」


 ライーザの正直な気持ちを真向から断ち切るレミィ。彼女の顔は笑顔だがその笑みからは冷たい波動が出ているかのようにライーザに突き刺さる。


「い、いや正直な気持ちなだけで、本当に欲しいわけじゃなんだ。」

「そうですか・・・でもあげませんよ?。」

「わ、わかってる・・・。」


 (さっきまで朗らかに話してはずなのに、なんだこの冷たい笑みは?寒気がする。)


「それじゃ私はそろそろ見張りに行きますね。もう少しお休みになっててください。」

「いや、そういう訳にも行かない、助けて貰った上に世話になりっぱなしだ。私も何か手伝える事があれば手伝わせてもらおう。」


 レミィは、眠っているディードの頭を静かに枕へと移し立ち上がる。

 ライーザは少しでも何か手伝える事があればと、レミィについて行こうとするのだが彼女によって制止される。


「あ、言い忘れてましたけど、今あなた方は外に出ない方がいいですよ。ディードさんが起きたら一緒にテントの外に出て、一緒に夕食を取りましょう。一応私達のパーティー扱いになってますので、ゆっくり休んでいてください。」


「・・・・は?。」


 意味が解らず思考が停止するライーザにレミィはさらなる爆弾を置いて行く。


「少し面倒な事になってますので簡単に言うと、貴方のお兄さんでしたっけ?ビクトールさんをディードさんが殴って、ライーザさん達を力づくでテントに寝かせている状態なので・・・・ディードさんが起きるまでテントから出ないでくださいね。・・・・それじゃ。」


「・・・・・・・はぁ!?それは一体どういう事なのだレミィ殿、おい待ってくれ!頼む。」


 引き留めようとしたライーザにレミィは冷たい笑顔で唇に指をあて、静かにしろと威圧する。その姿に声を上げてしまった事を反省しつつも引き留めようとしたが、レミィはテントを出て行く。その間際



「あ、一つだけ出来る事ありましたよ。」

「え?あ、ああ私に出来る事なら何でも言ってくれ。」

「ディードさんに膝枕してあげてください。」

「・・・へっ?。」


 レミィの意外な一言に、気の抜けた返事をし固まるライーザ。


「何故?私が・・・・?。」

「・・・?出来る事があったらなんでも言ってくれって言ったので、それじゃ。」


 そう言い残しレミィはテントを後にする。そこからはレミィの声をもう一人、女性の声が聞こえてくる。きっとあの時の彼女のだろうとライーザは推測する。

 テントの中には3つの寝息が聞こえる位静かな時間が流れている。

 その中で一人悶々とライーザは、己と葛藤していた。


(どうする?ここはお礼の意味も兼ねて、彼に膝枕をするべきなのか?。いや、そもそも彼はそんな事を言っていないし、望んでもいないかも知れない。しかしレミィ殿に出来る事を頼んだら、膝枕しろと言われたのでやるべきなのだろう。だが私は生まれてこの方、殿方にひ、膝枕など・・・・・。)


 悶々としつつ一人頭を抱えコミカルな動きをするライーザ。

 彼女の小さな葛藤はテントの中でひっそりと行われていた。



 ――――――

 ――


「ディー、ディー・・・悪いけど起きてくれない?」

「・・・・んぁ?。」


 ディードは外からの声に薄っすらと意識を取り戻しつつあった。

 その声の主はリリアだった、彼女はディードの横から顔を覗かせ軽く体を揺すっていた。


「ん・・・リリアか。すまない結構寝ていたのか?。」

「そんなに長く寝てないわ、悪いんだけど出して欲しい物があるの。」

「ああ、夕食か。ちょっと待ってくれ。」


 ディードは身体を起こそうと少し伸びをする。すると何か柔らかい物に当たった。


(ん?なんだ?頭の上に何か置いてあったっけ?。)


 当たった所を手探りで探す様に、ディードは手を動かし始める。柔らかく包み込むとうか感触に疑問を抱きながら探り当てようとするが、横で見ていたリリアが形相が一気に変化する。


「ディー?、な・に・し・て・る・の・?。」

「ん?伸びたら何かに当たったから、何だろうと思ってな。これはな・・・・ん・・だ・・。」


 リリアの怖い顔を見て、なにか良からぬ事態なのか恐る恐る視線を伸びた手の方へ移すと、そこには顔を真っ赤にし俯きながら震えるライーザの姿があった。



「え?・・・なんで?。」

「このバカ!?。」


 ディードはリリアに平手打ちを喰らいその場から引きずられ離される。


「アンタは私がいる目の前で浮気だなんて、よくそんなことが出来るわね?しかもレミィちゃんじゃなく、貴族の兵士さんとだなんて。」

「ちょっと待ってくれリリア、俺は今起きたばっかりで何も知らないんだ。ライーザさんが俺の頭上に居たのかさえ知らなかったんだから・・・。」


「そ、そうだ今のは事故だ。うん事故だ。わ、私は一行に気にしてないから彼を責めないでやってくれ。私はレミィ殿に手伝いを申し出て、彼に膝枕するように言われたので仕事としてやっていたのだ。さっきもそう言ったであろう?。」


 事情が呑み込めないディードを庇う様にライーザは説明する。

 やがてリリアは深くため息を吐き諦めたようにディードに話しかける。


「まぁ今回は事故って事で見逃してあげるけど、後でクレープ作りなさいよね。」

「あ、ああ。食後に好きなだけ・・・。」

「ほんと!やったぁ~。」


 リリアはその言葉を聞き喜びはしゃぐ、その姿を見てホッと心を撫でおろすディード。


「そう言えばリリア、出して欲しい物って?。」

「あー、あれを見ればわかるわよ。」


 リリアは指を差し、そっちを見る様に促す。

 ディードが見たもの、それはロープで猿轡をされ動けない様に縛られているメイとリンの姿だった。



「・・・・・わかんねーよ。」


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